国に選ばれた勇者の俺、パーティーにいらないと思って追放した万能士《レンジャー》は、実は超優秀なチートスキル持ちでした

@h-ar-u

1章 追放とハーレム、そしてチート

第1話 追放

「お前はパーティーに要らない!今すぐ出て行け!」


 それは、Sランククエストを終えた夜のことだった。


 焚き火の灯りがゆらゆらと揺れる中、俺たちのパーティーの万能士レンジャーであるアルター・モーランに言い放った。


 あいつとの関係はずっと目の上のたんこぶだったんだ。


 こいつさえいなければ、もっと快適な冒険ができると思ってた。


 やっと……やっとスッキリする。



「どうしてだよレイン!今までも一緒にやってきたじゃないか!」


 アルターは焦ったように言う。だが、俺の心はもう決まっていた。


「……確かにな。俺とお前、それにフィリアやエルセーヌもパーティ結成時から一緒にやってきた。けどな、お前の能力はもういらないんだよ」


 俺とアルター、そして回復士ヒーラーのフィリア・スーベル、魔導士のエルセーヌ・マーガレットは同じ街で育った幼なじみだ。


 俺たちの住む国、エリラント王国では16歳で大人として認められ、各街の教会で天賜てんしと呼ばれる固有スキルを与えられる。


 天賜にはたくさんの種類があり、フィリアの《回復聖》の天賜やエルセーヌの《魔法聖》の天賜などの冒険者向きの天賜から、《大工》の天賜や《鍛治》の天賜などの職人向きの天賜も存在し、俺たちは自分の天賜にあったジョブをすることがほとんどだ。


「でも、俺の《格納》は便利だろ!これからも荷物持ちでも何でもやるし…」


「確かにお前のその固有スキル、《格納》の天賜はとても便利だと思うぜ。だがな、荷物収納系のスキルはクエスト報酬の補助魔法で習得したし、別にいなくてもいいんだ」


 そう、クエスト報酬でもらった魔法で荷物収納は間に合う。

 アルターに頼る理由は、もうどこにもない。




「ちょっとレイン!流石に強く言い過ぎだと思うよ」


 フィリアが言った。


 彼女は銀色の髪にボブカットでスタイルも良い。


 おまけに、冒険の途中に寄るどこの街でも声を掛けられるほどの美人だ。


「でもね、アルター。レインの言い方はたしかにひどいけど、私もパーティー離脱は考えた方がいいと思う」


「そんな…フィリアまで…」


「だって危険じゃない!私たちは王国に選ばれた勇者のレインがリーダーを務める勇者パーティーなんだよ?扱うクエストも比較的高いランクよ。危険なクエストで私でも治療できない大ケガを負ったらどうするの?」

 

 そう。


 俺は国に選ばれた勇者。


 このエリラント王国では10年に1度に勇者が現れるとされ、その勇者の証である《剣聖》の天賜を与えられたのが俺なのだ。


 それに、天賜とクエストにはランクがあり、パーティーで行えるクエストが決まる。


 クエストのランクと同じランク以上の天賜を持つ人間がパーティーに2人以上いないとそのクエストには参加できないのだ。


 俺はもちろんSランク。


 フィリアやエルセーヌの天賜もその分野では最強クラスを表す「聖」の文字が含まれている天賜。


 つまりSランク。


 アルターの《格納》の天賜だけCランクなのだ。


 パーティーは4人が原則だから、もう1人SランクでSランクパーティーを作りたいのが俺の望みだ。


 それに、俺は国に選ばれた勇者。

 どこでもモテモテだ。


 本音を言えば-Sランクの美女と新しいハーレムパーティーを作りたい、なんてゲスな願望があるのは内緒だ。


 もし本音を漏らしたら、フィリアにもエルセーヌにも張り倒されるに決まってる。

 だから、あくまで“お前のため”って体で追い出すんだ。アルターを追い出して、もう1人美女をパーティーに誘ってハーレムを作ろう。


 

「確かに。俺のせいでみんなに迷惑をかけるのは申し訳ない。」


「ごめんねアルター。別れるのは寂しいけど、アタシもこれ以上アルターに危険を冒してほしくない。それにパーティーから離れても、共同クエストとかでまた会えるかもだし…」


 エルセーヌは1番アルターと仲が良かった。


 その彼女が賛成なら、もう追放だな。




 エルセーヌは黒髪でスレンダーな女の子。


 フィリアとはまた違う魅力がある。


 これからパーティーに入れる美女はどんな子がいいだろうなぁ。


 今から楽しみだ。


「というわけだ、アルター。お前とはここでお別れだ。今までありがとうな」


「うん。俺もみんなを不安にはさせたくない。今までありがとう。またどこかで会おうね」


 こうして、俺たちはアルターと別れた。




 これが、すべての始まりだったなんて-このときの俺は、知る由もなかった。




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お読みいただき、誠にありがとうございます。

この作品の感想やブックマーク、評価をして下さるとありがたいです。筆者が泣いて喜びます。



また、私の別の作品…

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ご一読いただければ幸いです。


よろしくお願いします!

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