撮り鉄のかがやき~陰キャ撮り鉄の僕は、大人気グラドルの専属カメラマンになった~
なかそね駿
1.フォトコンテスト
大きな展覧会の会場に僕はいた。
ここの会場には鉄道の写真が、数多く飾られている。その中には、僕が撮った電車の写真もある。
そして、今日、この日、この飾られた写真の中から、優勝者が決まる。
因みに、ここにある写真は、既に応募時点で選考を受け、既に、いくつかの選考を突破したもののみが、飾られていた。
このコンテストは、何枚も応募ができ、僕の写真は五枚ほどこの会場に飾られていた。
こうして、選考を突破できたのも嬉しかったし、五枚も突破できるということも、本当に感謝だった。後は、昨年よりもいい結果を残せるように祈るのみ。
僕の表情は緊張感に溢れていたが、どことなく、自信に満ち溢れていた。
展覧会の中央にはステージがあり、今日このステージで、このコンテストの入賞者が発表されるようだ。
そして、しばらく時間が経過し、審査員らしき人達が、このステージに集まって来た。
「大変長らくお待たせいたしました。これより、本年度の、鉄道フォトコンテスト、入賞者の発表を行います。入賞した方は、受賞した賞に寄って、賞金が授与、そして、弊社が刊行いたします、鉄道雑誌に掲載いたします。勿論、その分の写真の提供や、掲載料もお支払いいたします。」
審査員の一人。おそらく、このコンテストの主催者であり、鉄道雑誌を出版している会社の社長もしくは役員らしき人物が、挨拶として、こう述べた。
このコンテストは、中学生以上であればだれでも応募でき、入賞賞金に関しても、未成年が受賞したとしても、親の承諾さえあれば、受け取れる仕組みだった。
故に、このコンテストは色々と人気があり、かなりの数の応募が来るのだそう。
僕も中学三年生。中学生になってから、このコンテストに応募し、ありがたいことに、中学一年生の時も、二年生の時も、このコンテストに応募し、選考を突破し、 この展示室に、僕の鉄道の写真が飾られていた。
そして、昨年は入賞して、親の許可を得て、賞金ももらっているし、鉄道雑誌にも掲載されている。
さあ、今年は、去年の順位、去年の結果を上回ることができるか。いよいよ、運命の瞬間である。
先ずは、下位の入賞者から発表される。奨励賞、審査員賞、銅賞、銀賞と続く。
ここまで、僕の名前はまだ呼ばれていない。
今年は、入賞できなかったか?と思ってしまう僕。
残すは、金賞二名と、最優秀グランプリの一名のみ。つまり、上位三名が呼ばれるのみとなった。
「それでは発表します。金賞一人目。つまり、本年度、鉄道フォトコンテストで、第三位に輝いた方は‥‥。」
一瞬の沈黙。そして、司会者は大きく息を吸った。
「
司会の言葉に、思わず、ガッツポーズをする僕。そう。野田真晴という名前こそ、僕の名前だ。
周囲の拍手に包まれながら、壇上へ上がる僕。ステージの背景のスクリーンには、僕の写真が映し出されている。
雪山へ向かう勇者。そう。昨年の冬に、長野へ行ったときに、勢いよく通過していく、北陸新幹線、E7系を撮ったものだった。妙高の山々を背景にして。
「野田真晴さんこと、野田君は中学三年生。数年後には、是非グランプリを撮ってくださいね。今後の野田君の活躍に期待して、今回の入賞賞金と、雑誌の掲載料、そして、表彰状と記念品をお渡しします。おめでとう!!」
司会のアナウンスとともに、僕は審査員の人から賞状と、記念品の目録を受け取った。
「ありがとうございます。」
僕は深々と頭を下げ、それを受け取る。みんなが拍手をしてくれた。
授与式が終わっても、周りの人から声をかけられる僕。
「坊主、本当にすごいな。伯父さん完敗だよ。」
ポンポンと肩を叩かれ。
「よっ、将来の“大物”鉄道ジャーナリスト、いや、鉄道YouTuberかな。」
笑顔で、大きく手を振られ。
「将来は、YouTubeで全国鬼ごっことかやってくれよ。友達作ってさ。ああ、その時は、動画やるなら、俺呼んでくれよ。」
ニコニコと中年男性の他の参加者から握手を求められた。
そんな声に、僕は顔を真っ赤にしながら深々と頭を下げ、鉄道フォトコンテストの会場を後にしたのだった。
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