パート28: 不協和音とチームワーク

 最強の「矛」「盾」「剣」が揃った僕のチーム。

 理論上は無敵のはずだったが、現実はそう甘くはなかった。


「きゃっ!?」

「てめっ、フェンリル! わたくしの盾に突撃するんじゃありません!」

「うっせーな! お前が邪魔なとこに壁出すからだろ!」


 秘密の温室を改造した訓練場で、今日も今日とて悲鳴と怒号が響き渡る。

 連携訓練を開始して数週間。

 僕のチームは、お世辞にもチームワークが良いとは言えない状態だった。


 リナの魔法は強力すぎるがゆえに、突撃役のフェンリルを巻き込みそうになる。

 フェンリルの動きは野性的で予測不能なため、セレスティアの盾が的確な援護ができない。

 そして、セレスティアとフェンリルの相性は、水と油。顔を合わせれば喧嘩ばかりだ。


「ま、マスター……。どうしましょう……」


 リナがオロオロと僕に助けを求めてくる。

 彼女が二人の仲裁役をかってでているのだが、気弱な彼女では全く役に立っていない。


(まあ、こうなることは予想していたが……)


 個性が強いということは、それだけぶつかりやすいということだ。

 このまま戦闘訓練だけを続けても、本当の意味でのチームワークは生まれないだろう。

 必要なのは、共通の目標に向かって協力する、戦闘以外の体験だ。


「よし、今日の訓練は中止だ」


 僕がそう言うと、三人はきょとんとした顔で僕を見た。


「君たちには、新しい課題を与える。来たる学園祭で、模擬店を出店してもらう」


「「「も、模擬店!?」」」


 三人の声が、綺麗にハモった。

 セレスティアは「なぜわたくしがそのような庶民の催しに……」と眉をひそめ、フェンリルは「もしろそうだな! 祭りか!」と目を輝かせ、リナはただただ戸惑っている。


「これも、君たちのチームワークを高めるための、重要な訓練の一環だ」


 僕がそう付け加えると、セレスティアも渋々ながら納得したようだった。


「ちなみに、メニューはクレープだ。異論は認めない」


 僕の鶴の一声で、僕たちの初めての共同作業が、こうして半ば強制的に決定したのだった。

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