※AIへの指示用に使ったプロット



 新暦160年。


 エルドラド大陸で金が見つかった。


 その報せは熱病のように広がり、人々を魅了した。


 世に言う<エルドラド・ゴールドラッシュ>の幕開けである。


 多くの人々がエルドラド大陸を訪れ、多くの冒険者が生まれては死んでいった。


 迷宮は死と隣り合わせの危険地帯。


 上手く立ち回れば目が眩むほどの金銀財宝を手にできる。けれど、一歩間違えれば剣を握る手の1本、2本はあっさり失ってしまう。手だけでは済まない者もいる。


 工夫が必要だ。腕っ節だけで勝ち続けるのは難しい。


 頭と道具を上手く使い、「勝ちやすい方法」を構築しなければならない。


 その方法について、定型を作った冒険者がいた。


 彼の名前はローズ・バルボラ。勝利の定型を思いついた時、彼は孤独な少年冒険者だった。


 ローズ・バルボラはエルドラド大陸の開拓民として、異世界から誘拐されてきた少年だった。元の世界に帰りたければしっかり働けと言われた彼は、しぶしぶ開拓の仕事を手伝っていた。

 他の開拓民達と一緒に芝土の家をこしらえ、そこで共同生活を送っていた。開拓がそれなりに進み、丸太小屋を作り始めた頃、彼は開拓仕事を続ける気が萎えていた。


「この調子じゃ、家に帰る頃にはジジイになっちゃうよ」


 彼は自分をエルドラドに連れてきた犯罪組織が「故郷への帰還金」として要求してきた金を稼ぐには、途方もない時間を要する事に気づいていた。

 今のやり方だとどうしようもない。そんな時、彼はたまたま村に立ち寄った冒険者達の羽振りの良さに惹かれ、彼らに同行させてほしいと求めた。

 冒険者になって迷宮に潜り、ドカンと稼ぐ。

 冒険者になって稼いだ金で故郷に帰ろう。彼はそんな考えを抱いて冒険者となり、再び失望する事となった。


 当時のローズはまだ少年だった。

 魔物との戦闘をこなせるほど、屈強な身体は持っていなかった。

 幸い、彼を同行させてくれた冒険者達は、彼を囮として使ったりはしなかった。冒険者の多くはならず者であり、冒険者稼業に夢を見てついてきた少年少女に非道な真似をするのは珍しくなかった。

 囮として使いはしなかったものの、ローズは雑用係として酷使された。

 大人達の身の回りの世話をさせられ、寝ずに見張り番をさせられる日々。自分の体重よりずっと重い荷物を持たされ、ふらついて落とそうものなら殴られる。何も悪い事をしていなくても、大人達の機嫌が悪ければ殴られる。

 魔物と戦わずに済んでいても、生傷の絶えない日々を送っていた。


 最初は震え上がっていたローズは、段々と冒険者稼業に慣れていった。

 要領の良い彼は大人達に取り入る術を身につけていき、雑用係として上手く立ち回っていった。ただ、それでも過酷な日々に見合うだけの報酬はもらえなかった。

 所詮は雑用係。大人達のおこぼれをもらうだけ。


「この調子じゃ、大人になる前に死んじゃう……」


 彼は同行していた冒険者集団から逃げ出しました。

 ただ、元いた開拓村への帰り道なんてわからない。他の開拓村も、生傷だらけの「いかにも訳ありの少年」を受け入れてくれる様子はありませんでした。

 ならず者だらけの冒険者集団なら、受け入れてもらえる可能性はある。

 しかし、今のまま冒険者集団に戻っても雑用係の日々に戻るだけ。あんな生活はもういやだ。ローズは強くそう思っていました。


「強い武器が……。銃があれば……」


 ローズはそう考えましたが、その考えを直ぐ否定しました。

 エルドラド大陸にも銃は普及しつつありましたが、大半が黒色火薬を使った粗悪な銃でした。

 エルドラド大陸において、大半の冒険者は迷宮内が活動の場です。燃焼時に大量の煙が発生する事で視界は悪くなり、さらに発砲音で余計な魔物も呼び寄せかねない事から、当時の冒険者業界で銃の使用はあまり好まれていませんでした。

