魔法決闘:これはお嬢様とメイドの決闘のお話である。

@yamimure

第1話 主従は出会い、決裂し、決闘す

 晴れ渡る春の陽気。新年度というものにふさわしい青空。

 その下、遥か地表──巨大な影が、校庭を覆う。

 その威容は巨人の如く、しかして生身の部分は一つもない。"それ"の全身と呼べる無機物の肢体は、堅牢なる青銅で覆われていた。

 金属超量最硬の塊が、蒼天より墜つ。目掛けるは一点、そう、一点の獲物を目指して飛び掛かっていたのだ。

 その巨体の肩に乗る黄金髪の少女が、薄い笑みと共に好戦的に問いかける。相手へ。


「強襲、といきましょうか、我がメイド?」


 決闘の相手へ。

 白い肌、白いポニーテール、赤い瞳。

 黒鋼の短刀ナイフ。白黒のメイド服。


 これはお嬢様とメイドの決闘のお話である。



「──以上、三年度代表、ヒビキ・アルケイデアでした。これからも日々、皆さんと共に励ませていただきます」


 真っ白な石造りの重厚かつ巨大な講堂。スピーカーから鳴るチャイムと同時に締めたスピーチには万来の拍手。

 王立魔女養成学院"クオン"の中でももっとも神聖と呼べる場所の更に中心、演台の前で、大勢の生徒を前にスピーチを終えた少女、ヒビキ・アルケイデアはほっと息を吐いた。

 始業式の代表挨拶を終え、高揚感にもともとまっすぐだった背筋を更に伸ばしながら、感慨に浸る。ここまで来た、と。もっと平たく言うなら、やった、と。

 もちろんその黄金色の髪の先からサファイアカラーの瞳の奥まで、そんな感情は外にはおくびにも出さない。真新しい制服のスカートを少しだけ右の手ではたき、壇上を降りる。

 責任感と期待感、スピーチを終えた彼女の頭はそういったものでいっぱいだった。この三年度生の代表として選ばれ、その最初の職務を完璧にこなし、そしてより高みを目指すべく、日々学業に励み、模範となり、そしてなにより「魔法マギア」の真髄を極めんとす……と少々多すぎるくらいの思索を巡らせる。これからに思いを馳せ、これからの自らへの期待をかけた。


(当然。当然これからも、私が一番、更なる高みへ。驕りなく自負を持ち、参らせていただきますわ)

 

 心の中で一言、そしてこつこつと制靴で講堂に集まる生徒の輪を割っていく。スピーチを終えて退場するまで、静かな講堂に響くゆっくりとした足音すら、完璧に調和が取れている。上のブレザーも下のスカートも自分と同じ制服なのに、どうしてこんなに様になるのだろう、そう多くの生徒がヒビキを見て思うのだ。

 そういうわけで、ヒビキは優秀も優秀、名門も名門、クオンに通う魔女の卵たちの中でも指折りの人物である。歩けば目を引き、座れば見つめられる。ずっと伸びた金髪と力強いまつ毛に包まれた碧眼に代表される麗しい美しい容姿も合わせれば、お嬢様という形容がすっぽり当てはまる。

 優秀、名門、お嬢様。そこに一族でも頭抜けた魔法マギアの才があり、だからこそ彼女は心のうちに更なる目標を立てている。

 この国一番の魔女になる。

 すなわち女王の冠を戴くべく生まれ育つのが、ヒビキ・アルケイデアであった。

 ……およそ、30分後までは。

 講堂でのスピーチを終え、始業式が終わり、たくさんの生徒の視線を集めながら、我関せずと教室に向かう。そこまでは当然だった。廊下を歩くことも、教室に入ることも、私が一番優先される。それくらいの気持ちだった。

