第3話『ネコと瀬戸内海』
コレだ。
目の前に広がる景色。
わたし、この景色が見たかったんだ。
青空の下。
一面の登り斜面に並んだ住宅。
住宅と住宅の間の空間にあるのはお寺。それも1つや2つじゃない。
そして、その上には緑が生い茂ってる。
所々に石段があり、まっすぐと上に向かって延びている。
SNSで見た景色だ。
坂の町、尾道。
今回の旅はコレが見たかったんだ。
にしても、スゴい!
日本のようで、日本じゃない景色。
ん〜、変な日本語。
でも、そんな気持ちわかるかな?
おや?
アレは!
尾道の駅でもらったガイドの小冊子に載ってた。
登り斜面の中腹の鉄塔からてっぺんに向かって延びるケーブル。
ロープウェイだ。
乗ってみよう。
上から見る景色、楽しみ〜♪
う〜ん···
一向にロープウェイの乗口が見つからない。
わたしゃ、今どこ歩いてるの?
石段を上がったり、降りたり、最初はスゴく楽しかった。
でも、さすがに疲れてきたな。
おや?
小さな看板。
そして、細い路地。
看板には『ネコの小路』って書いてある。
ネコさん。
ヤッパリ、尾道はネコさんの町なんだ。
進んでみる。
いないな、ネコさん。
そううまくはいかないか。
途中、石垣の上に建った緑に半分飲まれた建物があった。カフェみたい。ノドも渇いたし、休憩しよっかな。
そのとき。
ニャア〜♪
足下を見ると、1匹の小さなかわいいネコさん。
上半分が茶色と黒のまだら模様。下半分は白といったステキなカラーリング。
ピンクの首輪をしている。
かっわいいお顔。
女の子だ。
女子同士通じるものがある。
こんにちは♡
挨拶すると、寄ってきてくれた。
背中を撫でると、気持ちよさそうにしてる。
すると、ネコさん。
顔を上げて鳴いた、ニャア〜♪
そして、ちょっと離れたとこにチョコチョコと移動。
振り向いて、また鳴いた。
ニャア〜♪
着いておいでニャ。
明らかにそういってた。
うん、着いてくよ。わたしはあなたに着いて行きたい。
チョコチョコ。
ニャア〜♪
チョコチョコ。
ニャア〜♪
その繰り返し。
細い裏路地。
お寺の境内。
幼稚園の前。
つづら折りを下り、わたしはネコさんに着いて行く。
登り斜面の中腹くらいにいたのが、結構下まで降りてきた。
目の前には大きな鉄塔。
ん?
そこはロープウェイの乗口だった。
わ〜、着いた!
ネコさん、ありがとう♡
いない。
ネコさん。
不思議でかわいい愛すべき一族。
ロープウェイで上に上がる。
お寺の上を通る。
お寺の境内にスゴく立派で大きい木が立ってた。
登り斜面の町並みが一望できる。
さっきのネコの小路が見えた。
あ! さっきのネコさん!
ネコさんは家の塀の上を歩いていた。ピョンと塀を飛んで、塀の中に姿を消した。
ロープウェイがかなり上まで上がると、背後の景色が一変した。
わたしの背後の景色。
尾道の町並み。その奥には青い瀬戸内海。そして、海に浮かぶ島と島を大きな橋が結んでいる。
登り斜面から平地に続く町並み。
青い海。
海に浮かぶ島を結ぶ大橋。
その景色にあてられちゃった。
「人間、スゲ」
思わず、口にしてた。
大自然。
広大な登り斜面に町を作り、海に浮かぶ島と島を橋で結ぶ。
人々の努力をこの目で見た。
スッゴいな、人間って。
フォォ――ッ!!!
そう叫びたい。
ロープウェイには他の人もいるから、恥ずかしいからしないけど。
なんか、誇らしい気持ちになった。
そして、こんなステキな景色を見られたのは、あのステキなネコさんのおかげだ。
第4話へ続く🐾♪
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