エピローグ
第30話 法水麟音大勝利! 希望の未来へレディー・ゴー!
……………
「――というわけだよ。これでこの事件の話はお終い」
私がそう語ると話を聞いていた少年はつまらなさそうに視線を正面に向けて言う。
「今日の話は、いつもと違って明らかに嘘じゃないですか」
「ククク。そう思うかい? いつもと変わらない筈なんだがねぇ」
私の言葉の後、少年は私の方へ目を向けて訊く。
「そう言えば、お姉さん。名前、聞いてませんでしたよね」
「そうだね。いう必要もないし、訊かれてもいなかったから」
「今の話で出てきた人、学園、全部嘘なんでしょ?
まるでお姉さんがその探偵のようだったけれど、この街で法水麟音なんて人は知らないし、私立パスツール女学院なんて学校もない。女子高はあると聞いてるけど、話とは全然違うよ。
それに今まで事件のような噂もないし、そんな探偵が居たらすぐに全国に行かないまでも話は広まると思うからね」
「クックック、痛いところを突くね。
だが、話の中であった通り、事件は人の名前や空間さえも歪ませる。
もしもこの世界が、その事件が終わった影響ですべてが改変された世界だとしたら?」
「――それは……。ナンセンスだよ」
少年は困ったような表情で、やや呆れ交じりにそう語る。
「ハッハッハッハ! そうだねぇ。実にナンセンスな話だ。
でも話というのは得てしてそう言うモノじゃあないかね?
この世界に神話や伝承があり、それが一種の類型を以て全世界に類例や重複が見られる。また、そうした迷信は一種の事実として語られてきた。
つまり人という生物は、
「そんなふうに煙に巻こうったってそうはいかないよ。今日の話はちょっとやりすぎ。特に、登場人物の支倉がニンジャの力を持っているなんてのはひどすぎるよ。僕の評価はそれでおしまい」
「その歳で何かを確定させるのは損だと思うが、まあ、それも自由さ」
私は立ち上がり、公園の入り口の方へと歩いて行く。そこには私と同じ学園の服を着た私の友人が現れる。ニンジャの末裔らしい
私の背後から驚きの声が聞こえる中で、目の前の彼女は私に笑顔を向けて言う。
「また散歩ね。寮まで帰ろ、麟音」
「ああ、だが今日はまたしても事件に逢うと思うよ。さっきパトカーが走っていた」
私の名前?
それは明かせない。
そうしたらこの物語が事実だったか、嘘だったか、どちらかに傾いてしまいそうだから。
どんな解釈もここでは許される。終わった話を拾い上げ、そこに書かれたことに思考を巡らし、
そうすることで、『リンフォン』や『黒死館』のようなナンセンスも深みあるホラーや呆れ交じりの笑い話、深淵なる哲学や熱を帯びた創作論へと変貌するのだ。
これを見て、聴いて、あるいは読んでいる君たちの手によって。
【おわり】
リンフォン殺人事件 臆病虚弱 @okubyoukyojaku
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