それでも何かを書いている
自己否定の物語
1話完結
何度も画面を見返す。
数字は変わらない。
フォロー4、評価0、応援0、PV9。
虚しさが胸を締めつける。
誰かが指を止めてくれるわけじゃない。
コメントも反応もない。
それでも、僕はまたタイピングを始めようとする。
なぜだろう。
「意味なんてないのかもしれない」
けれど、書かずにはいられない。
指先が震え、文字が浮かぶ。
小さな声が頭の中でささやく。
「誰かに読んでほしい」
だけど、それ以上に。
「自分の声を聞きたい」
孤独の中、机の灯りだけが僕を照らす。
書くことの重さと向き合いながら、僕は静かに続ける。
窓の外は静まり返っている。
世界は動いているのに、僕だけが止まったまま。
手が動くと、頭の中のざわめきが少しだけ静かになる。
タイピングを始めると、世界が遠くなるような気がする。
「誰かに届かなくてもいい」
そう思いながら、ただ文字を紡ぐ。
でも心の奥では、まだ叫びがくすぶっている。
「読んでほしい」
だけど、それは叶わない願いだと知っている。
数字の冷たさが、僕を押しつぶそうとしても。
僕はここにいる。
そして、書き続ける。
昔のファイルを開く。
そこには、無数の文字が並んでいた。
誰にも見せられない、僕だけの秘密の記録。
子どもの頃、言葉にできなかった感情を
ひとり静かにキーボードに打ち込んでいた。
頭の中のざわめきが少しだけ落ち着いて、
今の僕と、僕だけの会話が始まる。
書くことは、誰かに読まれるためじゃなかった。
ただ、自分の心の声を確かめるための行為だった。
あの頃の僕は、まだ孤独だったけれど、
画面と向き合うことで、少しだけ救われていたのかもしれない。
画面の光が静かに部屋を照らす。
指先がキーボードの上を滑るたび、
ざわついていた頭の中が少しずつ整理されていく。
書くことは、僕にとって唯一の逃げ場だった。
誰にも話せない感情や、伝わらない想いを、
文字にして吐き出す時間。
だけど、今は違う。
数字の重みが僕を縛りつける。
評価ゼロ、応援ゼロ。
画面の端に並ぶその数字が、
心の叫びをかき消していく。
それでも、キーボードを叩く音が心地よくて、
「書くこと」が僕を繋ぎ止めている。
僕はまだ、ここにいる。
投稿した小説の数字が気になる。
フォローも少ない、評価もつかない。
画面の隅で僕を見下ろす数字たち。
「評価ボタンを押してほしい」
そんな願いが頭をよぎるけど、簡単にはいかない。
数字に振り回される自分が嫌になる。
でも、それを否定できない自分もいる。
「誰かに認められたい」気持ちと、
「そんな気持ちは間違っている」葛藤が交錯する。
コメントもなく、静かな虚無感に包まれて、
僕はまたキーボードを叩く。
数字じゃ測れない価値があると信じたい。
だけど、まだその答えは見つからない。
数字に左右される日々の中で、
僕はひとつの真実に気づいた。
「ここにいる僕は、確かに存在している」
誰も見ていなくても、評価がなくても、
僕はこの画面の前で生きている。
タイピングを続けると、世界が少しだけ静かになる。
頭の中のざわめきは、確かに和らぐ。
数字も評価も関係ない。
ここで僕が自分と向き合うことこそが、
書くことの意味なんだ。
今日もまた、僕はキーボードを叩く。
それがたとえ小さな声でも、確かな僕の声だから。
それでも何かを書いている 自己否定の物語 @2nd2kai
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