最終話/第4話
ベッドで飛び起きると、全身が熱く感じた。
変な夢だ。私がおかしくなってしまった家族に殺されるというもの。しかも、私の知っている人達じゃない。現実にはあり得ないことだけど、妙にリアルだった。
ベッドと机以外には特にない部屋。少しの間ぼうっとすると、段々と夢が薄れていく。
時計を見ると、針は午前十時を超えている。ゴールデンウィークの最終日だからといって寝過ぎてしまった。
「起きよ……」
ベッドから這い出て、ふらふらとリビングに向かう。
台所からはカレーのいい匂いが漂ってきていた。そのせいで、急激に空腹を感じ、急いで向かう。
お姉ちゃんが調理している中、後ろから抱きつく。
「おはよー、お姉ちゃん」
「理央、おはよう。ずいぶんお寝坊さんじゃない? 明日から大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。身体が勝手に起きてくれるはずだがら」
「なにそれ、全然大丈夫に聞こえないんだけど」
お姉ちゃんは、ちょっとだけ笑って、近くに寄ってきた私の頭を撫でる。
「気を付けなよ?」
「はーい」
見るとカレーはすでに出来上がっており、あとは盛り付けるだけだった。
「……お姉ちゃん、お腹空いた」
「でしょうね。すぐ昼食にするから、手伝って」
「うん」
パパやママは仕事のようだった。今日はお姉ちゃんと二人きり。
二人でカレーを皿に盛り、リビングテーブルに並べて座った。
「いただきます」
「いただきまーす」
お姉ちゃんにならい、手を合わせ、もくもくと食べる。
ふいにお姉ちゃんがテレビを点けた。
――本日未明、一軒家で、
「怖いなあ……」
ぼそっとお姉ちゃんが呟く。
またこの手のニュースか。恐ろしい事件には間違いないのだけど、聞き慣れ過ぎていて、私には蚊帳の外の出来事にしか感じない。
実際には、私自身にも起こる可能性のあることはゼロではないことが分かっていても、どうにも身近に感じない。
怨恨。よく聞く言葉だけど、私とは縁遠い。学校も、家にもそんなこじれた関係になってしまいそうな人物はいない。
特に家族は私を愛してくれているし、私もそうだ。お姉ちゃんだって、とっても優しい。
私の大好きなお姉ちゃん。
だから、今日見た夢やニュースのようなことは決して起こらない。あり得ないのだ。
私には私を愛してくれる家族がいるのだから。
完
なんで私を愛してくれないの? 辻田煙 @tuzita_en
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