パート38: ショーの開幕

「――そこをどいてください、兄さん」


 僕は、消耗しきったガイウスたちの前に進み出た。


「あなたたちの出番は、もう終わりです。ここからは、僕たちのショーの時間ですから」


「な、なんだと……?」


 ガイウスが呆然とするのを尻目に、僕は僕のチームに号令をかける。


「行くぞ! プラン通りだ!」


「「「はい、マスター!」」」


 僕の言葉を合図に、三人が一斉に動いた。

 まず、トロルが僕たちに気づき、巨大な棍棒を振り下ろしてくる。

 それを、セレスティアが前に出て、盾で受け止めた。


「させませんわ!」


 だが、ただ受け止めるのではない。

 盾の角度を絶妙に調整し、棍棒の威力を斜め下へと受け流す。

 ドンッ!と地面が揺れ、トロルは前のめりに体勢を崩した。


「今だ、フェンリル!」

「おうよ!」


 その隙を、フェンリルが見逃さない。

 獣のような俊敏さでトロルの背後へと回り込み、その太い足に鋭い爪で切りつけた。

 ダメージはほとんどない。だが、それでいい。

 目的は、注意を引くことだからだ。


「グルアアアッ!」


 背後を攻撃され、怒ったトロルがフェンリルの方へと向き直る。

 その瞬間、トロルの右腕が、がら空きになった。

 僕が、そしてリナが、待ち望んでいた、一瞬の好機。


「――リナッ!!」


 僕の絶叫にも似た指示が、洞窟に響き渡った。

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