 もっと別の力がいる。

 それも、自分みたいな子供でも使える強い力がいる。

 魔法でも使えれば良かったのですが、ローズは魔法使いスペルキャスターとしての才は持ち合わせていませんでした。当時の彼は、ただの非力な子供でした。

 そのうえ、とても空腹でした。


「腹、へった……」


 餓えれば餓えるほど、彼は頭が回らなくなっていきました。

 ただ、「食べなければ死ぬ」という事はわかっていました。

 彼は生きるために盗みに入る事にしました。

 近くの牧場にこっそりしのびこみ、当面の食料を手に入れようとしたのです。

 空きっ腹に久しぶりのまともな食事を入れる事には成功しました。ただ、食べるのに夢中になるあまり、牧場主に見つかって追い回される事になりました。


「ひ、ひぃっ……!!」


 ローズは必死に逃げました。

 牧場主は子供相手でも容赦なし。冒険者はろくでなし。殺してでも対処しなければならないと考え、銃まで使ってきました。

 ローズは夜闇に紛れる事で一時的に牧場主を撒く事に成功しましたが、まだ牧場に敷地から脱出できたわけではありません。焦りつつ、必死に逃げていると――。


「ぎィやァッ!!?」


 イバラのようなものが、彼の身体を切り裂いてきました。

 それは有刺鉄線でした。

 銃と同じくエルドラドの異世界そとからやってきた技術それは、柵需要の高まる農場や牧場に普及しつつありました。

 ローズは運悪く――あるいは運良く――それにぶつかってしまい、新たな生傷を作る事になりました。それでも何とか這々の体で逃げた彼は、この出会いによって運命を切り拓いていきました。


「魔物相手にアレを使えばいいんだ」


 何とか牧場から逃げたローズは、翌日も夜闇に紛れて牧場に忍び込みました。

 そして有刺鉄線をちょうだいし、それを冒険者稼業に活かす事にしました。


「自分でなんとかするしかないんだ」


 彼は自分のための武器を2つ用意しました。

 1つは有刺鉄線。もう1つはナイフと棒で作った粗末な槍でした。

 その2つを頼りだけを迷宮に潜るのは自殺行為です。それはローズ自身もわかっていたため、彼は他の冒険者集団の陰にコソコソ隠れて活動しました。


「いた。あの1匹だけなら、なんとか……」


 ローズは迷宮の一角で1匹だけ孤立している魔物を見つけました。

 その魔物に気づかれない程度まで近づいた後、コイル状に巻いた有刺鉄線を狭い通路に1つ、2つ、3つと設置していきました。

 一見、頼りない見た目の障害物ですが、子供のローズでも持ち運びやすいという利点がありました。実際に有刺鉄線で生傷を作った彼は、「これは魔物にも使える」と踏んでいました。

 その予想は見事に的中しました。


「こっちだ! こっちに来い……!」


 ローズは有刺鉄線の柵の奥で――鉄条網の奥で魔物を呼びました。

 手頃な獲物を見つけた魔物は、放たれた矢のように向かってきました。

 1つ目の鉄条網は難なく飛び越えられましたが、それもローズの計算のうち。

 飛び越えた先には2つ目の鉄条網があり、魔物は鉄のトゲが牙の如く食いつきました。魔物が藻掻けば藻掻くほど、鉄のトゲは食い込み、鉄条網はその身に絡みついていきました。

