願えば叶う異世界で、あなたとスローライフ。……のはずが、ざまぁと復讐の日々でした。
越山あきよし
第1章 願えばなんでも叶う異世界へ
プロローグ
カネ、カネ、カネ、カネ、カネ――本当にイヤになる。
なにが資本主義だ。
お金をもらうのに労働が必要だ。
生きるのにお金が必要だ。
こんなもの、資本主義なんて――奴隷制度となんも変わらない。
私、
私は過労死した。
まさか自分がそんな目に会うなんて思わなかった。
死ぬぐらいなら辞めればいいのに。
そんなことを考えていた頃が懐かしい。
お金を稼ぐため、生きるため、ただただそれだけのために働いた。
「ようこそ、お越しくださいました」
「は? ここどこ?」
「ここは天空の地。いわゆる、あの世です」
なるほど、私は天に昇ったわけか。
「あなたは近年、まれにある偉業を達成いたしました」
「は?」
なにこの人、バカにしてるの?
絶対、過労死のこと言ってるよね?
それを偉業って……。
「栄光を称え、あなたにはお好きな能力を差し上げましょう」
私はなにも反応できずにいた。
「あれ? 反応がありませんね。死んでるんですか? あ、死んでるからここにいるんですよね。すみません。わかってあげられなくて」
ムカッ!
「あなたなに! ケンカ売ってる?」
「いえ、とんでもこざいません」
私に対して、キレイにお辞儀をしてみせた。
足を揃え、スカートの裾を掴み、腰を曲げる。
よく見るとかわいらしい。
髪は金色。小柄で、童顔。
「仕事とは人のためになることをすること」
急に語りだした。
「あなたはそれを命を賭してまでやり遂げました」
そんなのただのバカでしょ。
「これはなかなかできることではありません。例えるなら、激流の川に身を投じ、人を助けるようなもの」
バカじゃん。それ、バカでしょ。
絶対、死ぬやつじゃん。
死んだあと、英雄だと
私がそれをしたってこと?
バカ過ぎてありえないんだけど。
「あなたは決して、己の欲に溺れず。
そう聞くと、自制が効いていて、利発そう。
「だからこそ、わたくしは決めました。すべてをあなたに託します」
「……はぁ」
え? なに? 私はなにを託されるの?
「選んでください。どのような日々を送りたいのか。それによって託す能力が変わります」
ああ、託すってそういうことね。
ビックリした。
てっきり世界の命運でも託されるのかとヒヤヒヤしたよ。
そんなの御免だからね。
「どうします? なんでも言ってください」
「そうですね。とりあえず、あなたが何者なのかを知りたいですね」
「あら? 失礼いたしました」
さっき見せたキレイなお辞儀をして見せる。
「わたくしは女神。名は、ティアナ」
「女神?」
「はい」
もうなんでもいいか。
私は思うがまま願いを言うことにした。
「私は資本主義――お金がなくてものんびり快適なスローライフを送りたいです」
「わかりました。それではあなたに、願えばなんでも叶う能力を授けましょう」
「へ? なんでも?」
「はい。なんでもです」
「それはさすがにご都合主義すぎませんかね?」
「いえ。そのくらいでないと釣り合いません」
「そうですか」
「はい」
私の過労死はそれほどの徳があるらしい。
頑張っててよかった。
「ただし、使い方には充分気をつけてください」
「わかりました」
「それと、飽きたら言ってください」
「……飽き、る?」
「不老不死なので」
「あぁ~なるほどね」
「はい。それではいってらっしゃい」
私は光に包まれ、女神様の姿が見えなくなる。
それから、ボソッと、女神様の声が聞こえた。
「あなたにすべてを託します。わたくしはこの世界――滅んでもいいと思ってますので」
本当にこんなこと言っていたのか信じられない。
聞き間違いかな?
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