第3話 適性試験、白き疾走

まりこは突然太宰の手を振りほどき、異能無効化を解除してしまった。

当然姿は子猫になって、そしてすごいスピードで走っていってしまう。


太宰「まりこちゃんっ!?」


太宰は必死にまりこを追いかけた。

万が一見失っても、まりこにはGPS付きの首輪がされている。

しかし、まりこが異能力操作ができない今、あらゆるトラブルの可能性を考えると危険なのは間違いない。


まりこは目的地近くの路地裏でようやく人間の姿に戻った。


太宰「ハァ、ハァ……まりこちゃん、脚速いんだねぇ。でもどうして急に走り出したの?」

まりこ「危険を察知した」

太宰「危険?」

まりこ「私の中の猫が教えてくれる」

太宰「ふふ、そういうことね。さぁ、任務完了は目の前だ。手を繋いで行くよ」


まりこは闇雲に走ったわけではなかった。

猫の危機察知能力で、危険な仕掛けを回避しながら太宰を誘導していたのだ。

そして、書類は無事届けられた。


一方その頃、探偵社では――


賢治「白猫ちゃん、可愛かったですね!」

国木田「賢治、あの子はかなりの重要人物だぞ……慎重に接しないと」

賢治「そうなのですか?? 人間も動物も、純粋な気持ちで接していれば何も問題ありません!」

国木田「そうだな、お前はひとつも間違っていないな」


動物と接するのが日常だった宮沢賢治は、猫が一匹増えるくらい何ともないようだ。

お気楽な賢治とは裏腹に、国木田は手帳を見ながら頭を抱えていた。


乱歩「そろそろ適性試験が終わった頃だな。まりこちゃんは探偵社の新しい飼い猫というていになりそうだ」

賢治「仲間が増えますね! 嬉しいです!」

敦「ですね。探偵社員になったら、社長が異能力をコントロールして人間と猫の姿を自由に変えられるようになるんでしょうか?」

国木田「少なくとも、彼女にとって危険が及ばない方を選べるようにはなるだろうな」


敦や鏡花をそうしたように、福沢は最初からそのつもりだった。

乱歩はそこまで見抜いていたが、すべてを話さなかったのだ。


太宰「たっだいまー!」

敦「太宰さん、まりこちゃん! おかえりなさい!」

福沢「よく帰った。まりこは合格だ。今日からよろしくな」


まりこは晴れて探偵社員となった。

だが、まだ子供のまりこには、これがどんなことなのか理解できていなかった。

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