 そういう諸々を終え、スピーチからきっかり30分ののち、ヒビキが一番乗りとばかりに教室の扉を開けると、


「ああ、あなたがヒビキ様ですか。アルケイデア家当主様、すなわちヒビキ様のお母様からあらかじめお話は伺っております」

「三年度特別編入生、そしてあなたのメイドを務めさせていただきます、マギ、と申します。ファーストネームはありませんので、そのように。よろしくお願いいたします」

「──おっと失礼、近寄るのは控えていただけると。このように、反射的に手が出てしまいますので」


 誰もいないはずの教室に、見知らぬ少女がいた。

 制服を着ていないどころかまともな普段着とも思えない白黒のエプロン──メイド服というのだったか。

 それだけ。

 教室の扉先で対面してから近寄って地面に組み伏せられるまでの2秒半、なんとか考えられたのは、その転校生の奇怪な服装についての分析だけだった。

 私のお母様がなんだとか、特別編入生がなんなんだとか、あるいは彼女の赤い瞳と白銀の髪はいかにも自分と真逆で相入れないとか、「あなたのメイド」とか。

 あらゆる疑問がヒビキの頭を掠めるのは、互いの関係を確認してから。

 初対面の少女が目と鼻の先で突きつけてきたものが鋭利なナイフだと、今自分は殺されかかったのだと、それくらいは理解してから。

 そして一旦、


「──そのナイフ、下ろしてくださる? 私から触れるのは良くないようですから」


 こう返す胆力がある。

 首筋に刃物、一寸先に無感情なルビー瞳。教室に入るなりそういう状況に叩き込まれて、ヒビキ・アルケイデアはあくまで平静の物腰を崩さなかった。冷や汗一つ流していないのも言うまでもない。穏やかに、かつ独特の威を放ち、目の前のメイド服の少女に言葉を投げかける。一触即発の空気は、教室周りの視線を軒並み釘付けにしていた。


「ふむ。改めて失礼いたしました、ヒビキ様」

「いいえ。ただ、人目というものは気にしたほうがよくってよ」


 黒一色のナイフを引き下げ、瞬きのうちにそれはどこかへ消え去り、メイド服──マギ、と名乗った少女は直立の姿勢へと戻った。とはいえヒビキの言う通り、状況を回復したとて、現在の状況の異常性は揺るがないだろう。

 理由は明白である。学年代表が教室に入るなり、謎の少女に襲われたのだ。当たり前だが学院内での切った張った、すなわち暴力行為はそれなりの異常事態であり、よほどのことがないとありえない。特段の理由なく襲いかかるのは、流石に周りの生徒の眼を引いている。

 とはいえそれくらいでパニックを起こすほどクオンとその学生は軟弱ではない。どちらかといえばギャラリーの関心は、クオンの筆頭、女王の卵、ヒビキ・アルケイデアが襲われたこと。本来あり得ないはずの特別編入生の次なる言動、あのヒビキさんに対してどんな申し開きをするのかは、当然気になるところだった。

 が、


「ふむ」


 マギはそう一言、一頷き。


「問題はないかと」


 そして、特段感情も載せず、そう言ってのけた。マギは知らない。問題ではない。学院のルールも、不文律も、一般常識も。そんなことより、命じられたオーダーが最優先。

 メイドは主に使えるため、クオンへの特別編入手続きを行なった。つまりその目的はもちろん、


「私はヒビキ様のメイドですので」


 ヒビキ・アルケイデアの、メイドになるためである。それだけが決まっていて、それが果たせたならどんな手段でも問題はない。すなわち、先ほどの切った貼ったについて、マギは特段の疑問を持っていない。問題はない。

 ……そう振る舞っているように、ヒビキからは見えていた。

 しかし結局のところマギは謎の人物、それも正体不明の危険人物であり、特に目をつけられたヒビキにとっては、


(…………っなんなのかしらこの子!!)


 内心穏やかではない。あくまでおくびにも出さないが、至極当然にこの状況に戸惑っていた。極めて、と形容してもいい。衝撃で止まっていた思考を動かしてみれば、何もかもおかしいことだらけだ。

 まず、メイドなど雇った覚えはない。そもそもそんな職業はフィクションだと思い切れるくらい見たこともない。アルケイデア家にだって一人も雇っていない……はず。

 しかし当主、すなわちヒビキにとっての「お母様」の差金であるらしく、更に「特別編入」。どちらもイレギュラーだ。ヒビキにとって母親は滅多に会わない人物であり、母親が自分に何かを差し向けてくるなんて想定外だ。そして次に名乗る特別編入なんてものは、クオンの歴史上聞いたことがない。魔法マギアの素質を持って生まれた時点で入学が確定するクオンにおいて、途中から誰かがやってくるなんてことはありえない。

 そしてやっぱり、メイドというものはおかしい。

 つまり、マギの言っていることのすべてが、理解し難いのだ。


「どうかしましたか、ヒビキ様。顔色が少し」

「いいえ? 何も?」

 

 色々考えてみるが、結論どころか序論も出ない。目の前にいる……マギ、自称自分のメイドについて判断できることがあるとすれば、先程まで自分の首元に突きつけられていたナイフはどこかへしまわれ、既に姿勢を正して両手を前に揃えた立ち姿に入っているということ。この待ち構えるような佇まいも、メイドの姿勢というやつなのだろう。思えば先ほど組み伏せられた時もそうだったのだから、下手にこれ以上近寄るべきではないのだが。

 とはいえ、メイド。最初から名乗っているのだから、服装はもちろん立ち振る舞いについても多分そういうものなのだろう、と解釈する。用命を承るまで静かに待機するもの。そういう知識をたどってみる。小間使いが必要だと思ったことはないのだが、古い書物にはそうあった。メイドとは、それくらい珍しいものなのだ。

