国家滅亡3日前!?ゲーム序盤で王都を襲撃する魔王に殺される噛ませ貴族に転生した俺、死にたくないので魔王討伐RTAをしたいと思います
ジェネビーバー
第1話 あと3日後に死ぬ貴族キャラに転生した
「あと3日後に死んでしまうっ!!」
俺は鏡に映る自身の姿を見ながら絶叫をあげた。
さて、いきなり死ぬだの物騒な話をする前に自己紹介からいくとしようか。
俺の名前は
昨晩は3徹を乗り越えて久々に我が家こと壁の薄いボロアパートへと帰宅。
疲労も限界だったので、布団も敷かず、そのまま玄関に倒れ込むように眠りについた。
……が、今朝、目が覚めると何故か硬い床ではなく、ふかふかなベッドの上で起床をしたのだ。
というより、ベッドどころかボロアパートでさえなかった。
まるで中世風貴族の寝室といったアホほど広い部屋に居たのだ。
「あはは……よもや異世界転生?」
などと、乾いた笑いを漏らしながら、ベタにも頬をつねってみる。
痛みがある。夢ではない。
そう感じながらベッドから出て、部屋にあった鏡で全身を映してみる。
眼前に映るのは気品ある貴族的な雰囲気を纏う黒紫髪ショートカットの10代ほどの青年。
「これ、俺か?」
などと呟きながら頬をペチペチと叩くと、鏡に映る黒紫髪の青年も同じ動きをする。
眼前に映るのは疲れ切った顔つきのサラリーマンではない。
「つまり、貴族に異世界転生かっ!!」
と、確信した俺はガッツポーズを掲げる。
これで地獄のような労働から開放されるぞ。
しかも、部屋の大きさや見た目などから転生先は上級な身分の人っぽい。
人外、過酷環境なんかの異世界と比べりゃSSRな大当たりである。
俺はすぐに状況を理解し、嬉しさに頬を緩ませてると、部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。
「アルフレド様、入りますよぉ〜」
と、緩すぎる声と共に現れたのは、眠たげで気怠気な空気を纏う金髪ツーサイドアップのメイドさん。
着用するメイド服は黒を基調とし、ミニスカ、ガーターベルト、ハイニーソと王道な癖を詰め込んだような格好である。
……随分と現代感溢れる衣服だけど、どういった世界観だ?
というより、このメイドさん、何処かで見たような?
「ご主人様、なんでウチを見つめてるんすか?」
そんな俺の視線に対して、メイドさんはジト目で睨み返してくる。
この主に対して忠誠心の欠片もない感じ……まさかっ!?
「すまんっ、君の名前って“シーラ”か?」
「なんすか、突然? 可愛い可愛い側付きメイドのシーラちゃんをお忘れなんすか」
「徐々に思い出し中だ。ちなみに俺の名前は?」
「ああ、そういう記憶喪失プレイなんっすね〜。ご主人の名前は“アルフレド・イーデン”っすよ」
その『アルフレド』という名前を聞き、俺の中で悪寒が走る。
やっぱり、あのゲームの登場キャラだよな?
そうなると、例の破滅イベントはいつだ?
今は何日だ?
「シーラ、
「本当に何なんっすか? 3日後っすよ」
3日後……?
その単語を聞き、俺は改めて鏡に映る自分の姿を見つめる。
薄黒紫の髪。
鋭い目つき。
貴族風な雰囲気。
この絶妙に準主要キャラ風なキャラデザ。
思い出したぞ。
コイツ、『ユグドラシルクエスト4』に出てくるアルフレド・イーデンだっ!!
俺の転生先、アルフレドなのかよ?
しかも王国祭は3日後。
それって、つまり……
「あと3日後に死んでしまうっ!!」
俺は鏡に映る自身の姿を見ながら絶叫をあげた。
さて、俺の転生先であるアルフレド。こいつは『ユグドラシルクエスト4』というゲームに出てくる人物だ。
ユグドラシルクエストとは転生前の世界……つまりは日本で発売されている人気ゲームシリーズである。
新作が出れば確実に100万本以上売れるので、その人気具合は語るまでもないだろう。
そんな国民的ゲーム『ユグドラシルクエスト』は勇者が魔王を討伐する剣と魔法の王道ファンタジーRPGである。
……なのだが、この俺の転生先である『ユグドラシルクエスト4』、つまりシリーズ4作目は、かなり異質な内容となっている。
なんと、物語の最序盤で魔王が主人公を殺しに来るのだ。
今までのシリーズは勇者が平穏な村から旅立ち、成長し、最後に魔王を倒すという流れを組んでいた。
それが4作品目にして、魔王が未熟な勇者の住む王都を襲撃し、成長する前に殺そうとするのだ。
とはいえ、勇者は物語の主人公。結果として、勇者は生き延び、魔王の計画は失敗に終わる。
生き延びた勇者の少年は、故郷を滅ぼした魔王に復讐を誓うという物語である。
この過去作と異なる展開に当時のゲームユーザーは衝撃を感じたに違いない。
ん? 主人公である勇者が生き残るなら問題ないじゃない?
