吾輩は、猫であるかもしれない
時貴みさご
第1話「心の中の猫について」
私は、心の中に猫を飼っている。
でも、それはただの妄想ではなく『そう見える』んだ。……と言っても、妄想のように感じられるかもしれない。それは仕方がない。
私の借りている部屋は7畳で、ものが多いせいで、常にごちゃごちゃとしている。そんな7畳の部屋に猫が一匹、あるいはそれ以上、時と場合によって入れ替わり立ち替わりと動いている。
有機的なものなんて、私しかいないはずなのに、猫は自由に私の部屋を動き回っている。
それが『見える』んだ。
何か『病的な事』を連想されたかもしれない。
それは、実は的を得ている。
私はADHDと双極性障害を持っているため、『こんなふう』に世界が見えるんだ。
たまに『自称ADHD』が部屋が汚いのとか、注意散漫であることを声高に『言い訳』しているのを見かけるたびに、怒りよりも羨ましささえ感じる。
本物のADHDは本当に『異常』だ。
台所のシンクをヘドロまみれにしたり、ゴミを出すのを忘れすぎて小蝿がわく。
自分でそれが耐えられなくなる。
だから、精神科に通っているんだ。
まずうつ病から始まり、不眠から一度違う精神科に罹ったことがある。そこで医師が『死にたいのになぜ受診したのか?』という、的を得ているのかそうでもないことを尋ねられた。正直意味が分からない。当時の私は本当に動揺した。死にたいんじゃなくて、消えたいんだ。この世界から一才の余裕もなく1ミリも残さず、誰も傷つけずに去ってしまいたい。
引越しで通う医院が変わり、しばらくしてから医師からADHDであること、双極性障害を告げられた。その時、自分の中で何かが『すとん』と落ちた。
死ぬ価値もない自分が、それによって『救済』される感覚。
何にもできないけど、何かしてもいいという『許可』。私はそういうふうに受け取った。
あなたはそんな人生を歩みたいですか?
仕事で苦しんでいる人、学校で辛い思いをしている人。
それでも、こんな人生を送りたいですか?
毎日飲む薬の量は全部で20錠を超えています。もちろん、副作用もあります。それによって『できないこと』というう制約もついて回ります。
それでも、私と立場を変えたいと思いますか?
変えてもいい、と思った人は精神科へ行ってください。自分に『死ぬ価値』すらないと感じるのなら、多分せそれはもう『疾患』だと思います。
じゃあ、何が幸せなのか?
私は、それが何なのか分かりません。
そんなふうに、毎日『心の中の猫』と生活しています。
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