第14話 ”リンフォンによりて怪死するべし”
………………
「なるほど。君は
「ほ、ほほんとうに、燃えていたのかな……。燃えていなかった? 燃えるって何? プラズマ状態? 本当に燃える? 燃えていない? 燃えていた? 燃えていない? ないがある? あるがない?」
「ほほう! 燃えていたかどうかも不確かか……。面白い。状況はどのような感じだったのかね?」
「じ、じじじじ、じょ状況ですかか。えと、ええっと、皆さんが好きなことを思い思いにして待っていて、いや、でも皆さんそんなに好きでやってるわけじゃないかもしれない、やりたくなくてもやっているのかも、でも皆さんが勝手に、いや、勝手でもないかもしれませんけど、ええっと、その、してる中で、いや、何もしていないと思ってる人もいるかもしれない、私が勝手に何かしていると思って、私はそう思って、いやでもそう思ってなかったかもしれない。
ととととにかく、とにかくぅっ、
「なるほど素晴らしい証言だ。正確性に関しては言うことはないな。
つまり
熊城が苦々しい表情でその証言を監視する中で
「あわ、あ、わた、私、私が怖くなって、いや音が聞こえて、いや、それも怖かったから? 怖い? なにが怖い? 死ぬこと? 消えること? 怖い? 怖くない。何が怖い? なにに怯えている? 私は何が怖い? 嘘? 偽り? ココに真実は無い事? それは当然。では何? で、ででで、でも私はあの時怖くって。何かが気になって、何が見たかったのか? 何? それよりも目を話して、目を離した? 見ていない? 見ていなかった? それなのに発火したのが分かる? 分からない? 分からないべき。分からない筈。熱を感じたから? においを感じたから? 音を聞いたから? それだけが? それだけが証拠? それだけで発火したってわかるの? 分からない。誰も見ていない。そして残ったのは黒いガンダム」
法水はその言葉に何かを察したように表情を変える。
だが、その瞬間、叫び声が響く。熊城の部下であった警官の声だ。
「熊城さん! こ、こっちに! へ、部屋の中に!」
動揺した震えのある叫びに、さしもの熊城も仰天し、叫びながら声のした理事長室へと入っていく。
「何だッ! 死体はもう運びだして現場検証……。は……。あ……!?」
熊城に続き、法水と支倉、そして他の六人が好奇心と恐怖心を同時に抱いた複雑な心持で部屋の中を覗く。
そこにあったのは空中に光り輝く文字が浮かび上がっている様子であった。
「ヘブライ文字!? それにこの内容はッ!? う、ウグッゴホッ! ゲホッ! がフッ!」
「一体、どんな内容が書かれていたのか!? 実に、実に興味深い! 是非教えていただきたい!」
「うウグッ! ゴホッ!」
博士の苦しむ中でもにじり寄ろうとする法水は支倉によって軽々と持ち上げられ、自由を奪われる。
「麟音! 止めなさい! もう!」
「こればっかりは事件解決のためにも教えてもらわなければならない! やめろ!」
バタバタと空中でもがくが、それを支える支倉の左腕はピクリとも揺れない。
そんな中、博士がぼそりと、咳き込みの中で語った。
「うう……。その、必要は、無い……! ゲホッ! ゴホッ!」
「なに!? いったい、博士!?」
支倉の紋切り型の動揺した質問の直後、全員がその真意を悟ることとなる。
『一つ、魅宗櫓城讃詠はリンフォンによりて怪死するべし
一つ、魅宗櫓城
一つ、
一つ、
一つ、
一つ、
一つ、
一つ、法水麟音はリンフォンによりて怪死するべし』
全員の脳裏に、直接声が吹き込まれるように、その目の前に現れる光の文字列の意味が原語のままに理解された。
それは正に奇跡。
あろうことか被疑者六人に加え、法水が、その死の神託の最後に加えられているのだった。
「ほほう……! ついに私もこの事件の中へと、取り込まれてしまったようだねえ……!」
支倉によって持ち上げられたまま、法水はなおも好奇心が勝る様子でその文字とこの超常を受け止める。
だが、この事件の闇は、着実に彼女を取り込みつつあるという事実が、彼女の友であり、現在彼女を片手で持ち上げる支倉には、耐えがたい恐怖の実感として迫っていたのだった。
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