第2話 制服は着たまま、後ろから
小鳥は上半身を隣のベッドの上に投げ出し、クッションに抱き着くように顔を埋め、こちら側にお尻を向ける。いつもの体勢だ。
そしてもどかしそうに腰を動かし、短いスカートを揺らす。その中身は今、完全に無防備だ。他ならぬ彼女自身が、最後の防壁を排除した。
まるで誘われているかのようだった。事実、
心臓が痛いくらいに暴れ出す。頭に血が上っていくのがわかる。理性が小鳥に侵食される感覚。
拓海はくらくらする意識を悟られぬよう、茶化すように呟く。
「相変わらず、色気のない下着だな」
「っ!? そっち、見ないで……っ」
「
「い、今、そんなこと、いいからっ」
揶揄われた小鳥はクッションから顔を上げ、耳まで真っ赤にしながら睨む。
拓海は悪かったとばかりに軽く両手を上げる。
「ゴムは?」
「いつものとこ。机の引き出し、一番上」
手早く慣れた手つきで避妊具を装着した拓海は、小鳥の背後に回り彼女の腰を掴む。
目の前の綺麗な少女を組み敷くような格好に、更に興奮が昂っていく。
また、制服の背中超しだというのに、小鳥のスタイルの良さがよくわかる。
かすかに汗ばんでいるのか、甘い香りが鼻腔をくすぐった。強く異性を感じさせる、小鳥の匂いだ。それが拓海の本能を痛いくらいに刺激していく。
いつになっても慣れそうにない。
美人は三日で飽きるというのは、絶対嘘だ。
拓海はどこか切羽詰まったような声で呟いた。
「いくぞ」
「ん」
◇
小鳥の部屋にくぐもった声と荒い息遣い、肌を打ち付ける規則的な乾いた音が響く。
二人がしているのはセックス。えっち。性行為。深い仲の男女間で行われる営み。
とはいえ睦み合うというには、あまりに機械的で単調だった。
この
する時はいつも、小鳥が裸と顔を見られたくないからと、服は着たまま後ろから。
ただ、出すものを出すためだけの
だけど、あまりに魅惑的過ぎる情交。
ともすれば現に小鳥から拓海は与えられる快楽に溺れそうになり、拓海は暴走すまいと必死に険しい表情を作っている。
世間一般の倫理的に、歪なことをしているのは百も承知。
色々言い訳を重ねたところで、なんだかんだこの儀式に付き合っているのは、気持ちいいから。快楽に負けているだけ。やめられない。まったくもって、自分は最低だ。
今日だってスマホでこのルーティン要請の合図である伸び猫のスタンプを見た時、期待してなかったといえば嘘になる。
やがて表面的には義務のように装い、ルーティンを終えた。
頭の中に甘い痺れが残る中、余韻を楽しむ間もなく無言で小鳥から離れ、事後処理をし始める拓海。
小鳥も身を起こし、乱れた着衣を整え始める。
「……」
「……」
何とも気恥ずかしい空気が流れている。
実際、恥ずかしい行為をしていたのだから当然か。
少しの名残惜しさから小鳥を見やれば、彼女の頬は上気し肌も少し汗ばんでおり、やけに色っぽい。
再び血の巡りがよくなりそうになった拓海は、慌てて顔を逸らす。
これはあくまで小鳥にとって必要なルーティン。
ただ性欲に流されてするものではない。
自分はただの協力者。
そもそも別に恋人同士じゃないのだから、当たり前といえば当たり前だ。
ふぅ、と自嘲の息を零す。
すると、小鳥がおずおずと囁いた。
「……今日も、ありがと。これで、フタバ行ける」
「どういたしまして」
「それから、えっと、拓海、気持ちよかった?」
バカ正直に答えるのもなんだか癪で、代わりに視線である場所へと促す。
「……見ての通り」
「ホントだ。たくさん、出たね」
自分に興奮した物的証拠を見て、目尻を下げる小鳥。
実際、今日も呆れるくらいの量が出た。それだけの魅力が小鳥にあった。
それを見られて頬が熱くなりそうだった拓海は、興味なさそうに鼻を鳴らし、強引に話題を挿げ替える。
「ったく、なんでこんなルーティンが必要なんだか」
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