第7話 ヒロイン達の会話(上)

●七島香奈(side)


「咲ねぇ!この服はどうかな?」

「凄く似合ってるし、凄く可愛いよ香奈ちゃん!!」

「それじゃあこれも買っちゃおうかな?」


 土曜日の今日、私は咲ねぇと美玖ねぇの三人で買い物に来ていた。

 今は新しい服を皆で見ている所だ。


「ダメだって香奈。今日はもう二着も買ったじゃない?正美さんからも二着までって言われたでしょ?…それに美玖も甘やかすばかりじゃダメって言ってるでしょ?」


 正美さんとは私のお母さんで、兄さんの義母にあたる人だ。


「大丈夫だよ美玖ちゃん。私も可愛いとは言ったけど、買うのは駄目だよって言おうとしてたからね」

「そう?それならいいけど……」

「はーい、それじゃあ、今日はもう服を見るのは終わりにしよっか……」


 この服も欲しかったけど仕方ない。

 確かに二着も買えば十分だし、お母さんに怒られるよりは諦めた方が良いもんね。



 ――買い物を終えた私たちは、近くのカフェで話していた。


「そういえば二人とも高校生にはもう慣れた?」

「んー、分かってはいたけど、ほとんど中学と変わらないからね……」

「そうね。ただ校舎が変わっただけな上に、校舎の作りもほとんど同じだから本当に変化はないわね。変わったと言えばクラスメイトくらいだもの」

「やっぱりそうなんだね。義兄さんもおんなじことを言ってたよ。それよりも今年も三人とも同じクラスになったの凄いよね!!」

「確かにそうだね。中学一年生の頃からずっと同じクラスになってるとかんがえると結構、不思議だよね……」

「翼はともかく、咲と同じクラスなのは良かったわね」


 そんな事を言う美玖ねぇだけど、これはいつも通りだ。

 美玖ねぇはちょっと口は悪い事もあるけど、本当は優しい人だ。

 美玖ちゃんは男子が嫌いらしいけど、義兄さんのとは普通に話すしね。


「美玖ちゃんらしいね」

「そういえば義兄さんの様子はどう?勉強はちゃんとしてる?」

「翼はダメダメね。授業中は寝てる事もあるくらいだし」

「翼君は美玖ちゃんが注意しても相変わらずだからね……」


 やっぱり中学生の頃と一緒なんだ……ってそれについては私も同じだから何も言えないんだけどね……

 昔からずっとそうだけど、私と義兄さんは勉強が苦手だけど、この二人はずっと成績はトップクラス。

 美玖ねぇに至っては学年2位を常にキープしていたくらいだ。


 私がそんな事を思っていると二人に言われる。


「でも勉強にかんしては香奈ちゃんも同じだよ?」

「そうね。香奈も昔から全然勉強しないものね……あなたたち兄妹はもっとしっかりとしなさい」


 それを言われると何も言えないよね……当然勉強会とかもしていたけど、義兄さんが良い感じに放りだすことが多かったので、私もそれに便乗する形で逃げ出す事もあったし。

 

「分かってはいるんだけどね……どうしても集中力が続かないからさ……」

「次からは翼が逃げても香奈は逃がさないから、覚悟しなよ?」

「その時は咲ねぇ!助けてくださいね?」

「ごめんね?それについては私は美玖ちゃんの味方だよ?」

「えぇーーー」


 そんないつも通りの会話をしていた。


 ――それから暫くして。


「それより香奈?今日はいつも以上に落ち着きがないけど、なにかあった?」

「そうだよね。私も美玖ちゃんと同じことを思ってたよ。何かあるの?香奈ちゃん」


 私は二人にそう言われてちょっとドキッとなった。

 でも正直それに関しては心当たりはある。

 

