第1章 お宝発見前夜 2
「ア~、ア~、ウ~、ウ~、本日は晴天なり!本日は晴天なり!」
「船長、空、曇ってますけど?」
ンスが不思議そうな顔で、トドマルを見た。
「ンス君、君は確か一年前、君のお親父さんが俺にアホな息子をこの金で一人前にして下さいと頼んで、このマフィン団に入ったんだったよな」
「そーすけど。親父がアホ息子はアホ船長の元が一番育つと言ってましたから」
「お~、その話はきちんと筋が通っている!流石に君の
「それで船長!その話と本日は晴天なりとはどんな関係が有るンスか~?」
ンスが更に不思議そうな顔でトドマルを見た。
「要するにだ!君は新人だから知らなくても仕方が無いと言っているのだ。本日は晴天なり!は、伝統有る海賊の船長が大演説を行う時の第一声なのだよ!」
トドマルは、子供に言って聞かせる様に優しくンスにその事を教えた。
「船長、今から大演説をぶつンスか~?でも
「あっ、今のはリハーサルね、現在、リハーサル中な訳」
「そうなンスか~?」
「ンス君、君に船長命令を下す!野郎共全員を、甲板に勝手に集めて来やがれ!」
「へ~い」
ンスは、素直に野郎共を集めに行った。
「お~い、船長が今から晴天をぶつらしいから、全員、甲板に勝手に来やがれ!って言ってるよ」
やがて、野郎共はのろのろとした足取りでババッチ号の甲板に勢揃いした。
トドマルは、野郎共全員が集まった事を確かめると大演説を始めた。
「ア~、ア~、ウ~、ウ~、本日は晴天なり!本日は晴天なり!」
「ねっ、船長が晴天をぶったでしょ!」
ンスは得意そうな顔付きで、隣に突っ立ていた素潜り名人ヘオレの小脇を突いた。
「かくカク、しかジカ、トドのつまりの理由で、明日早朝、我々は輸送船を襲って彼らの酒を強奪する!」
トドマルの長い大演説も終わりを迎えていた。
「船長!明日、そんなに都合良く輸送船が見つかりマスカネ~?ゴッドランド島の近くは海賊が一杯、と言う事は襲われる危険も一杯、そんな所に輸送船がわざわざ来マスカネ~?」
マスカネー・クビフール・コケッシ三世は、トドマル船長にそうに質問した。
「良い質問だ、マスカネー君!良い質問だが、君は何で船長の俺よりそんなに偉そうな名前なんだ?」
トドマルは、マスカネーの質問を褒めたが、俺より偉そうなの「くだり」の所では眼が笑っていなかった。
「船長!何しろ、うちのお袋が貴族様のナニのナニなもんで、大層な名前を貰っちゃたんですよ~」
「まあ良い」
トドマルはそう言うと、明日、「襲う輸送船が見つかる」根拠を述べた。
「普通の大型輸送船の場合は、確かにマスカネー君の言う通りだろう!だが超小型輸送船の場合はどうだ?」
野郎共はハテ?と言う表情で互いの顔を見合わせた。
「超小型輸送船を襲う様なチンケな真似は、ゴッドランドの海賊は恥ずかしくてしないだろう?」
トドマルは 野郎共に噛み聞かせる様に話した。
「俺っち達は、恥ずかしく無いンスか~?」
ンスがトドマルに訊ねた。
「勿論、恥ずかしく無い!何故なら我々はゴッドランドの海賊では無いからだ!」
トドマルは左手で空を指差した。
「海賊で無いんだったら、船長、若しかして俺っち達はコソ泥って事デスカネ~?」
今度は、デスカネ・シマッサアが呟いた。
「デスカネ君、言葉を選び給え!」
「だってぇ・・・」
「俺達はボスニア湾の海賊だって事!だから、ゴッドランドの海賊共とは恥ずかしさの基準が違うのさ」
「基準が違うのデスカネ~?」
「そうだ。敵の海賊を懲らしめる行為は、賞賛されこそすれ非難はされない」
そういうと、トドマルは左手で空を指差す、いつもの決めポーズを再度決めた。
だが甲板には、ポカンとした野郎共のアホ面が並んでいた。
「だから~!ゴッドランド近海を航海している超小型船は、ゴッドランドの海賊向けに商品を売りに来たり、注文が有った物を届けに来たりしている船だろうが」
「な~るほ~ど」
野郎共の中では一番頭が切れるカスチーン・ヨイチハンが頭を縦に振った。
「海賊御用達の輸送船から積み荷を奪えば、奴等が困るって事ですね」
「ピンポリョピン!そ~のとお~り!」
「でもそんな船を襲って横取りしたら、ゴッドランドの海賊連中が怒りませんか?」
デスガニ・シマッサアは、自分がトドマルに提案した作戦の事が、急に心配に成ってトドマルにそう訊ねた。
「おお、流石は心配性のデスガニ君!奴らは激怒するだろうね」
「じゃあ、俺っち達が危ないじゃ無いですかぁ?」
「チッチッチッ!デスガニ君、我々が海賊から追われて、これまで全て逃げ切ったと言う事実を忘れたのかね?」
「まさか。トンヅラのトドと言えば海賊仲間では超有名ですから!」
「だから、心配は要らないの!じゃあ、これからこの作戦の配役を発表しま~す」
「船長!ここは配役より、任務遂行者と言った方が恰好良く無いですか?」
デスガニ・シマッサアはトドマルに提案した。
「この作戦は
トドマルはそう断言すると、威厳に満ちた声で今回の「作戦と言う名の芝居」の配役を発表した。
「は~い、野郎共、静粛に願いま~す!先ず、小さな小さな輸送船は全員で探します。見つけた野郎はハ~イと返事をして下さい。そして襲う船を決めるのは俺の役で~す!」
「次に、このババッチ号を相手の船に横付けして、銅鑼を鳴らします。その銅鑼を鳴らすのはあなた達、そう、音楽担当のシマッサア・ブラザーズです。ここまでは良いですね?」
し~ん。
「次に相手の乗員と船の安全を保障する交渉担当はトウシロウ君です。そして交渉相手としてその輸送船の船長を指名して下さい」
し~ん。
「この時、相手の乗組員もきっと全員が甲板に集まる事でしょう。ここまでは良いですか?」
し~ん。
「で、次、これはとても大切!残りの野郎共は全員エキストラだけど演技が必要です。この時、只でさえ悪い人相を更に悪くすると共に相手の乗組員を睨みつけます。ここで銅鑼テイク2の音が入ります。ここまでは良いですねぇ?」
し~ん。
「それから、トウシロウ君が相手の船長に、積荷の酒の半分を俺達に無料で分けるようにお願いします。この時、駄目元で、やっぱお酒飲む時はつまみが要りますよねっとか言って、おまけとしてつまみも少々貰える様に懇願します。ここまでは良いですね?」
「あのう、船長。その時、俺達の団の名前を相手に告げなくても良いんですか?」
ヘオレがトドマルに質問した。
「そんな事したら、俺達が何者かがバレちゃうじゃん!」
「フツー、海賊は船を襲う時、相手を皆殺しにはせずに、団名を名乗って、生き残った男達が港に戻ってその団の事を皆に吹聴させるのでは?それでその団の悪名が天下に鳴り響きますよね!」
「ヘオレ君、我らマフィン団はそんな姑息な真似はしないの。団が有名に成った所で敵が増えるだけで何の得も無いし。我らのモットーは、ひっそり、もっそり、コソコソと!だ」
「へ~い」
ヘオレは、トドマルの言葉に納得した様子だった。
「じゃあ、続き、行くよ!」
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