血染めのベティ

しゆ

影のある男

今日の授業を終えて校舎を出ると、入り口を出てすぐの所に男が立っている。


「お嬢様……お疲れ様でした……」


「あっ!善光!!今日もお迎えありがとう!!」


今日も今日とて覇気を全く感じないこの男は、名を「喜多善光」と言う。

あたしが手伝っている実家の家業において、部下として動いてくれている人達の1人だ。

名前に全くそぐわない陰気で全く光のない瞳が特徴的な男である。


「いえ……仕事ですので……」


「仕事だとしても、毎日だなんて面倒じゃない?」


「いえ……」


善光に頼んでいるのは、毎日の登下校時の身辺警護。


あたしはいらないって言ったんだけど、お父様の意向で護衛を最低1人はつけることになっている。


「それで?今日の報告は?」


「はい……お嬢様の周囲を探ろうとしている者が2名、どちらも処分してありますが……」


「そう、いつもありがと!手間が省けるわ」


「いえ……」 


善光はこんなのでも仕事はきちんとこなす。

最初は要らないと言ったけれど、今では手放せないくらい便利な人材になっている。


「さぁ、帰ろ善光!!今日も仕事しなきゃ!!」


「はい……お嬢様……」


今日もあたしの「仕事」の時間が始まる。

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