第6話
次の日、解雇された侍女のカレンと従者のモックが屋敷に集められた。
そこでいきなり予想外の来客。
「あの⋯⋯ロイ王子がいらっしゃっております⋯⋯」
慌ててダフマンとキールは隣の応接室へと走った。形式的な挨拶を終えると王子が口を開くのを待った。
「なにやら最近テレスタフィア公爵家が騒がしいようだが、何かあったのか?」
ダフマンは汗を掻きながら頭を低くする。
「それが⋯⋯アリシア公爵令嬢が一週間前に何者かによって殺されました」
ロイは腰を浮かせた。
「アリシアが? 何があった?」
ロイは目を見開いてダフマンを見る。ダフマンはまだ犯人の目星がついていなかったので躊躇する様子だった。
「実は一週間前にこの屋敷の侍女が開かないすりガラスの窓の外に黒い大きな影が見えたそうです。そこが崖の近くの2階のトイレの窓だったものですから、人影だと断定は出来ずに連絡が遅くなったようです。そして5日後に縄で首を絞められた令嬢が発見されたのです⋯⋯」
「なんと⋯⋯可哀想なアリシア⋯⋯」
「今、事情聴取は進められていますが、決定的なことは分かっておりません。なにぶん、テレスタフィア公爵とその奥方様の一行は視察旅行に行っているようでしばらく戻ってこないようなのです。今連絡の早馬は走らせております」
「そうか⋯⋯それを聞いたらセシルが悲しむな⋯⋯」
活発的なアリシア令嬢と比べると、セシル公爵令嬢はおしとやかな雰囲気。違うタイプなのが良いのか、2人は仲が良いようだ。
それにしても王子がそのアリシア令嬢の友人であるセシル令嬢を気にするなんてなんとなく引っかかる。単なる勘だが。
ロイはダフマンたちの話を聞き終わるとすぐに席を立った。
その後、会ったカレンとモックはあの兄妹から名前が挙がらなかった従者だった。2人と繋がりの薄い彼らからなら何かを聞けるかもしれない、ダフマンはそう期待した。
ダフマンはアリシア令嬢に起こったことをかいつまんで話す。2人は息をのんだような反応をしていた。それから自白剤も任意で促すとあっさり飲んでくれた。
「屋敷内で不穏なことはありましたか?」
「屋敷内では特にありませんでしたが⋯⋯仲の良いセシル様と一度言い争いをしているのを聞いた人がいるという噂です」とカレン。
ダフマンは口を尖らせた。
「セシル公爵令嬢⋯⋯」
先程もロイ王子がアリシア令嬢の話をした際に出てきた名前。仲が良いはずの2人が口論になった。これはセシル令嬢から詳しい話を聞かないといけないなとダフマンは思った。
「その他は身の回りで何かありましたか?」
「屋敷では解雇の後に通達があるから待っているようにと言われました。内容は分かりません」とモック。
「通達?」
ダフマンは片眉を上げた。
「解雇はするけど、その先の働き口を口利きをしてくれるということでしょうか?」
「分かりません。私たちはただ待っていれば良いと言われました。解雇の前は大規模な屋敷の整理が行われました」とカレン。
「大規模な屋敷の整理ですか? それはアリシア令嬢の周りですか?」
「⋯⋯はい、そうです」
キールはメモ帳にペンでぽんぽんとペン先をつけて考えている。
2人と別れると、また事件現場へと足を運んだ。
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