叙事詩:アスファルコと再創生の輪廻
ポチョムキン卿
宇宙叙事詩:アスコファルトと再創生の物語
「おい、マジかよ、ストロング博士!本当に成功したのか!?」
21世紀後半、世界中のニュースチャンネルは、ある一つの映像で埋め尽くされていた。画面に映し出されたのは、白衣を着た老練な科学者、ストロング博士と、彼の背後に輝く謎の装置。そして、その装置に“捕獲”されたと報じられる、半透明で淡く発光する微細な粒子…いや、それは粒子というより、エネルギーの塊、いや、もっと根本的な何かだった。
「ふぉっふぉっふぉ。見ての通りじゃよ、ウィリアム。ついに、ついに人類はアスコファルトを捕らえたのだ!」ストロング博士は興奮冷めやらぬ様子で、眼鏡の奥の瞳をキラキラさせていた。
隣にいた若い研究員、ウィリアムが興奮した声を上げた。「アスコファルト…万有引力そのもの…!これで、僕たちは重力から解放されるってことですか!?」
「うむ!正確には、重力を操れるようになった、と言った方がいいじゃろうな。これまでは、ロケットを打ち上げるにも、地球のアスコファルト…つまり、地球の万有引力から逃れるために、莫大な燃料と時間を費やしてきた。それがどうだ?アスコファルトを分離し、制御できるようになった今、宇宙は我々の庭となるのだ!まさに、**アスコファルトが効く!**ってな!」
ストロング博士のオヤジギャグに、ウィリアムは苦笑いを浮かべながらも、その言葉の持つ意味の大きさに震えた。世界中でこのニュースは瞬く間に広がり、「アスコファルト」という聞き慣れない物質の名が、人々の口の端に上るようになった。現象としては古くから知られている。リンゴが木から落ちる。地球上のあらゆる物が地面に縛り付けられている。これら全てが、「アスコファルト」という未解明の現象物質によって引き起こされていたのだ。
かつてニュートンがリンゴが落ちる現象から万有引力の存在を発見したが、その万有引力こそが「アスコファルト」だった。それは常に、より強力な物質に引き寄せられる。小さな物質にアスコファルトがないわけではないが、その効力は物質に応じた量子化ではなく、ただ大きなアスコファルトに引き寄せられるだけなのだという。
アスコファルトの分離成功は、人類の歴史に新たなページを開いた。宇宙への旅は、もはや億劫なものではなくなった。ひょいと宇宙へ、どこへでも行ける時代が到来したのだ。
22世紀の飛躍と「アスコファルト」建築
22世紀。アスコファルトのコントロール技術は、文明と文化を驚異的に発展させた。建物は月まで届く高さにすることさえ可能となり、実際に地球から月まで行ける「月エレベーター」が完成寸前であった。その光景は、まるでSF映画の世界が現実になったかのようだった。
「いやあ、しかし、月まで届くエレベーターとはねえ。昔のSF作家が見たら、きっと月光仮面もビックリだよな!」と、アスコファルト工学の権威、タナカ博士が隣のヤマダ博士に話しかけた。
ヤマダ博士は苦笑いしながら答える。「しかし、ストロング博士は頑なに、自分が一番最初にこの月エレベーターに乗ると言い張ってねえ。まあ、それも致し方ないか。彼がいなければ、この技術はここまで来なかっただろうからね。」
そして、その歴史的な瞬間が訪れた。
ストロング博士が、満を持して最初の月エレベーターに乗り込んだ。
「さてと、いよいよ月へ行く月日だな!ふぉっふぉっふぉ!」
ちょっと待てよ、月まで届くそのエレベーターを作った人間は、とっくに月まで行ったり来たりしていたんじゃないのかなんて話はおいておこう。これは、そんな野暮なツッコミは無粋というものだ。
博士は、地球と月を結ぶ巨大な光の柱、もとい、アスコファルトによって制御されたエレベーターカプセルの中で、静かに発射の合図を待っていた。カウントダウンが始まり、ゼロになった瞬間、カプセルは音もなく上昇を開始した。地球の青い海と白い雲が、みるみるうちに小さくなっていく。窓の外には、満月が大きく、そしてはっきりと見えてきた。
「…素晴らしい。何と美しい景色じゃろうか…」ストロング博士は、感動に打ち震えながらつぶやいた。長年の夢が、今、叶おうとしていた。
そして、月が目の前に迫り、エレベーターカプセルが月面に設置されたターミナルへとドッキングした瞬間、それは起こった。
宇宙の悲鳴と暗黒の収縮