 それだけでは致命傷にはなりません。

 鉄のトゲは小さなもので、魔物の皮を切り裂く程度のものでしかありません。

 それでも――。


「動きは止まった……!」


 小さなローズが粗末な槍を刺すための隙は、十分にありました。

 彼は震える手で慎重に槍を突き出し、魔物の急所を抉りました。魔物は即死せず、鉄条網に絡まったまま必死に暴れ回りました。

 魔物が暴れた表紙に鉄条網の一端がローズの頬を裂きました。それでも彼は槍を強く握りしめ、その先端を深く、深く、ねじ込んでいきました。


「し、死ねぇっ……!!」


 狭い通路の中。両者の荒い息がしばらく響いていました。

 そのうち1つが消えた後も、少年の「ふーっ、ふーっ」という荒い息が響き続けました。




「これなら、おれでもやってける……!」


 有刺鉄線を――鉄条網を使った戦術は成功しました。

 ローズは鉄条網に絡まって死んだ魔物の死体を解体し始めました。解体中も自分の周囲は鉄条網に守らせておき、震え続ける手で魔物を解体しました。

 すると――。


「金だ!!」


 魔物の身体の中から、一欠片の金が出てきました。

 迷宮の魔物の身体の中には、時折、金が紛れている事がありました。冒険者の雑用係をしていく中で、魔物の解体も行ってきたローズは久々の輝きにうっとりしました。

 人が倒した魔物ではなく、自分で倒した魔物から金が手に入った。

 彼は金だけではなく、「自分で魔物を倒した」という大きな自信を手に入れました。


 初めての成果としては大成功と言っても過言ではないそれを――金の欠片を手に入れたローズは、ひとまず街に帰る事にしました。

 興奮で身体が火照り、「まだ戦える」という気持ちも抱いていましたが、無理は禁物と考えたのです。この判断は正しいものでした。

 彼は迷宮街に戻り、金の欠片を商人に見せつけました。

 商人は「こいつ、どこから盗んで来たんじゃ……」という考えが過りましたが、返り血塗れのローズをよく見て――にわかには信じがたいものの、少年が魔物を倒したのかも――という考えに改めました。

 ただ、相場より少し安く買い叩いてきました。それでもローズにとっては当面の生活費となるため、内心歓喜しながら取引を終えました。

 ローズはくたくたの身体を引きずり、宿屋に行きました。直ぐにでもベッドに寝転がって休みたかったのですが、宿屋の主人は――返り血塗れの少年を見て――先に水浴びしてこいと命じました。

 ローズは面倒くさがりながらも身体を洗った後、久しぶりに屋根の下で眠りました。そのまま数日、寝込む事になりました。

 有刺鉄線で出来た傷口から、魔物の持っていた細菌が入り込んだのです。元々弱っていた幼い身体は高熱に襲われ、彼は死にかけました。

 高熱の中、ローズは不思議な夢を見ました。

 エルドラド大陸のあちこちを狼の群れが闊歩し、人々を食い荒らす夢でした。迷宮からあふれ出てきた無数の狼達相手に、人々は為す術もありませんでした。狼達には剣も銃も通用せず、金を媒介にした魔法は最初から存在しなかったように使えなくなっていました。

 狼達は大陸中にあふれかえり、ついには世界の壁すら食らい、異世界へと旅だっていこうとしました。それを止めようとしているのか、翼の生えた人々がやってきたものの、狼達は数に物を言わせてそれすら突破していきました。

 群れの一部は、へたりこんでいるローズのところにもやってきました。


「お……<大神>さま、お助けを――」


 へたり込んでいるローズに対し、狼達は値踏みするような視線を向けてきました。

 獣臭を撒き散らしながら近づき、ローズの顔をべろりと舐める狼もいました。そうしていると、狼達の足下から黄金色の体毛を持つ小狼が跳びはねながらやってきて、その子もローズをペロペロと舐め回しました。

 小狼は満足げに「あにゃぁ♪」と鳴き、ローズの手のひらをペロリと名寝ました。するとローズは、手のひらに売ったはずの金の一欠片が戻ってきている錯覚を得ました。その金を見ながら、「そもそもなんで、魔物の中から金が出てくるんだろう?」という疑問を抱きました。

