桃太郎~正義の果てに~
山下ともこ
第一章:鬼たちの暮らし
昔々、まだこの地上に人が住むことのなかった、遠い遠い昔のこと。
この世界には鬼たちが穏やかに暮らす島がありました。
そこは緑豊かで、雄大な山々がそびえ立ち、
川は澄んだ水をたたえていました。
そして、その島の中で一番高く大きく険しい山は『命の山』と呼ばれていました。
山の頂は金銀でおおわれており、その金銀は鬼たちの生命の源だったのです。
鬼たちは人間のように毎日食事をとる必要はありませんでした。
彼らは年に一度、命の山の頂で、
金銀を摂取することで生命を維持し、力を得ることが出来たのです。
鬼たちは、金銀がなければ生きる事は出来ず、
その金銀こそが、鬼の血であり、魂であり、存在そのものだったのです。
鬼たちは体が大きく、小さな子どもでも、人間の大人女性ほどの背丈がありました。
成長した鬼は人間の二倍、時には三倍もの大きさとなり、
鍛え上げられた体は岩のように硬く、その力は山をも揺るがすほどでした。
ですが、彼らは決して乱暴ではなく、
自然と調和しながら慎ましく生きていたのです。
年に一度の食事の日、鬼たちは一族総出で命の山の頂に集まります。
鬼たちの真ん中で、
鬼の長老・温羅(うら)は静かに手を掲げ、厳かな声で言いました。
「今年も命の山の恵みに感謝しよう。
山がもたらす命の源をいただき、また一年、我らは生きるのだ。」
鬼たちは山の金銀を手にし、口に含みました。
すると、長い冬を耐え抜いた木々が芽吹くように、
彼らの角は光を帯び、生気がみなぎって行きました。
肌には艶が戻り、目には活力が宿ります。
ですが、鬼たちは、その恵みをただ享受するだけではありませんでした。
山もまた、命ある存在。金銀を生み出すには、十分な潤いが必要でした。
次の一年のために、鬼たちは山への感謝を込めて、
毎日山頂まで水を運び、まいていたのです。
山が乾くことなく、また次の年も恵みをもたらすようにと、祈りを込めて。
こうして、鬼たちは自然と共に生き、助け合い、平和に暮らしていました。
しかし、その平穏は、海の向こうから訪れる者たちによって、
突如として脅かされることになるのです。
続く~第二章へ~
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