第5話 文武両道系の魔物
俺は今、魔物おじいさんに人間の言葉を習っている。この飴のおかげで、完全に理解ができるのですぐにある程度の単語や、文字を理解することができた。
この世界はいくつかの国に分かれているようだが、元は同じ民族だったとかで、言語は世界で統一されてるらしい。
いろんな意味で楽なのでありがたい。
それから約1週間。
俺は人間の言葉を8割ほど理解した。
これは、俺の能力の言語習得○の効果だろう。
そして、明日でアリスと旅を始めてから3週間。つまり、明日には飴の効果が切れる。
だが、俺は言葉を学んだ。これで、だいたい会話はできるだろう。
そして次の日。
アリス「タール、おはよう。どう?言葉は分かる?」
タール「ウン。コトバハリカイデキル。」
アリス「………。」
タール「ドウカシタ?。」
アリス「あんた、滅茶苦茶カタコトよ。」
タール「エ?マジカ。タシカニ、ハナスホウハ、アメヲツカッテイタトキダケダッタカラ、アンマリナレテナイナ。」
アリス「あー、もう!聞き取りづらいし、こんなにカタカナが並ぶと目が疲れるわよ!」
タール「カタカナ?メ?ナニイッテンダ?。」
アリス「あ、気にしないで!ひとまず、もう一回魔物おじいさんのところで学んできなさい。」
タール「アア。ワカッタ。」
こうして、うまく話せるようになるまで追加で5日ほどかかってしまった。が、そのおかげもあり、話すだけでなく、単語も前より覚えられた。
そして5日後。
タール「おはよう!アリス」
アリス「あら、タール。おはよう。どうやら言葉を完璧に話せるようになったようね。」
タール「ああ!魔物おじいさんの教え方が凄い上手くてな。言葉だけじゃなくて筋力と魔力を伸ばすトレーニング方法まで教えてもらえたんだ。」
アリス「あら、それは有り難いわね。後で御礼をしにいきましょう。」
タール「あ、それとさ、もう一回ステータスを見たいんだけど、やってくれないかな?」
アリス「いいわよ。ルアマとのトレーニングと、魔物おじいさんのトレーニングの成果がでてるかもしれないわね。」
そして、アリスがステータスを書き写して、渡してくれた。
—――—————――――――——————
『ステータス』
名前:タール
種族:オーガ(古代神の使い)
成長タイプ:超晩成型
基礎能力
筋力:24 (+16)
敏捷:22 (+7)
知能:85 (+27)
魔力:18 (+15)
防御:20 (+12)
精神:38 (+8)
体力:77 (+15)
適正一覧
剣術:B+ (B→B+)
魔法:B
弓術:C
体術:A (B→A)
研究:A
習得魔法
なし
スキル
・努力○:努力家の証。 継続し続けると成長しやすくなる。
・言語習得○:言語が習得しやすい。
・%!×々09:不明。
・意外性○:意外な一面を見せる。
・コミュ力○:コミュ力が高い。
・分析力○:相手の分析が得意になる←new
————————————————————
タール「……おぉ、結構良くなってるんじゃないか?」
アリス「そうね。能力が軒並み上がってるわ。ただ……」
タール「ただ?」
アリス「普通はね、適性は上がらないはずなのよ。」
タール「えっ?俺は、剣術と体術の適性が上がってるけど…」
アリス「そう、そこが問題なのよね。貴方が少し特別な存在ってことなのかしら。古代神の使いにそんな特別な能力があるとは魔物おじいさんも、あの本にも書いてなかったわ。」
タール「まぁ、強くなれてるんだし、なんだっていいさ。よし、これからももっと強くなってやるぞ!」
アリス「ふふ、頑張ってね。私も魔法に関しては色々教えられると思うから。」
タール「ありがとな! …そういえば、ルアマはどこに行ったんだ?」
アリス「さっき、魔物の気配を感じたって言って、森の方を見に行ったわ。」
タール「そうなのか?俺もちょっと様子を見に行ってくる。」
アリス「貴方まだ弱いんだから、あんまり無茶はしないでね!」
タール「わかってるよ。自分の
そう言って、俺は森の中に入った。
のはいいんだが…
ルアマ、どこ行ったんだ…。
そういえば俺は気配察知はできないのだった。視力はいいけど、気配なんかはわからない。とりあえず、木に登って周囲を見渡してみるとしよう。
他の木よりも頭一つ抜けて大きな木を登ってみた。
うーん、なんか北にゴブリンの集団がいるのが見えるなぁ。真ん中にはでかいゴブリンがいる。ゴブリンロードって奴だ。よく見るゴブリンの群れだな。ゴブリンの数は、ざっと5匹程だろうか。