 その疑問は熱が冷めていくのと共に溶け、消えていきました。

 彼は何とか生き延びました。宿屋の主人が比較的良心的だったため、熱にうなされている間も水や食料を用意してくれたのです。それなりにぼったくられましたが、ローズの手元には数日分の生活費は残りました。


「また迷宮に潜るのか? 今度こそ死ぬぞ」

「何とかなるよ。おれなら出来る」


 疑問は溶けても、自信はなくなっていませんでした。

 ローズは有刺鉄線を使った鉄条網を使えば、小柄な自分でも魔物とやり合える確信を得ていました。

 さすがに何度も死にかける事になりましたが、ローズの考えはそれなりに正しいものでした。

 鉄条網が通用しないほど頑丈な魔物もいますが、相手を選びさえすれば無傷で魔物に勝つ事も出来ました。

 まだまだ未熟なローズは何度も死にかけました。死線をくぐり抜けるたび、強さと自信を手に入れていきました。

 彼は粗末な槍を捨て、武器を新調していきました。銃も持つようになりました。迷宮で銃を使うのは「得策ではない」と言われていたものの、彼は「魔物達が押しかけてきても鉄条網で対応すればいい」と考えていました。

 彼はさらなる力も手に入れました。


「…………? 瞳の色が金色になってる……?」


 ある日、彼は宿屋にあったくすんだ鏡を見て気づきました。

 自分の瞳の色が、黄金のように金色になっている事に。

 宿屋の主人もそれに気づき、「良かったな」と祝福してくれました。


「お前も<大神おおかみの寵愛>を受ける身になったのか。やったな」

「なにこれ、病気?」

「魔法が使えるようになった証さ!」


 金の瞳となったローズは、魔法という武器も手に入れました。


「もっと強くなろう。強くなれば、もっと稼げる」


 鉄条網は相変わらず効果的だった。

 周囲の冒険者達には「男らしいやり方ではない」と蔑んできたものの、ローズが鉄条網を使った戦術で頭角を現していくと、コソコソと自分達も使うようになっていった。


「おれはおれの群れを作ろう」


 ローズは自分の考えに――鉄条網を使った戦術に――賛同する仲間を集め始めた。

 ローズが率いる群れは――冒険者集団は、当時の冒険者業界ではまだ珍しかった鉄条網を使った戦術により、大きく稼いでいった。群れの規模もますます大きくなっていった。


「さすがはローズの兄貴! 大神の寵愛を受けている御方だ」

「ハッ……! 何が神だ、これは全ておれの力だよ」


 ローズはかつてのひもじい日々が嘘だったかのように、豊かな暮らしの中にいた。

 だが、彼の欲望は尽きなかった。もっと稼ぎたい。もっと欲しい。さらに多くの富を。さらに多くの贄を。女を抱いて、もっともっと贄を増やせ。そんな考えが頭を支配していた。

 最初に抱いていた願いなど、彼はもう忘れてしまっていた。

 彼はエルドラド大陸を走り回り、多くの迷宮で活躍した。

 彼の活躍により、冒険者業界で鉄条網を使った戦術は広く親しまれるようになった。ローズは「誰も彼もおれのやり方を真似しやがって」と面白くなさそうにしつつも、鉄条網戦術の第一人者になった事を褒め称えられると満足げに笑っていた。

 帽子にまで有刺鉄線を巻き、それをトレードマークにしていたローズは最後の最期まで冒険者業界の第一線に立ち続けた。引退しても悠々自適な生活を送れるほど稼いでもなお、彼は迷宮の魅力に取り憑かれ続けた。


「くそッ……! 出遅れちまったじゃねえか!! この迷宮の金もおれのものなのに!!」


 ローズは獣のように目を見開き、いつものように迷宮に潜り始めた。

 その日挑んだ迷宮は、既にそれなりに踏破されている迷宮だった。彼は情報収集担当の少年冒険者が鈍くさいから後塵を拝する事になった――と苛立ち、群れの長として威厳を示すためにも少年冒険者を折檻した。

