Scene.1 誘いと拒否と、なぜか同行

「ファッションは、どれだけアイテムを持ってるかではなくて、どれだけ実際にアイテムを組み合わせて楽しむか、だと思ってる。みきさん、今度一緒にショッピング行きましょ」

 言ったのは結香だった。

 目がキラキラしていて、口調がさらりとしていて、それでいて絶対に本気だってことがわかる。

 その横で、みきが少しだけ首をかしげながら、でもすぐにうなずいた。

「ぜひお願いします」

 ああ、このふたり、思ったよりウマが合う。

 そして、わたしに矛先が向くのは──必然だった。

「彩香さんもどうですか?」

「女3人いると派閥ができるから、わたしは遠慮しとくね」

 とっさに出たのは、この無意味な牽制球だった。

 しかしこの球は、まったく牽制にならなかった。

「じゃあ、記録係で」

「えっ」

 そのときの結香とみきの視線、完璧にシンクロしてた。

 わたしが気圧されて黙ると、「決まりですね!」とにっこり笑ったのは結香の方だった。

 というわけで──

 いま、わたしは渋谷に向かう電車の中にいる。

 ノートパソコンも広げられず、何の原稿も進まず、カバンの中には「一応のつもりで持ってきた録音機器と手帳」が入っている。

「……ねえ、ほんとにわたし、ついてきただけってことでいいよね?」

「もちろんです。彩香さんが自発的に服を試着するような場面は想定してません」

「あ、それは助かる」

 みきの答えに思わず安堵する。

 が。

「でも、似合いそうな服を見つけたら……勝手に持っていきますね?」

「えっ」

 言ったのは、もちろん結香だった。

 何その無邪気な笑顔。天使か悪魔かって言ったら、あんた今だけ完全に後者よ。

「わたし、いま書きかけの小説があるんだけど」

「その話は、ショッピングのあとに聞かせてください♪」

 というわけで、わたしの「記録係」は、まだ始まってもいないのに既に漂う敗北感。

 ──続く。


 ──────────────────────────

 次のシーンでは、「ショップ到着→結香のファッション分析→みきの観察→彩香が捕まる(導入)」へと続けてまいります。

 ご希望があれば構成を微調整しますが、このまま進めてもよろしいでしょうか?

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