第7章 ー飛悠sideー

「最近…玲那ちゃん来ないね」


同僚のホストがふと口にした


飛悠はグラスを拭きながら、軽く肩をすくめる


「まぁ…そういう時もあるだろ」


「常連になりそうだったのに」


「学生だしな」


あくまで軽く流す


いつもの自分なら、それで何も思わないはずだった


だけど──


グラスに映る自分の顔を見ながら

わずかに胸の奥がざわついてた


 


──あいつ、今なにしてんだろうな


 


別に特別扱いしてたわけじゃない

他の客と同じ

そう思ってた


けど、気付けば

席に現れない日が続くと

少しだけ物足りなさを感じてる自分がいた


 


無理に甘えてくるわけでもなく

わがまま言うわけでもなく

静かに隣に座るあの距離感


あの絶妙な”間”が、妙に心に残っていた


 


──いや、仕事だろ


自分に言い聞かせるように

もう一度グラスを拭き上げる

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