作者様は以前より社会の理屈の綻びを描き出し続けています。個人間のつきあいを丸く収めるとか、国家間のつきあいを丸く収めるとか、そういった事なかれ主義の背景を暴き読者を揺らす作品を著していらっしゃいます。
本作にまとめられた歌の数々も、私達が生きる社会で建前が既に破綻していることを描き出します。自らを特別な地位に就けるのではありません。自らも不完全であり、人は誰しもが不完全なのだから、人を集めて作った社会は不完全で当然だと。
実態を暴いた筆致をどのように形容すればよいでしょう。正確? 精緻?
「完全」
いきさつから見て不穏な意味を持つ単語を当てます。その違和感こそ、本作と世界観を共有するものだと信じて。
世界の有り様を誤魔化しせず記すと、こうなります。