第18話 身体の中の魔力

「それで、何となく、これは私の勘なんだけど……この前の噴水の件も、七不思議が関係してるんじゃないかと思うんだ」




「え?でも、今回の件は魔力がすごく強くないと、干渉出来ない規模のような気がするのですが」




あのときは、ユーグや先生たちの全力でようやく収められた。


もしそれに関わっていた人物がいるとすれば──とんでもなく危険だ。




ふと、フォートの顔がよぎる。




なぜか分からない。




でも、その姿が脳裏に浮かんだ。




アリセアは軽く首を振り、周囲を見渡した。


見渡す限り、木々が多い茂り、特に付近の異変は無い。








と、その時だ。




どくん。




身体が波打つように熱くなってきた。






その衝撃で、膝をつく。




「アリセア?どうしたんだ」


ユーグがアリセアの身体に触れる。






「身体が、熱くて」


ぐるぐると熱が放出出来ずに、燻っているかのようだ。




自分の体を抱きしめるかのような姿勢で、私は熱にたえていた。




さっきまで普通だったのに。




一体どうしちゃったんだろう。




「アリセア、髪が」


驚いたような彼の声に、アリアは閉じていた目を開いた。


「っ、??」


視界に、自分の長い髪が見える。


毛先が……。


さらにプラチナになっている?






なんで?さらに不安になった私は、縋るようにユーグを見た。




その時、ハッと何かに気がついた表情になったユーグが、


「すまない」




そういう無いなや、私の手首を握った。




彼の長い指には、金色の指輪があったのだが、その指輪が白く輝き出すと同時に、ふっ……と、いきなり身体が楽になった。






「あれ……?どうして」


額からじわっと出ていた汗もとまった。






「これは?」




「体内の魔力調整を行ったんだ」




「魔力調整……?私……」




目を瞑り、自分の魔力を感じ取ることに集中した。


全神経を集中し、見えたものは。










「君の体内に、別の魔力がある」


「私の身体に、他の人の魔力がある」




ほぼ同時に、私たちは言葉を、発した。








私は、ここで誰かに話しかけられたんだ。


そして……。






「君に、魔力をあげる」






頭の中に、あの時の言葉が蘇った。






「アリセア?もしかして。記憶が戻った?」


茫然と座り込む私に、ユーグストが同じ目線で尋ねてくる。


端正な顔立ちなのに、どこか不安に揺れる瞳。




その顔を見て、私はふるふると頭を降った。






「ほんの少しだけ。完全には……ごめんなさい。」


「大丈夫、ゆっくりでいいから」


「君に魔力をあげる……そう言われたことは思い出したのですが」




「魔力を、あげる、か」


ユーグの思案する言葉に、アリセアは不安な気持ちが広がって行った。




「朧気な記憶で悪いのですが、確か……あの日、魔法塔から図書館へ帰ろうとして……そして、途中で何かの雰囲気を感じて」


「違和感のようなものかな?」


「はっきりと答えられないのですが、その空気に怖くなって……そしてその後図書館前の白い廻廊で、だれかに…」


額に手を当てながら、細切れになった記憶を手繰り寄せるように、懸命に思い出そうとする。




まるで白いモヤの中にある記憶をみつけようとするような……。


「きっと、その時に魔力を渡される事に繋がる出来事があったのかもしれないな」


「はい……」






そう呟いた途端、急に強い眠気が襲ってきた。




「っ……」


視界が揺れる。


身体が傾いたところを抱き止められた。




「っ、すみません」


「先程の魔力の影響かもしれない。今日はもう無理をしなくていい」と肩に手を添えられた。


その優しい言葉に、アリセアは小さく頷く。




「はい」


「また、改めて来よう」


彼に支えられ、私たちは静かにその場を後にした。

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