第5話 祠を目指す

北路をさらに進むうちに、タクマとランデルの前に、ひっそりとたたずむ一軒の古びた祠が姿を現す。壁は風化により深い緑に染まり、苔がじわじわと時の経過を物語るように、そこに積もっていた。

 

タクマは、一瞬の沈黙を破るかのように、そっと祠の扉に触れ、その冷たさを確かめる。これまでの情景が、ただの自然現象ではなく、依頼状に記された不可解な事件と結びつく断片であることを、彼の内心は静かに捉え始めていた。

 

ランデルは、すでに一歩先を見据え、祠の大きさや佇まいに醸し出される重苦しい雰囲気に注意を払いながら、無言でその場所の意味を考えていた。ふたりは、これまでに町で耳にした情報―行方不明者の事件、子どもの悲鳴、そして黒煙の噂―が、ここでひとつに結実しているのではないかという予感を、共に共有していた。

 

「この祠を確かめる」

 

タクマが、小さな決意を胸に呟くと、ランデルもまた、ただ一言、うなずくだけで、その覚悟を共有した。すでに、この場所が、今後の事件の核心部分に繋がる鍵の一端であるのは、二人には明白だった。

 

こうして、彼らは、町の中で得た情報と、現地で感じ取った違和感を胸に握りしめながら、祠へと足を進める決意を固めた。それは、もはやただの好奇心ではなく、町全体を覆う不可解な事件と、行方不明者の謎に終止符を打とうという、本気の覚悟であった。

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