二章 たどる運命

第42話 叡智なる攻防。負けるな、勇者ハルヤ!

 ~前回までのあらすじ~

 死に戻った俺は腰をヘコヘコするだけのハーレム生活を目指すも、元仲間たちに出会ってしまう。なんやかんやしているうちに、なんやかんや改めて仲間になりたいと思うようになった。


 あとオナ〇ーのやりすぎで、冒険宿の女将さんから退去を命じられてしまう。


 冒険宿の自室。


 俺たちは神妙な面持ちで大きなテーブルで顔を合わせていた。

 俺の隣にはフィリオ、正面にはリリィとココノが座っている。テーブルには交易都市グランニュールの冒険ギルド発行誌と、さまざまな情報誌が広げられていた。


「うーむ……よさげな冒険宿はどこもいっぱいみたいだな」


 俺は情報誌を見ながらそう言った。


 魔王クロノヴァが倒れて、冒険と開拓の時代がやってきた。

 高位魔性が暗躍しているのもあってか、冒険者がなにくそと奮起して界隈はにぎわっている。


 交易都市グランニュールは交通網の中継地だ。そりゃあ人気にもなろう。


「女将様のご厚意でしばらく滞在できますが、良客は逃がしたくないでしょう。あまり時間はないでしょうね」


 リリィは淡々と言った。原因は俺たちのオナ〇ーでよく淡々といられるな。

 ちなみにオ〇ニーをやめたらいいという選択は、俺たちの中にはもうない。


 と、フィリオが褒めて褒めてと言いたげに、情報誌を広げた。


「へへー、見てよ! すっごく良い冒険宿を見つけたよ! 大河沿いで眺めがよくて市場とも離れていない。下見したけど、静かでいい場所だよ!」

「フィリオ……」「フィリオ様……」「フィリオさん……?」

「あ、あれー、変な空気? ボク、おかしいこと言ったかな?」


 フィリオは首をかしげたが、彼女が薦めた冒険宿は一等地にあった。

 冒険ギルドの長や商団の組合長やらが、護衛の冒険者を引き連れて利用するような場所だ。


「俺たちの稼ぎが宿代にほとんど持っていかれるって」


 フィリオは今気づいたような顔をした。

 やんごとなき血筋だからな、金銭感覚が多少ズレているのだと思う。


 じゃあ彼女一人に負担してもらうかって話は、今後を考えればダメだ。

 払えるところは自分で払わねば、遺恨をのこすパーティー間トラブルにつながる可能性もある。金銭トラブルは多いからな、冒険界隈。


「俺おススメの冒険宿があってよ。ちょっと通りからは離れるが……」

「却下でございます」

「まだ言ってないんだが⁉ お安いぞ!」

「裏通りあたりでございましょう」


 とがめるような声に、俺は目をそらす。図星だった。


 裏通りには色町がある。

 エッチなお店がたくさんあり、治安もそれなりに悪いため、宿は安いし空いている。冒険がてらグへへしたいときは便利ではある。


 俺がなんとか薦めようとしたが、リリィはココノに話をふる。


「ココノ様はどう思われますか?」

「うちはみんなとならどこでも楽しいよー」


 ココノはほにゃーと笑う。本当に楽しそうな笑みだ。

 う、うぐうううう……。ココノにふるのは卑怯だろ!


「……別の場所を探そう」

「そのほうがよいでございましょう。いざとなれば町の大女神教会を利用しましょう」

「「「……」」」

「最後の選択肢でございますよ」


 リリィは微妙な空気を感じ取ったのか、訂正するように言った。


 大女神教会。人類貢献度ははかりしれない教派なんだが、テラ信者として濃ゆい人が多いんだよな……。人類に仇名す組織ではないのはたしかだが。


 しかし冒険宿がこうもいっぱいだとはな……。


 普通の宿は値がはるし、町の賃貸も一律あがっているようだ。

 基本は冒険にでているし、宿泊料は安くおさえたい。武具や冒険道具の整備、術の訓練もできるスペースがある物件を買うのは、けっこー金がかかるか。維持費も大変だろうし。


 みんなして考えこんだのを見計らったかのように、リリィが提案してきた。


「ギルドハウスを利用いたしましょうか」


 ココノが興味深そうにたずねる。


「ギルドハウスー?」

「冒険ギルドで実績を積むと、ギルドからさまざまなサポートが受けられるのですが、その一つに専用ギルドハウスがございます」

「おおー、便利そー」

「維持費は必要になりますが、クエスト報酬から格安でさしひかれます。場所によっては訓練施設や魔術工房までついていて、防音も施されているようですね。たしか、白金位冒険者からサポート対象になりますが」


 リリィが視線をやると、フィリオが爽やかに笑った。


「うん、ボクは白金位だから借りられると思うよ」

「フィリオ様に話はなかったのでございますか?」

「グランニュールを拠点にするつもりはなかったからね。忘れていた」


 いかにも自然な会話な流れと思われよう。


 だが俺は『やっぱりこの会話がきたな』と思っていた。リリィは妙案ですよねみたいな顔でいるが、そもそもとしてだ。


 女将さんの遠回しの苦情を、リリィが気づかないはずがない。


 フィリオとココノと俺はぬけていたと思う。だが、リリィがそのあたりの機微がわからないはずがない。これ幸いにと、ギルドハウスへ誘導しようとしている節がある。


 ふっ、叡智なる攻防といこうじゃないか。

 なあ! リリィ=アルシアナ!


「反対だな」

「……なぜでございましょう?」


 リリィはわずかに眉をひそめたが、すぐお澄まし顔になった。

 ……感情を操ったな? やはり計画の内か!


「責任と義務が発生するからだ」

「……ギルドハウスを借りるからには冒険ギルドへの貢献が求められますからね。ハルヤ様がお気に召さないのはわかります」

「俺たちに釣りあってないと思うぞ」

「……というと?」

「この中で白金位はフィリオのみ、たしかに実力はあっても俺たちはまだまだ駆け出しパーティーだ。冒険界隈がにぎわっている今、ギルドハウスは必要とされるだろう。もっと力を持った実績のあるパーティーが借りるべきだ、それが世界のために繋がることもある」


 俺は素直に語りつつも、顔も知らない他冒険者を立てた。


 フィリオも、俺の話に一理あるかもと考えたような顔だ。ココノは俺たちの話を聞いているだけでも幸せそうだ。


 リリィだけが不満そうな顔でいた。


「……そうでございますね」


 ふはは! 冒険者パーティー本格始動で、俺を目立たせようと考えたか?

 あるいはギルドハウスというさらに限定的な空間で篭絡する気か?


 させぬわ! 俺の名は元勇者ハルヤ=アーデン‼

 お前たちの純潔を無責任に奪うものだ!

 ふははは! あと目立って女神フローラ様にはマジで会いたくないんです。ふはははははははは!


「ハルヤ様、考えなおしてくださいませんか?」


 ふにっと、やわらかい圧迫感を股間で感じる。


 リリィがテーブルの下から足を伸ばして、いつのまにか靴をぬいでいて、ふにふにと甘い刺激を股間の一部分に与えてきたのだ。


「お、おふぅ」

「ハルヤ様どうされましたか?」


 どうされたかじゃね―よ⁉

 真顔でドスケベなことしつつ、シモで優位に立とうとするんじゃねぇ‼


「か、考えなおすもなにも……」

「ギルドハウスに住めば……できることも増えると思うのです」


 リリィは意図たっぷりに微笑む。

 できることがこれ以上ありますよ、だろう。


 う、うおおおおおお……適度な刺激が……すでにカチカチなのに全然痛くない……。リリィのお澄まし顔で股間の一部分をふにふにされるの……き、気持ちよすぎる……。


 はっ⁉ ま、負けるな! 

 こんな姑息な手段で負けてたまるかよ! 俺は元勇者だぞ!


「べ、別に増やさなくても……いいんじゃないでしょうか……はい……」

「本当にそう思っておりますか?」


 リリィは器用に足をうごかして、つま先で甘い刺激を送ってくる。


 ふおおお⁉ 今すぐ増やしたーーーいん‼

 今すぐ股を閉じるなりして、はねのければいい? それができれば俺は童貞をしていないのだ‼


「どうしたの? ハルヤ君」


 フィリオが俺を心配したように顔をのぞきこむ。


 ブラウスのボタンが一つ外れていて、前に姿勢をかたむけているから柔い白肌と下着、そして大事な部分がチラチラと見えそうで見かけていた。


「どうされたのでございましょうね? ハルヤ様は」


 リリィとフィリオがお互いに微笑みあう。


 なんだと……? 二人は裏で通じていなかったはずだ。

 まさか俺が足ふみふみーふみふみーされているのを知って、一瞬でドスケベ同盟を組んだのか⁉


「ハルヤ君、本当にどうしたの?」


 フィリオがさらにボタンの一つを外して見せる。

 あっ、あっ、パイパイでパイパイーンが見え見え見え……。


 乳は無暗に見せるものではない、チラリにこそ極意がある。

 フィリオ=ヴァル=エーデルシェイド‼ その境地に至ったのか⁉


「そ、それは、その……」


 俺が童貞をこじらせているあいだに、彼女たちはドスケベちからをあげたのか⁉


 バカなバカなバカな!

 俺はハーレム王になるはずのハルヤ=アーデンぞ⁉


「どうしたのでございましょう……ねー♥」「ねー♥」


 あっさりと負けるな! 叡智な攻防に打ち勝つのだ!


 足ふみふみ、乳ちらちらに、耐えていた俺だったが。

 ココノと目が合ってしまう。彼女はよくわかっていなさそうだが、ドスケベな空気を感じたのか頬を赤らめていた。


 その初心な反応にいささか冷静になる。


 ふふっ……詰めをあやまったな、リリィ! 純真無垢なココノ=ジュカイの存在はときとして俺の味方にもなるのだよ!


「えーっと、えっと……ちゅ?♥」


 ココノは周りの空気に合わせるように、投げキッスを送ってきた。


 うああああああああああああああああああ。

 かわいいいいいいいいいいいいいいいいい。


 エロイことされながら可愛い反応を見るの、いけないことしてる感増しちゃうううううううううう!


 まずいまずいまずい! このままでは本能で口走ってしまう。

 口を閉じねば! はい! 閉じた‼


『ギルドハウスを借りられないか、聞きに行こうか(筆談)』


 俺の右手えええええええええええええ⁉⁉⁉

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