パート54: 最後の審判

 数分後。

 広大なフィールドに立っているのは、ガイウスただ一人となっていた。

 彼の仲間たちは、全員が地に伏し、戦闘不能となっている。

 彼は、信じられないという顔で、その光景をただ呆然と見つめていた。


「……なぜだ。なぜ、俺が……こんな、寄せ集めに……」


 彼のプライドが、現実の受け入れを拒絶している。

 僕は、そんな哀れな兄に、最後の審判を下すことにした。


「リナ」


「はい、マスター」


「君を陥れた、あの男に、君自身の手でとどめを刺せ。手加減はするな。君の怒りと、仲間への感謝、その全てを、あの一撃に込めろ」


「……はい!」


 リナの瞳に、決意の光が宿る。

 彼女は右手を天に掲げ、魔力の詠唱を開始した。

 それは、これまで見せたことのない、大規模な殲滅魔法。

 スタジアム全体の空気が震え、彼女の周りに、純白の魔力が渦を巻いていく。


「させるかぁっ!」


 ガイウスも、なけなしのプライドを振り絞り、最後の抵抗を試みる。

 彼もまた、エルフィールド家の嫡男。その魔力は、決して低くはない。

 彼の前に、エルフィールド家相伝の、黄金の防御障壁が展開される。


 だが、リナの魔法は、その上を行っていた。


「これが、私の、私たちの、全力ですっ! 『聖氷天罰(ジャッジメント・ブリザード)』!!」


 リナが叫ぶと、天から、無数の光り輝く氷の槍が降り注いだ。

 それは、まるで神の裁き。

 黄金の防御障壁は、降り注ぐ氷の槍の前に、ガラスのようにあっけなく砕け散る。


「ば、かな……」


 ガイウスの最後の言葉は、轟音にかき消された。

 彼は、防御を貫通した氷の槍の衝撃に、木の葉のように派手に吹き飛ばされ、フィールドの壁に叩きつけられた。

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