第6章



 


夜の繁華街を

わざとじゃないような顔をして歩いてた


ほんとは、店の前を通るのが目的だったのに


 


──たまたま帰り道だから


そんな言い訳を心の中で何度も繰り返してた


 


店の入り口近くまで来た時

ふと、黒い車が停まってるのが目に入った


数秒後

扉が開いて、出てきたのは──飛悠だった


スーツ姿の男性と言葉を交わして

軽く会釈をして別れる


誰なのかは分からない

けど店の人じゃない気がした


 


そのまま歩き出した飛悠は

スマホを見ながらゆっくり歩いていく


私はとっさに物陰に隠れた


見つかりたくなかった

でも、目は追ってしまう


 


──誰と連絡してるんだろう


──今からアフター?


頭の中で

勝手にいろんな想像が膨らんでいく


 


けど…

今夜は誰かと一緒じゃなかった


少しだけホッとする自分に

また自己嫌悪が押し寄せた


 


「……」


歩き去る背中を

ずっと見送ってしまっていた


ただ、胸の奥は静かに疼いたままだった

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