うちの姉母婆はあくまであくどい〜悪魔さんを召喚して家族になってもらったら〜

益荒男 正

召喚:母

第1話 はじめての召喚

「えぇーーーっ?! ホントに悪魔さん来ちゃったぁ!」


「ようやく見つけましたわ、運命のご主人様♡ この度はご召喚に預かりまして幸甚の極みにございます♡」


 満月の夜、悪魔召喚の儀式。

 現れたのは身長180cmはある女の悪魔。


 彼女のつま先は宙に浮き、大きな翼で羽ばたく。

 黒鞭のようなツヤのある尻尾をヒラヒラさせる。

 禍々しい角と腰まで届く緋色の長髪。

 真紅の瞳が闇夜に輝いていた。


 あと服装が穴空き水着みたいに露出が多く、

 ボインボインが丸見えで目のやり場に困った。


#####


 阿久戸季人あくどりひとは物乞いの捨て子。

 町の片隅でゴミを漁って生きてきた。

 路上で1人寂しく凍える日々。


 誰かに助けてほしかった。

 でも周りの人間はみんな見て見ぬふりをする。


 だからムシャクシャしてヤッてやった。

 路地裏に落ちてたエロ漫画の真似、悪魔召喚。

 人間がダメなら悪魔を頼ればいいじゃない。


 魔法陣を描いて呪文を唱えて、

 『悪魔さんおいでませ〜』なんてやってみた。

 もちろんほんの冗談、暇潰し。


 そしたら魔法陣にズドンと雷が落ちてきて……


#####


「で、ワタクシが現れたと」


「そゆこと〜びっくりしたんだから」


「それは失礼をば。ワタクシ、畏まり謝罪いたします。フカブカオジギ~」


「別にいいよ。で、お姉さんはどんな悪魔さんなの?」


「コホン、改めまして。ワタクシは『スプリングス=サディ=ハルナバル』と申します。以後お見知り置きを」


「僕は阿久戸季人だよ。よろしくね」


「『リヒト』、なんと甘美な響きでしょう♡ 季人様、あぁ季人様〜♡」


「本物の悪魔さんなの? えっちぃコスプレヤーさんじゃなくて?」 


「ムムッ、失敬な。正真正銘あくまで悪魔ですとも。立派な角が生えてますし、翼も羽ばたいてますし、尻尾もフワリフワリと動いていますでしょう?」


「作り物には見えないね。やっぱり本物? でもそれだけじゃなぁ」


「だったら魔法をごらんになります? 男の子はそういうのがお好きでしょ?」


「魔法?! 見たい見た〜い!」


「素直でよろしい♡ それではワタクシにしっかりつかまってくださいな」


「こう?」


「そうそう、腰をしっかり引き寄せて♡ 早速お空に参りましょう、それっ!」


「びっえぇぇぇーーーっ?!」


 翼を広げロケットのごとく飛び上がった。

 あっという間に町が小さく見えるくらい上空へ。


「もうこんな高くまで来ましたよ〜人間どもが蟻ん子より小さい、滑稽ですね〜」


「ぎゃあぁぁぁーーーっ! 高いよぉ怖いよぉ! 下ろしてぇ!」


「あらら、パニックになってらっしゃる。落ちついてくださいな、よしよし、よしよし♡」


「あふゅう……頭なでなでキモチイイ……」


「赤ちゃんみたいでいいですね〜♡ ワタクシにつかまってれば大丈夫ですからね」


「で、こんな高いところで何するの?」


「魔法でこの町を消して差し上げましょう。悪魔の妙技、とくとごらんあれ」


「え、なんて?」


人世一夜ひとよひとよ一見殺ひとみごろ……我は暗雲『天砕カミクダキ』……堕治だっちを貪るこの世の悪に、天理を割いて極荊きょっけいを与えん……」


 スプリングスが空に手を掲げる。

 満月が見えるほど天気だった夜空は、

 どんどん暗雲立ち込めて真っ暗になる。

 ゴロゴロ雷が鳴り、紫の稲妻が2人の頭上で光る。


「我らが主従の門出なるぞ、そのはなむけに散るがいい」


雷閃ヴィレ

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