 ヒビキにとってこのクオンは常在戦場であり、周りすべてがライバル。筆頭で優秀であることが何より大事であったので、他人の手を借りるなどもってのほか。そういう意味で、メイドなど何を考えているのだ、ということでもある。個人的に気に入らないことは特にそれで、残念ながらマギにとってはそれこそ一番譲れないことであるようだった、ということだ。


「こほん」

「はい。ご用命でしょうか」

「ええ、そうね。マギ、あなたは──」


 何より心底気に食わないことがもう一つあるが、とりあえず。


「とりあえず、授業を受けましょうか? メイドである前に、この学院の生徒なのですから」

「承知いたしました、ヒビキ様」


 ひとまず諸々を置いておいて、我々は学生であるのだ。どんな波乱があろうとも、模範的生徒像は崩すわけにはいくまい。付き従う素振りを続けるマギを自分から引き剥がし、ようやく事態を終息させる。

 ゆっくりと教室の奥に向かうマギを見て、やはり自分が何か言えば従うらしい、それならそれで何事もなく済ませよう、そうヒビキの冷静な部分は判断した。あらかた片付いた、そう判断してよかった。ヒビキとマギの周囲の生徒も、視線はともかく自らの席に着く。クオンはスパルタ、新学期初日から授業がある。


「えー、では。今日は初日ということで、改めてこの国の歴史について──」


 けれど机についたヒビキには、どうしても切り替えきれない「冷静でいられない」事情があった。


『──おっと失礼、近寄るのは控えていただけると。このように、反射的に手が出てしまいますので』


 教室に入るなり「不覚を取られた」、という事実である。もう一つの気に食わない事情とは、つまりこのこと。所謂「実技」の分野でも、いやそれこそ、誰にも遅れを取ることなく過ごしてきた自負があったのに。

 刃の先は目で追えた、しかし、「最初」が見えなかった。なにより身体の可動速度は、明らかにマギが上回っていた。初戦を擬似的に終えられたのは幸運だった、そう思っておくべきか。


「つまりこの王国は、魔法マギアによって栄え、発展していて──」


 授業をしっかり聞きながら、並列思考で先程の展開を分析する。とん、とん、とんと、スラリとした人差しの指先が折り曲げられ、学習机を連弾する。そのように授業中にも関わらず物思いに耽るヒビキの姿は、一見不真面目な生徒にも思えるが、そうではない。無視しないこと、悔しがること、あらゆる苦難を第一に考えることは、彼女のすべてのモチベーションに直結している。何よりも気に食わないこと、それを決して諦めないから、ヒビキはこの学年のトップに選ばれている。

 故に授業中の多少の物思いも、その性根があってこその彼女なら仕方ない、そういうものではあるのだが──。


「……ヒビキ様。ヒビキ様」


 ──背の方から「まだ」聞き慣れぬ声がして、ヒビキははっと我に帰る。その声の主、授業中にも関わらず席から立ち上がる不届きもの、やはりヒビキに悟られずその死角に立つのは、


「ちょっと……ええと、そこのあなた、授業中ですよ!」

「お気遣いなく、先生。私よりヒビキ様の方が重要ですので。それと、マギと申します」


 教師の制止も意に介さず、他でもないマギである。

 一瞬の出来事であった。瞬きの間にマギは自らの席(一番後ろの端を希望した)から消え、ヒビキの背後に立ったのだ。その距離およそ三メートル。それを一瞬で詰めつつ、やはり自身のパーソナルスペースには殺気めいたものを漂わせ周りの生徒はたまらず退避する。

 てんやわんやの大騒ぎ、生徒の、教師の、教室中の注目を再び集めながら──特別編入生というものはどうやらとんでもなくわけがわからないらしいと実感させながら──マギはこうのたまうのである。


「ヒビキ様。授業を聞いていませんでしたね」


 ヒビキの方を冷たく見つめて、一言。もちろんヒビキにとっては図星であった。図星ではあったのだが、


「それではいけません。授業を受けようと言ったのはあなたなのですから」

「そもそも私はヒビキ様にお仕えするためにこの学院に編入したのであり、主の過ちは正す必要があります」

「授業を中断させてしまったことについてはお詫び申し上げます。しかしこれは重要なことなのです。私、そしてヒビキ様も、すべての生徒が不足なく学業に勤しむということは先程ヒビキ様自身が命じたオーダーであり……」


(……じっっっっっょおおおおおおおだんじゃあありませんわ!!!!)


