アリシア公爵令嬢殺人事件〜そしてセシル公爵令嬢は微笑んだ〜
二角ゆう
第1話
ステーシーはテレスタフィア公爵家の2階のトイレ掃除を担当する侍女。
2階のトイレのうち東側の角のトイレはほとんど使われない。
トイレの壁側にはすりガラスのように表面がでこぼこしていて外から中が見えない配慮が施されている。
その逆に外にあるものもあまり見えない。
ある日、トイレ掃除をしていると窓の外に丸くて黒い影のようなものが見えた。
その窓からはぼんやりとした輪郭しか見えなかった。
ステーシーは首を傾げたが、さして気にならずすぐに掃除へと移ったのだった。
次の日もあった。
何気なく近づいてみると丸くて黒い影の下にも影は続いている。
「なんだか人影のようにも見えるわね」
ステーシーはそう呟いたが、現実味がなかった。ここは2階のトイレで外は背の高い杉の木か生えているくらいで人が上がってくるようなものは外に何も無い。
人影のように見える何かが外にあっても、やはり人影のように見えるが別の何か、なのだろう。
その次の日は風の強い日だった。
ステーシーはまた2階のトイレ掃除でやってくると外には人影のようなものがある。
今日は風が強いので、人影のような何かがゆらゆら揺れている。
だが、揺れ方がおかしい。
何だが上の方から吊り下げられているように、上部は小さく、下部は大きく揺れている。
時折ギッギッと縄が引っ張られるような音が外から聞こえる。
外では一段と強い風が吹いている。
ギッギッという縄のようなものが軋めく音と共に下部を大きく揺らす人影のような何か。
ステーシーは段々と気になり始めた。
この窓の外のすぐ脇は崖もある危険な場所なのでこの屋敷の従者でもあまり立ち入らない。1人で歩いて見に行くには危なすぎる。
「そうだわ明後日、庭師が屋敷の周りも剪定するって言ってたから見てもらいましょう」
明くる日、ステーシーは2階のトイレへ来ると真っ先に窓から外を覗いた。
人影のような黒い影は少し下がっていた。私は背伸びをして下を覗き込むようにすると何か紐のようなものにその影はぶら下がっているように見える。よく見ると下の方はひらひらと揺れている。まるでドレスを着ているかのよう。
すりガラスのようなでこぼこのガラスの表面は顔を近づけてみてもよく見えない。
それでも昨日の風でギッギッと軋むような音は縄の音だと確信した。
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