OK、本題はここからである。
まず、俺の転生先であるアルフレドは
つまり、NOT主人公である。王都が襲撃され、魔王に無惨にもぶっ殺されるキャラの1人である。
このアルフレドという男、どのようなキャラかといえば、端的に言えば噛ませキャラだ。
彼の出番は王国祭当日。立食パーティの最中、魔王軍が攻めてくる。
そして、会場に現れる魔王と偶然にも相対するのがアルフレドなのである。
そのアルフレドは魔王を前にしながらも、怯えずに剣を抜き、言い放つのだ。
「魔王がなんだ!? 剣の錆にしてくれる!!」
と、シナリオライターが5秒で考えたようなイキりセリフを吐くわけだが、その数秒後には魔王の攻撃により殺される。体が真っ二つにされ、お見事と言えるほどの噛ませっぷりを披露してくれるわけだ。
以上、アルフレドの出番は終了である。
彼は物語の繋ぎ程度の噛ませキャラでしかないのだ。
まあ、魔王とアルフレドがやり取りをしたおかげで、勇者が逃げる時間を稼げているわけで。多少は役に立っていると思いたい。
とりあえず、色々と説明したが、結論として、俺はゲーム序盤で魔王に殺される噛ませキャラへ転生してしまったわけだ。
「(王国祭は3日後。つまり、このままだと俺は3日後に死ぬ!!)」
くそっ!! これだったら社畜をしていた方が幸せだったかもしれん。
「いっそのこと王都から逃げるか?」
そもそも、魔王の居る現場に居合わせなければ良いのだ。
3日間もあれば魔王軍の被害に遭わない地域へ避難するのも可能だ。
「いや、駄目だ……それだと勇者が死んでしまう」
もし、俺が会場に居なければ、逃げ出す時間が消えた勇者は魔王に見つかり殺されるだろう。
それはつまり、将来的に魔王を滅ぼす主人公が消失するわけなのだ。
俺が王都から逃げ出し、生き延びたとしても、世界は結局のところ滅んでしまうのである。
なにより、王都が崩壊すれば沢山の国民が死ぬ。
未来を知っているのなら少しでも抵抗すべきだ。
「だとしたら、俺が魔王を討伐するしかない!!」
どうせ死ぬのなら、少しでも抗って死ぬ方がマシだ。
魔王軍が襲来するまであと3日。
その間までに準備を整え、魔王を迎え撃つ。
物語の展開を知っている俺ならば対策は出来るはずだ。
「よしっ、魔王討伐をやってやるぞ!!」
そう高々と宣言し、握り拳を掲げると、先程から黙っていたメイドのシーラが興味無さげに口を開く。
「はぇ〜、魔王討伐とは大きい夢っすね〜。頑張ってくたさい。ウチは仕事に戻るんで」
と、その場を去ろうとする。
すかさず俺はシーラの両肩を掴む。
「何を言ってる? シーラも手伝うんだよ」
「へ?」
そもそも何故、俺は自身の転生先がアルフレドと気付けたのか。それこそゲーム序盤で死ぬ地味な端役のはずなのに。
それは、メイドのシーラを見たからだ。
金髪ツーサイドアップのメイドさんという要素もりもりなキャラを忘れるはずがない。
なにせ、彼女は『ユグドラシルクエスト4』の勇者パーティの1人だからだ。
仕える主人と弟妹を失ったメイドという設定で、ゲームでは主人公と冒険を共にするキャラクター。忘れるはずがない。
そして、彼女は設定上、暗器の扱いに長けた
ただでさえ無茶な魔王討伐を目標にしているのだ。仲間は多い方が良いに決まってる。
「シーラ、俺と共に魔王を討伐しよう!!」
「このプレイ、いつまで続くんすかっ!?」
こうして、噛ませ貴族+未来の勇者パーティのメイドさんによる、3日間の魔王討伐RTAが始まるのであった。
――――――――――――――――
【あとがき】
少しでも「面白そう!」「期待できる!」そう思っていただけましたら星評価を入れていただけますと励みになります。
皆さまからの応援がモチベーションとなります
よろしくお願い致します
――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます