第13話 オルトンの守護者

 「ただの魔術師がガーディアンをやれるわけがないだろう」


 白いガーディアンはそう言うと笑い出した。

 そりゃそうか。対クラス2用だって言ってたもんな。


 「でも来ちゃったしな」

 「まあいいさ。この先に行きたいなら私と勝負しろ。なに、安心しな。私が勝っても命は奪わん」


 結局戦うのね。


 「わかった。全力で来い」


 俺がそう言うと白いガーディアンはとてつもない速度で飛びかかってくる。

 今までの黒いのとは比べものにならない速度に少し反応が遅れてしまい、ガーディアンの爪がローブを掠る。


 「ハハハハッ。掠っただけでも致命傷の私の攻撃を喰らっても無傷とはさすがはガーディアンを倒した者だ。」


 俺は返事はせずに攻撃を放つ。手練れだとは思うが、動きが見えてしまえば1発だ


 (【火槍ファイア・ランス】)

 「あがっ」


 俺の放った【火槍ファイア・ランス】は白いガーディアンに直撃する。相変わらず魔力量に比例して威力を増幅させるものなので、1発でも喰らえば動けなくなる。

 だが、流石はガーディアン。なだけあって立ち上がった。


 「私の負けだ」

 「そうか」


 その言葉のあと、俺は【闇刃ダーク・カッター】を放つ。

 負けを認めたくせに溢れ出る殺気は完全に俺を殺そうというものだった。


 ガーディアンを倒すと後ろの扉が開いた。俺は真っ直ぐ扉に入る。


 扉の奥には巨大な封印結晶があった。

 よく見ると中に龍が眠っているのが見える。


 「これが守護者か」


 思わずそんな声が出てしまった。

 封印結晶をよく見るとかなり精工に作られており、売ったら高く売れそうなレベルである。まあこれぐらいしないと龍レベルになると結晶を破壊されてしまうから当然だろう。


 そんなことを考えていると、誰かに声をかけられた。


 「君は誰だい?」


 戦闘態勢に入って声をした方を振り向くと謎の男がいた。


 「そんなに警戒しなくてもいいじゃないか」

 「音もなく突然入ってきたやつに警戒しないやつがどこにいる」

 「ああそれね。一応言っておくと僕の方が先だよ」


 男の言葉に驚く。男の魔力は俺や龍と比べて圧倒的に少なくガーディアンを倒すことは不可能だと思ったからだ。


 「不思議そうな顔をしてるね」

 「君の魔力であのガーディアンを倒すのは無理だろうからね」

 「ああ。それならあのガーディアンは僕が置いたものだからね」


 ガーディアンを置いたのがこいつならば、この男がここに来れる理由も理解できる。


 「なぜガーディアンを置いた?」

 「簡単なことさ。僕の邪魔をするやつらに近づかれると困るからね」

 「邪魔?」

 「うん。龍を復活させる邪魔ね」


 男はそう言うと龍に向かって魔導具を投げる。

 投げられた魔導具は封印結晶に当たるとたちまち結晶が音を立てて割れ出した。


 「さあ龍の復活だ!君も逃げた方がいいよ。対クラス2のガーディアンを倒せたくらいじゃこの龍に瞬殺されるだけさ」


 男は捨て台詞のようなものを吐いた後、真っ直ぐ俺が来た道を戻り始めた。

 俺は男にめがけて拘束魔法を放つが、男の体を通過して行った。


 「あ、そうだ。僕のこの体は本体じゃないよ。そもそも存在もしていないから魔法も通らない」

 「幻影魔法か」

 「ピンポーン。じゃあさよならー」


 男はそう言うと完全に消失した。


 それとほぼ同時に後ろで破壊音が聞こえた。

 どうやら龍が目覚めたようだ。


 龍は、空腹時と起床時に興奮状態に陥ることがわかっている。興奮状態になると数時間は収まらないうえに、目に見えるものすべてに攻撃しようとするのだ。

 そのため、龍を封印するか殺す必要があるが、通常は一国の軍をすべて引き連れて戦ってもようやく勝てるかと言うレベルなため、甚大な犠牲が出る。


 俺の目の前の龍もまさしく興奮状態に陥っており、周りにあった遺跡の柱を次々と破壊して行っている。


 (【火球ファイアーボール】)


 予想通り龍のヘイトがこちらに向いた。

 このままの調子で柱を壊されると、いつ天井が崩壊して地面に穴が空いてもおかしくはなかったので安心する。


 龍は俺に気がつくと口から大火力のドラゴンブレスを放ってきた。


 「【水壁ウォーター・シールド】!」


 俺の手の先に巨大な水の壁が現れてドラゴンブレスを飲み込む。

 ドラゴンブレスはかき消されたが、それがドラゴンの興奮をさらに高めたようでさらに強力なブレスを何発も放ってきた。


 すかさず俺も【水壁ウォーター・シールド】で応戦するが、あまりにも多すぎるがために何発かは俺の足元に飛んでくる。

 俺は飛行魔法で避けたが、それが良くない判断だったようだ。

 龍は動きにくい空中の俺に向かってブレスではなく爆発魔法を放ってきた。


 「くそ。こりゃ上はすごい地響きだな」


 地響きで何かが起きたと考えて避難してくれるだろうか?

 そんな希望を抱きながら俺は龍との戦闘を再開した。

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