 やり過ぎて殺してしまったが、死体は魔物に食わせてしまえばいいと思い、迷宮の通路にうち捨てた。部下達は青ざめつつも、長への畏敬を深めた。


「あにゃぁ~ん」

「おい。だれだ、だれかおれに文句を言ったか? おれに逆らうのか!!?」

「い、いえ……! 誰もボスには逆らいませんよ!!」

「そうだ。おれはボスだ。群れのボスだぞ!! 逆らうな!!」


 ローズは尖り始めた歯を見せながら部下達にすごんだ後、気を取り直して迷宮の奥へ奥へと進んでいった。


「アァ、におう。におうぞ。金のにおいだ」


 冒険者稼業を続けるほど、ローズは凶暴になっていった。

 昔のように考えて動くのではなく、本能的な戦いを好むようになっていた。

 癇癪を起こすことも多くなった。ただ、部下達は誰も彼に逆らわなかった。

 部下達はローズを恐れていたが、従っていたのはそれだけではない。ローズは優れた嗅覚を持っていた。彼が目指す方には必ず、金銀財宝があった。

 暴君だろうと、付き従っていれば食いっぱぐれる事はない。部下達はローズに恐怖しつつも、彼に付き従い続けた。この日まではそうしていた。


「ボス! もしかしてこれ、囲まれてませんか……?」

「ビビるな。この程度の群れ、どうとでもなる」

「でも、この数は……!」

「おれの群れのほうがつよい。しょうぶだ!!」


 迷宮の奥地で、ローズ達はすっかり包囲されてしまった。

 音も無くやってきた四足歩行の魔物の群れが、ローズ達を取り囲んでいた。

 魔物達は仕掛けてこない。闇の中から値踏みするように視線を向けてくる。

 普通、魔物達は人間に気づくと狂ったように襲いかかってくるものだ。その時の群れは、いつもとは明らかに違った。数も多い。ローズの部下達は動揺し、瓦解していった。


「まて。にげるな。殺すぞ!!」


 恐怖に耐えかね、1人の部下が逃げ始めた。

 鉄条網の設置を放り出し、包囲の穴らしき場所に向かって逃げ出した。

 1人逃げ始めると、多くがそれに続いた。ただ、彼らは生きて帰れなかった。包囲の穴に見えた場所の奥には、さらに多くの魔物達が待ち伏せていた。


「逃げるな。逃げるな!! くそっ! くそッ!!」


 ローズは逃げる部下の背に対し、銃を向けた。そして撃った。

 だがそれはさらなる混乱を生むだけだった。狂乱した部下達は獣のように走り回り、銃声を聞きつけた魔物がさらに多く押しかけてくるだけだった。

 ローズは死に物狂いで戦った。

 四足歩行の魔物達が見守る中、銃声に引き寄せられてやってきた別の魔物達と戦い、片腕を失った。それでも何とか、彼は包囲から脱することに成功した。


「はっ……! はッ……!!」


 彼は逃げた。

 迷宮の出口に向け、必死に走った。

 暗闇の中、誰かがついてくる。

 それが部下達ではないのは明らかだった。

 音もなく、しかし獣臭を放ちながら、何かの群れが近づいてくる。

 ローズは久方ぶりに恐怖した。だがもう、何もかも手遅れだった。


「ぎィやァッ!!?」


 イバラのようなものが、彼の身体を切り裂いた。

 それは有刺鉄線だった。

 ローズの活躍により、エルドラドの冒険者業界では鉄のイバラが広く普及した。

 広く普及したからこそ、迷宮内に鉄条網が放置される事も珍しくなくなった。それらは魔物だけではなく、冒険者に対して牙を剥く事も珍しくなくなっていた。


 鉄のトゲは小さなもので、ローズの肉を噛む程度のものでしかない。

 致命傷にはほど遠い。

 ただ、彼の命はそこで潰えた。何かの群れが血肉を、魂を分け合う音がしばし響いていたが、その音もやがて消えていった。迷宮に静寂が戻り、また1つの贄が捧げられた。


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