最終章 逆襲とガンダムによりて城は崩れ去る
第25話 逆襲のガンダム
……………
異常な物理条件で存在していると思しき玄関内部の空気を、弩矢は切り裂いて進む。それは赤い彗星の如く、光る『尾』を持っていた。
そこにいる全員の意識の外より飛来したそれは
「危ない!」
『ビャッガシィッ』
支倉が異常な脚力に物を言わせ床を蹴り壊すほどの跳躍を行い飛行する弩矢に追いついた挙句、浮き上がった
動揺した様子の
「麟音、何を……。まさか、さっき言っていた黒幕に繋がる証拠?」
「さぁどうだろうか。君、これをどう思う? 赤い彗星より放たれし矢、長さからして
彼女が指さす開かれた玄関扉には焼け焦げた痕がでかでかとマークが示されている。それは両端に上向きに伸びる角のようなデザインがある円に下向きの矢が突き刺さっている様なマークである。
だが、そのマークの形状は何か違和感を覚えさせるものがあった。見たものすべてが各々、一抹の異物感を覚えているのだ。
そんな中、熊城が感嘆の声を上げる。
「こ、これは……!? まさか……。いやそれよりも、何か、違和感が……?」
「ジオン公国。このマークには派生形が多数存在するためか、目を離すたびに見えるマークの形状が若干変化しているねぇ。
ともあれ、これで黒幕のお膳立てはすんだわけだ。物語には伏線が要るという考えがある。そして物語のそうした演出はより多くの
わざわざこんな大仰な事をしなくともこれが
一度、部隊から退場したこの事件で最もスポットライトが当たるべきだった人物にして、
「なに!?
「
もっと考察の発展性があるのはこの二人のうち片方が黒幕であるという点だ。
そうすればさっき言ったように『この事件で最もスポットライトが当たるべきだった人物にして、
犯人は自らをシャアになぞらえ、赤い彗星として暗躍したのだよ。この逆襲劇を完遂するために」
「しかし……。この事件はアニメじゃない! そのような推理をしたとて、犯人から逃れることは……」
「彼は今、ここに現れる。この物語はそうでなくては盛り上がりもクライマックスも逸してしまう。ここで彼がどんでん返しをしなくては、単なるスクラップブック。名作の切り貼りをしているだけだと批判されてしまうよ。私はそのスクラップブックこそが全ての創作の本質であると思っているが世間と『彼』はそうでないようだからねぇ」
彼女の言葉が終わると同時に、館は大きく揺れる。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』
熊城刑事は気絶した状態の
「地震だ! 倒れているものの頭を守れ!」
部下の刑事もその指示に従い動く。
そして、そのせわしない動きの中で廊下の方から一人の男が走ってきた。
その男はスーツを身に纏い、柔らかな金髪を持ったサングラスで瞳を隠しているが見覚えのある顔。
「解決するな! この席を借りたい!」
それは
「被疑者の方と、この私を見ている警察の方には、突然の無礼を許して頂きたい」
彼はサングラスを取り、その青い瞳を晒す。
「私は私立パスツール女学院の
私はこの場を借りて、パスツールの遺志を継ぐ者として語りたい。もちろん、パスツール女学院理事のシャアとしてではなく、パスツール氏の子孫としてである。
パスツールの遺志は、魅宗櫓城家のような欲望に根差したものではない。パスツールがパスツール女学院を作ったのでは無い。
現在、
人が
我々は学院を人の手で汚すなと言っている。
博士たちは長い間、この学院図書館と言う揺り籠の中で戯れてきた。しかし!
時は既に彼らをこの場所から巣立たせる時が来たのだ!
その後に至って何故教授同士が戦い、学院を汚染しなければならないのだ!
学院図書館を学生の揺り籠の中に戻し、教授陣は
この玄関さえ汚損に飲み込まれようとしている!
それほどに学院予算は疲れ切っている!
今、誰もがこの美しい学院を残したいと考えている。
ならば自分の欲求を果たす為だけに、学院図書館に寄生虫のようにへばりついていて、良い訳がない。
現に教授陣は、このような時にも戦闘を仕掛けてくる。見るが良い!」
その時、館が大きく揺れる。玄関扉が揺れの中自然と開く先に見えるのは奇妙な光り輝く文字列と紋章。何らかの呪文のような声。
『外部』から何らかの儀式が為されているというのか?
彼の演説が真実であるというのか?
動揺の拡がる中で、安綱紗赤を名乗る彼は熱を帯びた演説を続ける。
「この暴虐な行為を。彼らはかつての教師たちから膨れ上がり、逆らう者は全てを悪と称しているが、それこそ悪であり、学校を衰退させていると言い切れる!
事件を御覧の方々はお分かりになる筈だ!
これが教授陣のやり方なのです!
私が事件を武力で制圧したのも悪いのです。しかし教授陣はこの事件に自分達の味方となる博士がいるにも関わらず破壊しようとしている!」
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