 ここまで晒し者にされるとは、聞いていない。

 なにより、「また」、不覚を取った。ヒビキは勢いよく拳を振り上げそうになり……すんでのところで踏みとどまった。

 埒外、場違い、論外だ。

 

「……こほん。先生、気にせず授業を」

「ええと、いや、それならそのマギさんを」

「ふむ。ヒビキ様、授業を受ける気になりましたか」

 

 そういうことではない、そういうことではないのだが、そういうことにしておこう。そもそも歴史について王国だとかこの学院の成り立ちだとか始まりの魔女の預言だとかはこの私が今更復習するまでもないとか、そういう傲慢があって聞いてなかった節もあるだろうことも認めよう。

 つまり、生徒なのだから授業を受けろと言いながら、その実ちゃんと受けていないという、その指摘自体は正しいのは、わかる。

 だとして、「気に食わない」。

 

「……ええ。その代わり」

「はい。ご用命ですね」


 自分のメイドとかいうトンチキとか、授業を受けさせるために辱めを与える感覚のズレとか、そういうことが全部気に食わない。その実自分自身のことは無頓着な様子があって、そこが何より気に食わない。

 ヒビキの芯は、己を己で律すること。


『私よりヒビキ様の方が重要ですので』


 その一言が、一番気に食わない。

 私のことは、私でやる。


「……改めて。呼び名は、マギ、でよかったかしら?」


 心底丁寧に、沸々と燃える闘争心を瞳に秘めつつ。マギは呼ばれた方へ全面的に向き直り、


「はい、名前はそのように。なんでしょうか、ヒビキ様」


 距離を保ったまま、ヒビキの胸中など梅雨知らず。指先一つまで自然と力を抜いて、まるで無防備。隠すまでもなく無表情無感動を極めた所作が、"それ"に二度も不覚を取られたという事実が、最後のスイッチを押した。

 何より、ヒビキは許せない。

 

「クオン校則第一条。あなたもこの学院の生徒なら、もちろんご存知ですわよね」

「はい。理解はしております」


 ヒビキ・アルケイデアの最大最奥の目標である、女王の要件について。優秀な魔女であることはもちろんだが、その中でも一番重要とされていることがある。

 

「なら、結構。……されば、上等! ──であれば、可及的速やかに!! クオン校則、第一条により──」


 ここに高らかに宣言される第一条は、クオンを、この王国を定義する始原の理。


「私、ヒビキ・アルケイデアは、あなた、マギに、"決闘"を申し込みますわ!!!!」


 王国最初の女王──始まりの魔女が言い遺した女王の要件は、この国の頂点に立つ所以は、どんな富をもたらす力でもなく、極めて高い戦闘能力である。叛乱を恐れるか、あるいはまだ見ぬ外に「備えて」か。彼女の真意はやはり知れないが、この要件は現代においても守られている。クオンの成績判断においても、特別基準として。

 故に、ヒビキのそれは宣戦布告。


「ご用命とあらば、承りました」

 

 相手による同意が、最強を決める最適の方法、"決闘"の合図である。

 ヒビキ・アルケイデア。あらゆる教科で優を納める彼女の成績を特に大きく引き上げているのは、ずばり「決闘」の項目。ただ魔女となるためだけでなく、その先にある女王の座を目指して、何より誰より強くあろうと極めて来たのだから。

 騒然となる教室の中で、紅碧の視線がぶつかり合う。

 ──これが、二人にとって最初の戦いだった。



「なになに、初日から決闘? あのヒビキさんが? 相手は?」

「特別編入生だって。なにそれ。聞いたことないよね」

「そうそう、うちの学年のクラスだよ! いきなりヒビキさんを襲って、メイドだとかなんとか……」

「メイド?」

「メイドって何?」

「あの格好がそうなのかな」


 ──舞台は校庭、学院の中心にある広場に移る。ギャラリーは距離をとりつつ大量に。青青と茂る芝の上、相対するは金と銀、ヒビキとマギ。


「……ところでマギ、あなた制服は? 会った時からの疑問なのだけど」

「必要ないかと。私はヒビキ様の」

「メイドだから、じゃないわよ! それを認めるのは勝ってから! そうでなくともクオンの一生徒、制服の重要性は当然わかっているでしょう!」


 ──一度スイッチが入ったヒビキは、少々お淑やかからは離れてしまう。具体的にはせっかちで、口うるさく、何より相手の口数が少ないのが気に入らない。いまだ平静たるマギはおよそ最悪の相性であった。

 しかしながら苛立ちながら、ヒビキは捲し立て続ける。ばし、と自らの胸を左の平手で叩き、新品のブレザーに最初のシワをつける。

 魔女養成学院クオンにおける制服というものは、殊決闘においては、単にその学院の肩書を背負うだけのものではない。

 魔法マギアの使用に必要なエーテル循環の効率化、および戦闘服としての耐久性と機動力、すなわち"決闘"のための標準武装。自分から持ちかけた闘いだとして、引き受けた相手に対しては正々堂々、そもそもそれ以前に危険だろう、当然だろう、という意識を滔々と語るのである。


