内に秘めたもどかしさの発露
- ★★★ Excellent!!!
『教室に置かれる花のない日々に発話できないおべんとうばこ』
読んだときの哀愁が素敵です。
教室内の状況について「置かれる花のない日々」と表現されるだけで、ぼんやりと教室内の雰囲気や自分の居場所の無さなどが想起させられる。花が置ける、花の健康を維持できるという植物の生育環境自体が教室や学校内の雰囲気のバロメーターになっているのだろう。
「発話できないおべんとうばこ」お弁当箱は音声を発しませんから、発話ができないのは当たり前だと思いますが、「発話できないおべんとうばこ」を見ると一人でぽつんとしている様が浮かびます。
お弁当箱→お昼休み→コミュニケーションというイメージからの発話できなさ加減が「おべんとうばこ」という字面から感じました。声というモチーフとしての「おべんとうばこ」は他のどの持ち物よりも発話しそうです。
また、飾られるではなく置かれるという点。七への収まりを考慮しないのであれば置かれるという表現にも注目したい。
教室内で花が置かれる状況として最も適切なのは献花なのかと思います。すると、前述した状況とはまた違った情景が浮かぶ。もう会えなくなってしまったクラスメイトへの感情。本当はまだ置いておきたいのに花を置かなくなってしまったことに対する孤独感。それは自分だけが取り残されたように感じる教室の状況を表しているようで。最後のズームアップされた「おべんとうばこ」の姿には何を感じるのだろうか。
どこに自分を置くのかで違った読み方ができるところが魅力的でした。
素晴らしい作品をありがとうございました。