第7話 襲来
指示に従い一旦現場から退いた二人は、検問が見える丘の上で再び状況を見守っていた。だが、ふとした瞬間、空気が一変するかのように、混沌とした騒音が辺りに響き渡る。
調査区域の一角で、突如、禍々しい形をした魔獣が現れた。黒煙をまとい、鋭い牙と大きな爪を持つその魔獣は、騎士たちに襲いかかり、一瞬にして彼らを無惨に打ち倒す。
乱れた盾甲と、騎士たちの苦悶の叫びが、夕暮れの中に不協和音として刻まれた。タクマは、決然とした表情でその現場を捉え、ランデルもまた、鋭い眼差しで獣の動向を見極める。そして、二人は頷き合い、混沌に埋もれる現場へと急いだ。
アイリスは一瞬、周囲の混乱に戸惑いの色を見せるが、すぐに状況判断を再定義し、「交代で囲い込みなさい!怪我をした者は退避!」と騎士たちに指示を出す。
騎士団が一瞬にして崩壊するその光景に、深い衝撃を味わいつつも、爆炎の魔術詠唱を始める。しかし、残された騎士たちの反応すら、すでに時の流れを待たずして終焉を迎えている状況に、その現実の冷たさを実感した。
動揺から不完全な魔術となり、暴発したそれは、調査区画の片隅にあった小さな像を燃やす。
爆発音とともに、魔獣は最後の騎士を引き裂きながら、闇に飲み込まれて消えた。
「何が起こったんだ……」
息を整えながら、タクマとランデルは、血の池に佇むアイリスと掻き消える魔獣の影を目の当たりにした。
廻る星と英雄の誓い しおまねき @yuly
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