雨降り町でご飯を 2

 いくつであろうと、レディーに対して言ってはいけない言葉がいくつかある。その内の一つに、そしてランキングにすれば上位に君臨する台詞に、こんなものがある。


 ──太るぞ。


 それは、体重を気にしながら、それでも美味しいものを食べたいだけ食べたいと思うレディーの耳に、絶対に入れてはいけない言葉。そんなことをしてしまった日には、地面にめり込まされても文句は言えない。


「ごめんなさいは?」


 俯せに地面にめり込んでいるゾロに、彼をめり込ませたエリスは笑みを浮かべて訊ねる。


 天使のような笑み。

 華奢な体躯。

 愛らしき少女。


 まさか彼女が男を地面にめり込ませるような力持ちであるなどと、誰が想像できようか。


「ごめんなさいは?」


 再度訊ねると、ようやく、ゾロのくぐもった声がエリスの耳に届いた。


「……さすが……きゅう、けつき」

「どういう意味?」

「……ごめん」

「ふんっ!」


 ようやく謝罪の言葉を聞けると、エリスは片手で彼を引っ張り上げた。

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