契りの花、朧に咲く

古の神々と人とが寄り添い、神託と祈りの中で共に暮らしていた神霊の国・日紫。
この国では、山河に宿る神々の力が国土を守り、王権を支え、民に豊穣と平穏をもたらしていた。
しかし時代の流れと共に神の力は次第に薄れ、人々の信仰も儀礼的なものへと変わっていった。
今や神々の声は遠くなり、国を覆う守護の結界さえも徐々に揺らぎを見せていた。

そんな不穏な空気が漂う中、王家に代々仕える「神使」の家系に生を受けた青年・健太は、
本来は特別な存在であるはずの「神子」でありながらも、形式だけの儀式要員として静かに日々を過ごしていた。
力もなく、役目も曖昧で、自らの存在意義さえ疑い始めていた彼に、ある日突然王命が下る。
「契約結婚によって神力を覚醒させよ」――。
それは血筋に秘められた神の魂を目覚めさせ、国の危機…続きを読む