「おわかりですわよね!? 決闘の場において制服を着ないということは、そもそもが危険であって、更には同じ土俵に立っていないということであり、だからつまり、いきなり連れ出しておいてなんだけど、さっき用意させた制服を──」

「必要ないかと」


 用意されたという自分の制服を見るまでもなく、ばさり。制服についての早口を、マギはちゃんと聞いていた。その上で、


「私はヒビキ様のメイドですので」


 またそれだ、というのは、呆れる理由にならず。ため息を噛み殺す音が、多分ギャラリー全員に幻聴した。ばりぃ、と。

 誇りを説いてはすり抜け、世話を焼いては弾かれ。メイド気取りが当然という振る舞いで、クオンの生徒である自覚も無に等しい。特別編入生だからなんでも例外だとか、そういう事情を聞き出す気も、


「──あったまきた」

「どうぞ。いつでも」


 すっかり失せた。

 こんなのに負けていられるか、叩きのめしてやろうか。

 決闘の決着条件は、降参か戦闘続行の不能。賭けるのは互いの点数と、「主従」と「生徒」の立ち位置である。二人に唯一共通点があるとすれば、自分の立場についてのこだわりであった。それくらいは、ヒビキにもわかった。

 だからこそ、クオンに誇りを持つ生徒として。


「私が勝ったらその透かし切った御尊顔に、クオンのいろはを叩き込んで差し上げましょう!!」


 ──あるいは諸々の理由があって、ヒビキはマギに向けて駆け出した。駆け出した、というには少々「突発的」かもしれない。地面に向けて胴体を水平に、手脚はそれを支えるように。前傾姿勢による人体機動最速の策、クラウチング・スタートである。魔法マギアの源、エーテルを練り上げての運動能力は、速度も瞬発力もヒトの域を超える。真正面へ向けて一直線に、ヒビキ・アルケイデアは「消えた」。


 否、距離を詰める途中で跳躍した。斜め上45度、足元の砂煙と共にヒビキはさらに距離を詰める。しかしてマギとは正面衝突ではなく、空中にその姿を現し──すなわち、地の利を得る。

 本来人体は足場のない場所では無防備になるが、"ヒビキは別だ"。故に先手を取り、故に上を取る。高さを克服すれば、彼女にとって「先程」のような遅れを取る心配はない。

 正確に言えば、十分な空間的余裕があれば。それが戦場の中心であればあるほど、尚いい。


「──召還コール。悉くを打ち砕く青銅の魔神!!」


 巨大かつ複雑な魔法陣が、一瞬にして上空に描かれる。これがヒビキの魔法マギア。魔法陣を門として異界と接続し、空想に等しい脅威を呼び出す。

 脳内に記憶された陣形を口上と紐付け瞬時に呼び出すことで、あらゆるタイムラグを大幅に短縮。アルケイデア家に代々伝わる魔法マギアでありながら、ヒビキは自らのアレンジを加え更なる高みへと到達した。

 ヒビキ・アルケイデアの魔法マギア、『召還コール』。


「おいでなさい、青の律動ターロス!!」


 無骨な動く青銅──無機質な両手両足を持つ魔神──それは太古の伝承に伝わりし、ひとりでにて動く石像。即ちゴーレムと一般に呼称されるもの、その「青銅製」バージョンである。すべてを弾きすべてを潰すはまさに"最硬"。大胆にも、切り札を初手で切った。

 無空から喚び出されたそれは、見上げた視界を覆うように僅か中空より巨大質量となって、それに比べれば小さな小さなメイド服の少女、マギの全身目掛けて降り注ぐ。その体長はおよそ10メートルにもおよび、そのまま質量兵器として上空より襲来する。

 主人たるヒビキを肩に乗せしっかりと「足場」になり、こともあろうに空中でその巨体を制御、指向。紛れもなくそのゴーレム、「青の律動ターロス」の意思により、着地点、飛来点、直撃点を制御する。

 そう、意思ありて、しかしてヒトではない魔の遺物。独自に練り上げた召還の法で、ヒビキ・アルケイデアは自立式の青銅を従えている。ヒトに壊せるモノではなく、ヒトより遥かに忠実なしもべ。それを魔法陣の展開さえできればいつでも瞬時に呼び出せること。そしてその巨大かつ堅牢なゴーレムを、"空より堕とす"運用。大胆かつ好戦的に、威力と速度を両立した質量格闘兵器として運用すること。

 アルケイデア家でも優れた者にしか顕れない召還コールを、更に彼女自身の戦闘センスで文字通り相手に叩きつける。「勝ち続けるには、常に攻める側に立てばいい」。この思考と理論とそれを補助する強力な魔法マギアが、ヒビキが今まで積み上げてきた不敗神話の大きな一助となっている。


