われてもすゑに逢う床屋

DA☆

われてもすゑに逢う床屋

 「せをーはやーみー!」

 うわ何やあのオッサン怪体ケッタイな声出しよって。あぁびっくりした。

 ……あぁすんまへんお客さん、今あのアホのせいで手ぇ滑ってしもて、どっか切ったとこおまへんか? 髪? そら髪は切ってまっせ床屋やもん。そやのぅて? つむじらへんをチョッキンなと? あー……、すぐ生えてきまっさかい、気にせんときなはれや。


 「せを…はや…み…」

 あんたここ来んの四回目やで。切る髪も髭もあれへんで。毛ぇ植えてくれ? アホなこと言いないな。

 ……お待っとさんですお客さん。今日はどないしましょ。え? 毛ぇ植えてくれ? あんさんまで何言うてけつかんの。生え際の後退が深刻? 知らんがな。わかめでも食うとき。


 「せをォ! はやみぃぃ!」

 わぁ何してくれるんや商売もんの鏡割りくさって! 何?「割れても末に買わんとぞ思う」? 知るかボケ。ご大家たいけの使いやったらさっさと弁償しさらせ。

 ……すんまへんお客さん、そこの鏡わやになってしまいましたよって、こっちの席来とくんなはれや。え? 割れ鏡は縁起が悪い、塩撒け? 床屋の鏡にそない縁起ありまっかいな。ほなその髪全部剃ってしまいまひょか、三年は縁起悪いモン出まへんで。え? それは別のはなし? お後がよろしいようで。

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