第20話 可愛いって思ったらとまらなかった※
頬を真っ赤に染めた彼女に、ユーグの心は撃ち抜かれた。
「アリセア、こっち見て」
からかうように笑いながら、アリセアの顔を、下から覗き込むように見やる。
「み、見ないでくださいっ…………」
アリセアは、咄嗟に手で隠すような仕草をした。
最初は、謝るつもりで目線を合わせた……のだが。
「アリセア…………」
艶やかな唇、泣きそうなほど濡れた瞳。
ふわっと漂ったシトラスの香りに、思考が奪われていく。
真っ赤になった頬が、たまらなく愛しくて。
見つめられたその瞬間、
理性なんて、簡単に崩れ落ちていた。
「んっ?!」
彼女の手首を優しく抑え、……そのまま唇を重ねた。
1度目は軽い触れるだけのキス。
そして、唇を離し、今にもまたふれあいそうな距離で彼女を見つめる。
「アリセア……嫌?」
「っ……ユーグ」
それでも、逃げない彼女。
手首を離すも、彼女は潤んだ瞳で、むしろぎゅっと俺の制服を握ってくるアリセアに、心は完全に敗北した。
可愛い……。
自然と庇護欲が湧き出てくる。
「リセ……」
無意識に、呼び慣れた彼女の愛称を呼んでいて……。
その瞬間、びくりと彼女の身体が跳ねた。
再度、触れるだけのキスをしたが、段々と、深くなっていく。
彼女の思わず出た吐息や、小さな甘い声も、耳元をくすぐってきて、
心臓が早鐘のように打ち鳴り、愛しさが胸いっぱいに溢れてくる。
記憶が完全に蘇ってない彼女に、こんな事をしてしまうのは間違いかもしれない。
ただ、今、この瞬間。
もっと彼女に近づきたい。
その気持ちに支配される。
そっと、彼女を抱きしめた。
いつまでそうしていただろうか。
「……あっ、リップ、ついちゃいます……」
「っ、」
その一言に、現実へ引き戻される。
わずかに残っていた理性が、かろうじてブレーキをかけた。
「っ、……ごめん」
「い、っ、いえ……」
「"リセ”が可愛くて、……我慢できなかった」
すぐに彼女から手を離し、距離をとり謝罪をする。
彼女は一瞬だけ驚いたように目を見開き、
そして、少しだけ戸惑った表情を浮かべる。
「…………リセって、私のことですよね?」
「もちろん!!……リセって言うのは、アリセアの愛称で。あ、決して他の人ではないから、安心して欲しい。色々と驚かせてしまってごめん」
すると。
ふるふると頭を振って、彼女は唇を手で抑えた。
「謝らないで下さい……私も。……う、嬉れしかったので」
「っ……!」
目線を逸らしながら。
顔を真っ赤にさせながら彼女は言った。
彼女は私に、たった一言でさらに一撃を与えたのだった。
「……アリセア」
愛おしさが先に立つ。
大切にしたい。
そう思った。
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