キネマ

夏音

フェアリーテイル

こどもの頃

図書室の片隅で見つけた物語は

とても悲しくて

残酷な物語だった


なぜ主人公の想いは

努力は報われないのか

どうしてこの世界はこんなにも理不尽なのか

家に帰っても

思い出す度に泣きそうになるのをこらえてた


でも

もしあの物語がハッピーエンドだったなら

今もこんなにも心に残っているだろうか？

あんなにも深く

主人公に寄り添えただろうか？

人にやさしくあろうと思えたろうか？


もし物語の持つ意味のひとつが

人生の一部になることなら

きっと今の自分を形作っているもののひとつが

あの悲しい物語なんだと思う

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