「強襲、といきましょうか、我がメイド?」

「おや、メイドと認めてくださるのですか」

「認められていない自覚はあったようね! 少々好感度が上がったわ!」


 飛来する青銅の鉄槌に対して、マギはその影に覆われながらも──未だ体勢を変えない。着弾までの僅か数秒、青の律動ターロスが狙いを定めるまでの時間。マギはじっと、両手を前に重ねて立っていた。

 見極めるように。

 ──そして、響く。

 響くというには、重く。ごうんと沈む落着の音。あまりにも硬い青銅が、大地を抉るように落ちた音。あたりには砂煙が舞い、ゴーレムは校庭の中心に鎮座する。狙い澄ました必殺の第一撃、手応えは、


「では、こちらから参ります」


 空振り。

 その巨体と同じ高さ、ヒビキの乗る肩の高さまで、白黒のメイド服が跳んでいた。体内のエーテル活性を制服により加速することで、ヒビキは一連の叩きつけを寸刻のうちに済ませた。弾丸の如き脚烈、重力速度9.8に任せた垂直落下。

 しかしマギの瞬発力は、それを優に超えている。

 

「躱したか!」


 マギは落下する巨躯を避け、跳躍する。それを目で追うヒビキ。目でしか追いつけない速度で自らより上に、メイド服が飛んでいた。もはやマギの速度を捉えられないことについて、ヒビキは驚かない。悔しがらない。ただ、こちらの方が強ければいい。

 マギの両手が、虚空に振られる。振られた──否、投げられたのは黒一色のナイフ。およそ十本。当然エーテルが込められているだろう、一つ一つが必殺の切れ味を持っている。マギの膂力で投げられたそれは、既にヒビキに捉えられる速度を超えている。

 だとして、


「……召還コール!!」


 彼女の「守り」は、硬い。

 召還の法が叫ばれ、魔法陣とその先を呼び出すワンアクション。これだけは、構えるのだけはマギより速い。既にそれを見抜いているから、

 "置けばいい"。

 青の律動ターロスの腕だけを、自身の目の前に転移させ、盾とする。同時に身体の一部を削がれたゴーレムは体勢を崩し、大きく傾く。広範囲にばら撒かれたナイフすべてを青銅で受けつつ、ヒビキは"狙い通り"、その肩から落下する。ナイフを投げたマギが地上に落ちるより、少し低い位置から落ちる。

 やはり地の利を取りに行く。先ほどは「相手より上」、今回は「相手より下」。共通しているのは、自分しか立っていない足場が存在すること。相手の動きを待ち構えられること。故に地の利。瞬発力と機動力で劣るヒビキは、立ち回りで優位性を取る。

 

(……着地! ここから──)


 ここまで3秒。受け身を取って全身にエーテルを駆け巡らせ、未だ空中のマギを強化された動体視力で確認。これなら、彼女の着地前にまた先んじた一手を構えられる。何を仕掛け何を置くか、本来ならじっくり考える時間など当然ない。

 が、


「なるほど。そちらは私に"合わせて"いたのですね」


 時間稼ぎはさせてもらう、その口火は先ほどの攻防で既に切られている。

 直後に大地を踏み締めそう呟くマギの目の前にあるのは──「片腕を失い」バランスを崩したゴーレムの崩落。魔法マギアの入出力は、使い手の意思でいつでも切り替えられる。

 既にヒビキの召還コールは部分的に解除されている。


「先ほどの片腕の転移で、ゴーレムの体勢を崩させ……その崩壊と私の落着を合わせる。自由落下である限り着地点は予測できなくとも着地時刻は押し計れますから、叩き潰せるように仕込めばいい、と」

「大したものですね」


 自らに落ちる影の主を見上げながら、冷静に分析、端とした言葉で感嘆を述べるマギ。彼女の着地にヒビキが仕掛けたゴーレムの自壊は、今までの立ち回りから計算されて作り出された地の利をぶつける攻撃。魔法マギアのオンオフで仕込んでおけるノーアクション。視界を覆い、全身を覆い、それは間も無くマギを押し潰す。硬く重い青銅塊の質量兵器。

 崩落の音と衝撃を、土煙に目をこすりながらヒビキは見守っていた──もちろん、次を構えて。

 

(……こんなものではないでしょう)


 尋常ならざる機動力、取り出す素振りも見えない黒のナイフ。ここまでヒビキが見てきたマギの挙動は、これで封じられる。範囲と質量。そこに誘導すれば、ここまではいい。

 だが、それだけではない、マギの戦法はそれだけではないのだろう、そういう確信がヒビキにはあった。敏捷で先手を取り、防御の間も無く突き刺すのは、第一手、一つ目の武器。そのナイフが彼女の魔法マギアだったとして、それしかないはずがない。そういう確信。