ん?あれは…ルアマだ。様子を見てるのかな?まぁ、もし戦闘になってもルアマの実力ならゴブリンとゴブリンロードくらい余裕だろう。ゴブリンロードは、ゴブリンの群れのリーダーといえど、強さはオーガに微塵も及ばない。ルアマはシコラスとラプレスよりも余裕で強いと思うから多分大丈夫だ。まぁ、俺が言ったことが当てになるかは分からないけど。
とかなんとか言ってるけど、今の俺は余裕でゴブリンロードに負ける。なんならゴブリンも3体同時とかだとだいぶ厳しい。
実力の表を作るなら、
ゴブ≦俺<ゴブ3匹<<ゴブロード<<<<一般のオーガ<ルアマ
くらいだろうか。だが、俺もまだまだ全然弱いので、ゴブリン1匹倒すのにも手こずりそうだ。もっと強くならねば。
そんなことを考えていたらルアマが攻撃を仕掛けた。おお、剣を1回横に薙ぎ払うだけでゴブが3匹やられている。首が飛んで血が噴き出す。まるで噴水だな…。少し閲覧注意だ。
後ろから攻撃してきたゴブ達も腹を切り裂かれて内臓がデロンと出て地べたに倒れ込む。
うへぇ、グロい。因みに、グロいという言葉は魔物おじいさんが書いていたであろう書物の中に記されていた。意味はよく分かってない。多分、血や内臓が出ていたりしたらグロいの条件を満たすだろう。知らんけど。
まぁ、そんな話はどうでもいいとして、ルアマがゴブリンロードとの戦闘を始めた。
先に仕掛けてきたのはロードだ。
ロードは長い腕を乱暴に振り回す。
が、ルアマは大振りの攻撃などものともせずに、躱しながら懐へと潜り込む。
ロードが地面に叩きつけるように腕を振るう。しかし、ルアマは腕が伸びてきたタイミングに合わせて、腕を斬る。すると、丸太のような太さを誇るゴブリンロードの腕が、いとも容易く斬り落とされた。
ルアマが使っている剣を見せてもらったけど、何の変哲もない鉄の剣だった。
剣は綺麗に手入れがされていたが、そこまで斬れ味のある剣ではないだろう。
しかし、ルアマはその剣で綺麗に物を斬り落とすことができるのだ。
前にルアマに聞いてみたが、風属性の魔法が込められた魔石を、剣に埋め込んでるらしい。魔石は、魔物のボスや、強力な魔物を倒すと手に入れられるらしい。
魔物おじいさんの書物にはそう記されていた。
ゴブリンロードを見ると、もうボロボロだった。アイツはリーダーのくせに単調な行動しかしない。ゴブリンロードは魔物の中でも知能は低いほうだ。
ルアマは、ゴブリンロードの攻撃を簡単に受け流し、少しずつ攻撃を加えている。
本気を出せばもう殺れるはずなのに、時間をかける。
おそらく、練習台として使っているのだろう。的は大きく、遅くて単純な動きしかしないゴブリンロードは、練習にはもってこいなのである。(強者限定)
だが、俺みたいな弱者は、ロードの分厚い脂肪に阻まれてしまい、攻撃が通らない。攻撃も、普段はゴブリンと一緒に行動しているので、ゴブリンロードの攻撃は避けられても、ゴブリンの横槍を受けてしまう。
ルアマのように先にゴブリンを処理できるならいいが、ゴブリンの処理に集中していると、ゴブリンロードの重たい一撃を食らってしまう。
ゴブリンロードは、何故か統率力があるので、ゴブリンたちは息を合わせて攻撃してくる。
案外、倒すのには苦戦を強いられるのだ。
とかなんとか語っているが、この情報はルアマやアリスなんかに聞いた物だ。俺が戦った訳では無い。
さて、ゴブリンロードに目を向けてみると、片腕しかないロードは懸命に食らいつこうと頑張っているが、もうロードの身体はボロボロだ。
身体中に切り裂かれた跡があり、そろそろ可哀想になってくる。
ここまで、だいたい15分くらい。
結構長いことやっているのだ。
すると、ルアマが一気に近づいて一閃。
その瞬間、ゴブリンロードの首が斬り落とされ、ロードは膝から崩れ落ちた。
俺は木から降りて、ルアマの元へ向かう。
数百メートル走ったところで、ゴブリン達の死体に囲まれ、剣に着いた血を拭いているルアマがいた。
タール「ルアマ。流石の強さだなぁ。」
ルアマ「む、タールか。全く、お前は本当に目がいいな。」
タール「え?」
ルアマ「数百メートル離れたあの木の上から見ていただろう?そんなに離れなくても、近くで見れば良いではないか。」
ルアマはそう言い、さっき俺がいた太樹を指差す。アリスがルアマの気配察知を褒めていたが、まさかここまでとは。凄い。
俺は目で広範囲をみることができるが、目に見えないものや、死角のものは対処しようがない。
俺も気配察知を使えるよう努力しよう。
ルアマに動きを教わったり、魔物おじいさんに勉強を教わったりして、さらなる成長をしていかなければ。
これからも、文武両道で頑張るぞ!
晩成型のオーガさん ハチ @hachi_7777
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