パート36: プロデューサーの指揮
ガイウスたちが去った後、僕たちはダンジョンの奥へと進み始めた。
先ほどまでのギクシャクした雰囲気は消え、三人の間には適度な緊張感が漂っている。
「いいか、ここからは最終リハーサルだ。僕の指示から0.5秒以内に反応しろ」
「「「はい、マスター!」」」
僕の言葉に、三人は力強く頷いた。
その瞳には、もう迷いはない。
道中、ガイウスたちが戦闘を避けたのか、あるいは倒し損ねたのか、数体のモンスターが残っていた。
最初の敵は、俊敏な動きが特徴のサーベルタイガー。
「セレスティア、正面に壁! フェンリル、右から回り込め! リナ、左斜め45度から氷の矢を三連射!」
僕の指示が飛ぶのとほぼ同時に、三人が動く。
セレスティアの盾がサーベルタイガーの突進を阻み、その隙にフェンリルが側面から奇襲をかけて体勢を崩す。そして、がら空きになった胴体に、リナの氷の矢が寸分の狂いもなく突き刺さった。
一連の流れは、わずか数秒。
「す、すごい……!」
「今の、わたくしたちが……?」
「マスターの言う通りに動いたら、なんか勝てたぜ!」
自分たちの完璧な連携に、ヒロインたち自身が一番驚いていた。
そう、彼女たちはまだ知らない。
僕という「頭脳」を通して動く時、彼女たちの力は足し算ではなく、掛け算となって爆発的に増大するのだ。
僕たちはその後も、僕の指揮の下でモンスターを次々と瞬殺していく。
三人の動きは、まるで一つの生き物のように洗練されていった。
彼女たちの顔には、自信と、そして僕への絶対的な信頼が満ち溢れている。
(よし、ウォーミングアップは十分だ)
僕たちは、ダンジョンの最奥、ボス部屋の扉の前にたどり着いた。
扉の向こうからは、激しい戦闘音と、兄の焦ったような怒声が聞こえてくる。
ショーの舞台は、整ったようだ。
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