 試されているのだ。自分はメイドなのだから、職務に忠実に。すなわち、主人の実力を試すことが、マギの戦い方の軸にあったと、ヒビキはこの殺陣で直感した。

 偉そうにもこの私を見定める余裕があるなどと、そんな煮え繰り返りがありながらも、故に油断はありえない。

 予想できないとして、勝ちは譲らない。戦闘前までは散々振り回されていたヒビキが、確かに戦場を掌握している。先述の通り、ここまでは。

 であれば、ここからはブラックボックスの化かし合いだ。


「起動。問題なし」


 考えた通りだった。

 目の前の青銅の山が、粉々に弾け飛ぶのが見えた。その下にあったのは、巨大な鎚を振るう少女の姿。

 マギの全身をゆうに超える大きさの得物。ヒビキの"最硬"をも砕き割る、黒く細い柄の先に取り付けられた乱反射する鏡面を持つ直方体。左に、右に、上に、下に。金属音、衝突音、破壊音。先ほどまでのナイフとは打って変わって巨大な得物だが、マギはまるで意に介さず乱雑にかつ軽々と振り回し、落ちてくるゴーレムの残骸を破壊していく。

 一振りのうちに互いの破片を撒き散らし、それを僅かな歩調で避けながら無感情に鏡鎚を振り続ける。嵐の中心は凪いでいる、それを体現するかのような荒々しさと平静のコントラスト。崩落するゴーレムとマギの持つ鎚が、あっという間に互いを粉々にしたあと、


「行きましょうか」


 マギのその両の手の中に、瞬時に再構成された。

 これが、マギの第二手。膂力に任せてすべてを粉砕する、所謂ダイヤモンドハンマーである。

 だが、第二手があるのは、マギだけではない。

 マギをゴーレムの残骸で押し潰しながら、その隙でヒビキが取った詰めの一手。何が飛んできてもいいように、考えられる最善の手、それは──"新たな魔法陣の展開"。


「──召還コール!!」

「では」


 地表に、光り輝く陣形が描かれた。

 もちろん、マギはヒビキの攻撃を阻止するように動く。正確には、距離を詰めるように動く。ゴーレムを捌けるとして、新たな守りも挫けるとして、ヒビキの能力の真髄は、「自身に優位な状況を作り続けられること」。今まで先手を打ち続けられたのは、様々な手段でヒビキの側から仕掛けていたからである。

 直接戦闘を避け、あらゆる事象を組み合わせて積極的に駒を置いていく。攻めの守り、先回りで機先を制す。召還コールは、そんなヒビキの戦法に適した魔法マギアである。

 ならば、組み立てられる前に先んじて動けばいい。これが召還コール攻略の正々法であり、当然ヒビキもそれを織り込み済みだろう。

 既に魔法陣は展開されており、マギは決戦決着となるべき地点へ巨鎚を携え向かっていく。小細工なし真っ正面、研ぎ澄ませた技をぶつけるだけ。マギはそうだ。私はそうだ。どんな時でもできることをするだけだ。

 ならば、不確定要素は相手にある。どんな手を繰り出してくるか、どんな相手が待っているか。それを待ち望み、俊速で駆けてゆく。


(これが、魔法マギアというものによる戦闘)


 それが特別編入生として雇われたマギが、唯一彼女から希望したこと。ヒビキに仕えるメイドとしてではなく、この学院の生徒として、そう言い換えられること。


(闘える。生きて、いける)


 得物の重量もものともせず、舞う。


「いざ、尋常に」


 求めたのは、闘いだ。

 心地いい。笑まずそう思った。

 赤い眼光が残線を引き、黒銀の塊がヒビキを砕かんと160度の弧を描いて振り下ろされる。乾いた空気を押し潰しながら、硬さと重さを兼ね備えた一撃が突っ込んでくる。重力を振り切り重力より速い必殺の一撃。ゴーレムをふきとばしてからヒビキの眼前に迫るまで、寸刻たりともロスはない。両手で担いだ暴力装置、敢辿るは最短最速。足掻けるものなら足掻いてみせろ。


「勝負です。ヒビキ様」


 ──この短い攻防で、ヒビキが見せた自らの魔法マギア召還コールの特徴は三つ。

 一つ、魔法陣を詠唱により起動し、口上により存在を呼び出す。初手の青の律動ターロスは、彼女の魔法マギアの基礎を対戦相手であるマギに叩き込むため。戦略であり、印象付であり、誘導である。

