小さな吟遊詩人は過保護な剣士と旅をする

七生(ななお)

《神々の箱庭》*おとぎ話

神々の箱庭。


7つの国で成り立つその大陸は遥か昔からそう呼ばれていた。

2つの王国と5つの帝国はそれぞれが独立国家であり、それぞれが神々が遣わした精霊に護られている。



地の国 カタストロフ

水の国 セラニティ

火の国 グレン

風の国 サリエラ

空の国 クウサイ


そして


光の国 カイダイ

闇の国 アイン



正確には光と闇に精霊はいない。

カイダイアインが自らその欠片を降ろして護っている。


5つの精霊は自分が選んで愛した子供に宿り、愛して、護って、国は栄える。大きくなってその子が天寿を全うすればまた新しい愛する子供を探す。


愛したその子が泣けば精霊は怒り、笑えば精霊は喜んだ。その大地を揺るがす精霊主エレメンタリー達は時に神々によって秘匿された。




 常に神の御手を感じる事のできる、同時に神々の気まぐれをもこうむる不思議な大陸。例えるなら、箱庭の中の小さな水たまりにはまってもがく小虫を目にしてそっと指先にとまらせ助ける気まぐれもあれば、気にもとめずに放置されるそれに似ている。


その世界には確かに神々はいるのだ。祈ればあり得ないほどの奇跡で救われる。ただどんなに祈ってもその目に止まらなければなにもおこらない。


神はただただ気まぐれで自由だ。



昔々、億年が昔。どの世界にも在るであろう光と闇の神が産まれ、暁と黄昏を司る二人の神は愛する太陽アルフセリスに世界を見守らせた。

カイダイの世界は太陽アルフに、アインの世界はセリスが。優しく、時に厳しく照らし続ける。


だが 数十年に一度巡り合う蝕の刻、太陽アルフセリスに恋をした。


カイダイは大切な太陽アルフが愛するセリスを光の世界にとアインに望むが、セリスを愛するアインはそれを断固として拒絶した。

輝くカイダイの世界にも小さな影がさすように、一筋の光もない闇の世界などあってはならない。セリスは自分の孤独を、絶望を、光を奪われた自身を救ってくれたおのが愛する光だ。


アインカイダイを愛していた。

けして交わることのない愛するカイダイを一筋だけ小瓶に詰めて愛しいセリスを造ったのだ。

自ら輝く事も出来ない淡く小さなセリスは、カイダイが造った太陽アルフに微笑まれれば優しく美しく輝いた。


白く、淡く、幻想的に。セリスアインを虜にした。恋するカイダイには触れることもできない。セリスはずっとその胸に抱かれてくれる。

手放す事など出来なかった。


そして太陽アルフは己を見て恥じらうように輝くセリスに、重ねる日々全てをかけて恋焦がれた。一目でも見ようと休むことなく輝き続ける太陽アルフが壊れてしまわないかと胸を痛めたカイダイは、とうとう宵闇の一瞬に小さく輝き出したセリスの一雫をそっと手のひらに盗み出したのである。


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