作り話のはずなのに

無月兄(無月夢)

第1話 七不思議を作ろう!

 始まりは、私、八木やぎ心春こはるの通っているつばさ中学校の、文芸部での出来事だった。

「じゃあ今度の部誌のテーマは怪談特集で、つばさ中の七不思議を作るでいいか?」

 そう言ったのは、速水はやみ清隆きよたか先輩。文芸部の部長で三年生。

 一年生の私にも気さくに話してくれる、優しい先輩なんだ。

 それで、先輩の言ってる部誌なんだけど、そもそも文芸部っていうのは、小説や詩を自分たちで作る部活なの。

 うちの文芸部は、顧問の先生はたまに顔を出すだけで、基本的には生徒たちだけでのんびり活動している。

 だけど春夏秋冬の四回、テーマに沿った小説を書いて、それを部誌っていう一冊の本にして発表することになってるんだ。

 今はその部誌のテーマを決めるための会議中なんだけど、その中で、怪談特集にしたらどうかって案がでてきたの。

「いいんじゃない。ちょうど夏で、怪談やオカルトが流行る時期だから」

 賛成したのは、サラサラとしたロングヘアが特徴の美人さん、早乙女さおとめ楓花ふうか先輩。三年生で、副部長なの。

 というか、この企画にはみんな乗り気。

 二年生の、双葉ふたば莉音りおん先輩と、双葉ふたば花音かのん先輩もそうだ。

「俺、ホラー系の話は書いたことないから、楽しみ」

「私も。どんなの書こうかな」

 莉音先輩と花音先輩は、双子のキョウダイなの。男女の双子だから見分けがつかないほどそっくりってわけじゃないけど、並んでいるとやっぱり似てるって思っちゃう。

 ちなみに、莉音先輩は自分が兄、花音先輩は自分が姉だって言っていて、どっちが本当かはわかんない。

 私を含めたこの五人が、文芸部のメンバーなんだよ。

 怪談特集をやるのは、私も賛成。

 実は怖いのはそこまで得意じゃないんだけど、読む人がどうやったら怖がったり驚いたりするか考えるのは面白そう。

 ただね、ひとつだけ、気になることがあるの。

「でも速水部長。七不思議ってことは、全部で七つのお話が必要ですよね。ひとりで一つ考えたとしたら、足りなくなりません?」

 実はこの企画、ただ怖い話を書けばいいってわけじゃなく、お話の舞台はうちの学校か、それに関わるものって指定つきなの。

 そうしてできた怪談集を、うちの学校の七不思議ってことにする予定なんだけど、うちの部は五人しかいないから、このままじゃ数が合わないの。

「七つ目の不思議は、知ってはいけないってことにするって手もあるけどね」

 確かに。学校の七不思議って、「七つ目を知ると災いが起こるから知ってはいけない」みたいに言われていて、伝わっている話は六つだけってところもけっこうあるらしいの。

「けどそれにしたって、六つは用意しなきゃいけませんよ」

「誰かが二つの話を書くことになるんですか?」

「そうだね。さすがに七不思議が五つしかないのは変だし、僕が二つ書いてみようかな」

 莉音先輩と花音先輩にも言われて、悩みながら答える速水部長。

 だけどその時、早乙女先輩が思いついたように言う。

「だったら、今回は特別に、部員以外の人に書いてもらうってのはどう? 心春ちゃん。確か幼なじみに、オカルトに詳しい子がいるって言ってたわよね」

「えっ、いいんですか?」

 話をふられて、思わず聞き返す。早乙女先輩の言う通り、一年生の中に私の幼なじみの男の子がいるんだけど、昔から幽霊とか妖怪とか、怖い話が大好き。

 この企画を聞いたら、面白そうって言ってくれそうな気はする。

「別に構わないと思うけど、みんなはどうかしら?」

 早乙女先輩が他の三人に尋ねると、誰も反対する人はいなかった。

「その幼なじみくんが引き受けてくれるなら、いいんじゃないかな。僕たち以外の誰かが考えた話っていうのも見てみたいからね」

「元々オカルトが好きなやつなら、俺たちより面白いの書くかもしれないからな」

「それって、文芸部員的にどうなの? まあ、見てみたいのは私も同じだから、いいんじゃない?」

 というわけで、賛成多数でこの案はあっさり採用になった。

「わかりました。じゃあ、部活が終わった後にでも聞いてみますね」

 そこまで話したところで、ちょうど下校時刻を告げるチャイムが鳴る。

 これで、今日の部活の時間は終わり。無事に部誌のテーマが決まってよかった。

 だけど、あとから振り返ると、これが始まりだったのかもしれない。

 私たちが体験することになる、恐怖の出来事の。

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