 二つ、一度召還した存在は、手順を省略してその場に呼び出すことができる。これには呼び出すもののサイズなど、様々の制限がかかる。マギのナイフに対して、あらかじめ展開した魔法陣からゴーレムの腕を呼び出して防御したのがこれである。

 これはヒビキにとっては見せざるを得なかった特徴であり、一つ目とは違う。召還コールにおいて、条件が整えば工程の省略が可能なことを示唆するものであり、手を隠せるなら隠した方が良い。それは魔法マギアの工程だけではなく、あらゆる点で。

 事実、今からヒビキが繰り出す一手は、

 

「……抜刀」


 "予め構えた状態で呼び出される武器"である。

 三つ。

 呼び出す存在は、無機物に限られる。

 転じて、"無機物であればなんであれ呼び出せる"。

 これを、ここまで隠し通していた。

 「ヒビキが取れる、唯一の近接戦闘手段」を。

 すっと腰を落とし、右手を腰の前に添える。何かを握るように、僅かに手を開いて。あまりにも単純かつ簡潔な所作であり、故にマギでも遅れを取る、取らざるを得ない攻撃準備。

 ここから繰り出されるのは、一瞬と呼ぶには短すぎる、すなわち瞬きの間にすべてを終わらせ、残心まで済ませてしまう一撃。振り抜く動作一つ、抜刀の挙動たった一つで初動、攻撃、必殺をこなす極みの所作。身体強化のエーテルをすべて右手に集約させることによる、音速を超える一撃。追い詰められた時の近接戦闘が不得手であるという己が魔法マギアの弱点を埋めるために編み出した、古来の書物に伝わる文字通りの「必殺技」。

 これだけは、私の方が速い。


「──『居合いあい童子切どうじきり』」


 すらりと伸びた美しい刀身、微かに弧を描く撫斬りがための抜群の切れ味を誇る刃物──「刀」。それを引き抜き払う、振り抜きの動作に全身全霊をかけるのが、「居合斬り」。文字通り目にも止まらぬ速さで、神速の太刀はマギをハンマーごと横薙ぎに斬った。

 巨鎚と真剣、武器同士がぶつかりあい、その場に軽い爆発が起こる。エーテル衝突と呼ばれる現象である。爆発は激しい衝撃波と砂煙を巻き起こし、全身のエーテルを使い切ったヒビキは受け身を取りながらも吹き飛ばされた。

 確かに手応えはあった。それにしても奥の手まで使わせられるとは、少々やりすぎたかもしれない。そう思わないこともなかったが、相手として不足はなかった。そう逡巡しながら、一つの分岐点に思い当たる。


『必要ないかと』


 結局、同じ条件では戦っていないのだ。魔法マギアの行使、すなわちエーテルのコントロールにおいて、マギは制服のサポートを受けていない。身体強化にしても、あのトンチキなメイド服で自分以上の膂力、瞬発力を見せた。つまりはまだ、


「上がいる。そう教えたかったのですよ、ヒビキ様」


 声が聞こえた。後ろから。振り返る前に何故、と思い、何故、と思う前に、

 背中に痛みが走る。エーテルの回っていない身体に、致命的な一撃が刺さる。まだ、土煙が晴れない。見えない。


「がっ……はぁ……っ」


 かろうじて、首だけを回して。


「これにて」


 そう呟いたマギの全身に、狙い澄ました高足蹴りをぶつけてきたその躰に、一糸纏わぬ陶器のような白い肌に、布状の炭素が張り付いていくのを、見た。

 「変換フォーマット」。空気、衣服、彼女が触れた物質中の炭素の結合を操る、マギの魔法マギアである。

 「常に身に纏っている炭素」を操り生身の部分を丸ごと弾き飛ばし、必殺の斬撃をまさに紙一重でかわしていた。動作そのものを見切れずとも動作の「起こり」を察知して起動した、後の先。

 これが、決まり手。

 そうして、ヒビキは意識を失った。最後の分かれ目は、「仕込み服」の有無。故に同じ条件では勝てなかったかもしれない、そう思った。別の事由で同じことを思った、ヒビキの心中は預かり知らず。

 こうも思った。なるほど、これならこのクオンで学ぶこともあるのだろう、と。彼女は目覚めた時からメイドであり、その縁でアルケイデア家に働きかけたに過ぎない。けれどメイドであることともう一つの存在意義が、その手で闘うことだと、マギはそう認識している。

 

「ヒビキ様は、いい相手になりそうです」


 仕える主として、そして対戦相手として。前者を望み後者を得、後者を望み前者を得ていく。ギャラリーの歓声の中心で、自然とヒビキの身体を抱き抱えていた。まあ、今くらいは。初めての闘いで、一つ距離が縮まったと、相手からも学ぶことがあると、きっと互いに思ったから。

 故に、これはお嬢様とメイドの決闘のお話である。

 

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