Act.15-2
「その子、末期がんで、もうすぐ死ぬそうじゃない! だから学校へ来てないって教えてもらったのよ!」
その言葉が放たれた瞬間、空気が張り詰めた。
「おい! 沙也! それは言っちゃだめだ!」
ヨシが、慌てて沙也の腕を掴んだ。
「そうよ、沙也。やめて!」
真奈美も沙也の肩に手を掛けた。だが、沙也は勢いそのままに振り払った。
「私は、晴海君のために言ってるのよ!」
声は切迫し、思い詰めたような響きを帯びていた。
「晴海君! そんな、もうすぐ死ぬような子と一緒にいても辛いだけじゃない! だって、明日死ぬかもしれないんでしょ? 私は、晴海君がそんな子のために傷ついて欲しくないの!」
沙也は息を荒げ、言葉を止めない。
「悲しい別れしかない子といて欲しくない! あなたはまだ高校生よ? 未来がある! これからもっと楽しい人生があるのに、なんで、もうすぐ死ぬ子なんかと、恋愛ごっこしてんのよ! もしかして、同情?」
彼女の声は、感情の高ぶりとともに、少し震えていた。それでも言葉を止めようとはしなかった。
「恋愛ごっこ? 同情?」
反芻した、晴海の眉がわずかに寄った。彼が蒼子の状況を哀れんで同情し、おままごとでもしているかのような口調で、沙也は彼らの関係を断じていた。晴海は静かに息を吐いた。そして、目を閉じたが、それは、ほんの一瞬だった。
次に彼が目を開いた時、その視線はこれまでにないほど冷たく、鋭く、怒りの色が宿っていた。
「ふーん、そいつらにはそう見えてたんか」
彼の声は低く、抑えられていた。けれど、その一語一語に込められた強さが、その場に鋭く響いた。
「まぁ、関係ないから、どうでもいいけどね。んで? 大木さんに、それが何か関係あんの?」
晴海は静かに言葉を続けた。だが、その語尾には確かな拒否の感情がこもっていた。
「僕らが何をしていようが、君には関係ないでしょ?」
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