 実は昨日の夜、星斗先輩と連絡を取り合った後色々と考えたけど、やっぱりこの二人には嘘をつきたくないと言う結論に至った。

 二人だったら絶対的な信頼があるもんね。

 それに女の子同士だし、相談出来る事もあるだろうし。

 勿論義兄さんには嘘をついて良いとか、信頼がないって事ではないけど、義兄さんに話すかは二人にも相談したいことの一つかな……

 もしかしたら簡単に理解してくれるのかもしれないけど、星斗先輩を明らかに嫌っている義兄さんに話すのは心配だし。


 一応今日の朝、星斗先輩にはこの二人だけには教えても大丈夫か?そう聞いてみたら、私が信用しているのであればと二つ返事で大丈夫と帰ってきてはいた。

 そんな訳だから、今日の私はそのタイミングを図っていたからそう思われたんだろうな……


「えっとね……怒らないで聞いてくれる?」

「香奈ちゃんは悪い事でもしたの?」


 私がそう言うと、咲ちゃんはちょっとびっくりしたようにそう聞いてきた。


「そういうわけじゃないんだけど……」

「悪い事をしていないのであれば、私たちは怒る訳ないじゃない。何かあるのであれば相談に乗るけど」

「えっとね……二人のクラスに、星斗先輩っているよね?」

「星斗先輩って、如月星斗のこと?」

「そう、その先輩……」

「いるけど、それがどうかしたの?」


 星斗先輩と聞いて美玖ねぇは何ともなさそうだけど、咲ねぇは明らかに心配そうな顔になった。


「ふ、二人は星斗先輩の事はどう思ってます?」


 私はそんな二人に恐る恐るそう尋ねた。


「私は別にどうとも思ってないかな。大体話した事もないしね。流石の私でも噂くらいは耳に入っているけど、噂を信じる性格でもないもの。だから彼をどう思っているかと聞かれたら、良い印象も悪い印象もないって感じかな?ただ一つ言いたいことがあるのだとすれば、どうして彼が私より頭が良いのかって文句は言いたいけれどね」


 美玖ちゃんはちょっと気に食わなそうにそう言った。

 確かに星斗先輩は頭が良い美玖ちゃんより更に頭が良いと聞いている。

 テストでも全部学年1位って聞いたしね。そのせいでずっと2位だもんね、美玖ねぇは……勿論2位でも凄いけど美玖ちゃんは負けず嫌いの所があるから悔しいんだと思う。

 でも悪い印象が無いのであれば良かった。


「私は……どうかな……良く分からないかな」

「良く分からない?」

「うん。中学校の頃はほとんど登校してなかったし、同じクラスにもなった事が無かったから、噂だけを聞いて凄く怖いなって思ってたけど、高校生で同じクラスになって分からなくなったな……」

「どうしてですか?」

「一言で言うと、噂と随分と違うなって思ったの。ちゃんと遅刻しないで登校してくるし、授業だって普通に受けてるから印象と全然ちがったの。掃除だってしっかりとしていたしね。それに他の男の子たちと違って、私たちの事をじろじろ見てこないから……」


 咲ねぇと美玖ねぇは本当に可愛いから、小さい頃から男子にモテモテで、視線を集める事が本当に多い。

 美玖ねぇはさっぱりとした性格だから全然気にしてはいないけど、咲ねぇは違う。

 咲ねぇは……いや、美玖ねぇも大きんだけど、咲ねぇは胸も凄く大きいから、男子からのいやらしい視線には本当に苦労しているみたい。

 中学二年生の頃には大きかったせいで、空気の読めない男子達にいじられる事も多くなって、それが恥ずかしくて男子と話すのが苦手になったくらいだ。

 本当に無神経な男子が多かったらしい。


 美玖ねぇだったらこんな時はいっつもこう言っている。


(男なんて猿だから無視すればいいのよ)

「男なんて猿だから無視すればいいのよ」


 ほらね……これは美玖ねぇなりの咲ねぇへの慰めでもある。

 今でこそマシになったけど、当初なんて不登校になるんじゃないかってくらい落ち込んでいたからね


「分かってるよ美玖ちゃん。私もそう言われてから大分マシになったからね。ともあれ如月君についてはそんな感じかな私は。と言っても怖い噂も多いしちょっと怖いのは事実だけどね」

「なるほど……そんな感じなんだね」

「そうね。私はさっきも言った通り自分で見た事しか信じないから、不真面目でマイナス、勉強が出来るでプラス、つまりはゼロね」


 咲ねぇはちょっと怖がっているみたいだけど、これくらいなら話しても大丈夫そうだね。


「それじゃあ、話しますね。実は……」


 そうして私は二人に星斗先輩に助けられた時の話から始めて、勝手に教えて良いか分からない身の上話以外を全てを話した。

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