ストロング博士が月に到達した瞬間、それまで地球上で使われてきた「アスコファルト」の総量が、宇宙の均衡を破壊し始めたのだ。
地球のアスコファルトの総量が急激に減少したことにより、宇宙のどこかに偏りが生じた。それはまるで、巨大な天秤の片側が急に軽くなったかのように、宇宙全体のバランスを崩した。
最初は、地球の軌道がわずかにずれ始めた。しかし、それは瞬く間に加速し、太陽系全体に影響を及ぼした。惑星たちは、まるで糸の切れた凧のように、それぞれの軌道を離れて暴走を始めた。
「な、なんだこれは…!?」
地球上では、地震が頻発し、津波が押し寄せ、都市は一瞬にして瓦礫と化した。太陽は異常な活動を見せ、フレアが吹き荒れ、地球に甚大な影響を与えた。
「これは…アスコファルトの総量の変動が、宇宙の歪みを引き起こしているのか…!?」ストロング博士は、月面のターミナルから、滅びゆく故郷の惑星を呆然と見つめていた。
太陽系はやがて、銀河宇宙の均衡までも破壊し始めた。無数の星々が互いの引力から解放され、宇宙の法則が崩壊していく。その影響は、やがて膨張しきった宇宙の果てまでも達した。
「ああ…なんてことだ…!これでは、宇宙が…アスコパニック状態じゃないか…!」
ストロング博士の言葉は、誰にも届くことなく、虚空に消えていった。上限のない熱エントロピーによって、宇宙は消滅していった。星々は燃え尽き、ガスは拡散し、やがて何もかもがバラバラになり、宇宙の「内部」はすべてが消滅した。
光も熱も存在しない、完全な暗黒の世界。
しかし、そこで終わりではなかった。
内部がすべて消滅した暗黒の宇宙は、やがて収縮を始めた。それはまるで、巨大な風船がゆっくりと空気を吐き出し萎むかのように、空間そのものが一点へと引き寄せられていく。暗黒物質が収縮し、宇宙のすべての質量とエネルギーが、一つの極小の点、特異点へと凝縮されていった。
無限の密度と無限の温度を持つ、宇宙の始まりのその一点。
その特異点のただ中に、何らかの「意思」が存在した。それは、何億光年もの時間を超え、宇宙の滅亡と再生を見届けてきた、古き存在なのかもしれない。
その「意思」が、静かに、そして力強く、つぶやいた。
「光あれ」
再生と新たな宇宙
途方もない静寂のあと、宇宙の特異点から、まばゆい光が放たれた。
ビッグバン。
それは、宇宙の再生の瞬間だった。想像を絶する爆発によって、新たな宇宙が誕生したのだ。
最初は、微細な素粒子が飛び交う灼熱の混沌だった。しかし、時間が経つにつれて、それらの素粒子は互いに結合し、原子を形成し始めた。水素、ヘリウム…そして、星々の材料となる重い元素が生成されていく。
やがて、ガスと塵が重力…いや、アスコファルトの引力によって集まり、星が生まれた。無数の星々が、銀河を形成し、その銀河が集まって銀河団を形成する。
宇宙は再び、その壮大な物語を紡ぎ始めたのだ。
この新しい宇宙では、アスコファルトの総量は、絶妙なバランスで保たれていた。それは、過去の宇宙の過ちを繰り返さないかのように、アスコファルトの配慮とでも言うべき、宇宙の摂理が働いているかのようだった。
遠い未来、この新しい宇宙に、再び知的生命体が誕生するだろう。彼らは、星々を眺め、宇宙の謎を解き明かそうと試みるだろう。もしかしたら、彼らもまた、アスコファルトの存在に気づき、それを制御しようと試みるかもしれない。
しかし、彼らは知っているだろうか。かつて、ストロング博士という一人の科学者の夢が、宇宙の終焉と再生を引き起こしたことを。
そして、宇宙は今日も、果てしなく広がり続けている。その広大な闇の中に、無数の星々が瞬き、生命の物語が、脈々と受け継がれていく。アスコファルトの引力によって引き寄せられ、アスコファルトの力によって支えられながら。
これは、アスコファルトと宇宙の、終わりのない再生の物語かもしれない叙事詩なのだ。
◇以下筆者談◇
AIがアスファルトを「アスコファルト」間違えて出力したことと、とあるSNSで「重力って何ですか」っていう質問に、誰かが「そういうものです」って答えてまさしくその通りだなと思い、「重力」と「アスコファルト」の二つを組み合わせ、AIと共に作文しました😋
叙事詩:アスファルコと再創生の輪廻 ポチョムキン卿 @shizukichi
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