第44話 学園祭開催
「さあ諸君!!今日から学園祭だよ!!」
生徒会長が皆を見渡して声をかける。忙しかったが、なんとかこの日を迎えることができた。だが今日からが本番だ。
「といっても初日は開会式と大会の予選だ。国王とかは来られない。だからあんまり気構えなくていいよ。」
「あの~。俺らは大会に出場するので生徒会の手伝いはできないのですが。」
ジネットが手をあげる。隣でランロットも頷いている。生徒会長は笑顔で頷いた。
「もちろんだとも。君達が負けない限り、君達は自分の予定を優先してくれたまえ。」
「負けません!!」
「俺もだ!!決勝でジネットと競うんだからな!!」
「いや・・・。トーナメント表を見る限り、君達は準々決勝で当たることになるよ。だから決勝まではいかないね。」
「そうですね。なので、さっさとこいつを倒して優勝します。生徒会長。1年の部門で俺が優勝したら、最終日の1日、アネットをお借りしてもいいですか?」
「え?」
ジネットの言葉にアネットが不思議そうにジネットを見る。ジネットはアネットをみて微笑んだ。
「俺達の大会決勝は2日目だ。そうすれば最終日の3日目は空くんだ。だから優勝したらその日はデートして欲しい。」
「え・・・・!!」
アネットが顔を真っ赤にする。そこにランロットが混ざってきた。
「ずるい!!俺も俺も!!俺が優勝したら俺とデートしてくれ!!」
「それはないな。俺が優勝するから。」
「何を~!!」
2人がお互いをにらみ合う。アネットはおろおろと2人を見つつ顔を赤くしている。事態を収拾するべく、生徒会長が手を叩いた。
「君達。青春真っ盛りなのは良いことだけど、いい加減にしなさい。しょうがないねえ。いいよ。どちらかが優勝したら、優勝した方がアネット君とデートしなさい。でもついでに見回りもよろしくね。デートのついででいいから。」
「あの!!私の意志は!?」
「どちらにしろ見回りはしてもらうのだから、そのついでにデートをしてくればいいじゃないか。なに。男は単純でね。褒美をチラつかせればやる気がでるものだ。」
生徒会長の言葉にジネットとランロットがうんうんと頷く。
「2人に魔法を教えていたのだから頑張って欲しいだろう。なら応援の意味も込めてデートしてあげなよ。」
「・・・わかりました。」
「よしっ。これで負けられなくなったな。」
「俺が勝つ!!」
2人が再び睨み合っているのを横目にアネットは力なく項垂れる。それを見ながら生徒会長が再び手を叩いた。
「はいはいそこまで。本題に戻るよ。学園祭での生徒会の役割はいつもと同じだ。見回りをしてトラブルがあったら対処する。対処できないようなことがあれば、私が生徒会室にいるから報告しに来ること。1日目のペアを発表する。まずは・・・。」
そして、ペアが発表された。アネットは書記のシャーリーと組むことになった。
「シャーリー先輩。よろしくお願いします。」
「ええ。よろしくね。頑張りましょう。」
「じゃあそれぞれの見回りを開始してくれ。普段より人が多いから注意するように。」
「「「はい!!」」」
生徒会長の号令の下、それぞれのペアで生徒会室をでる。アネットとシャーリーは部活動の出し物が行われている場所を中心に回る事となった。
「すごい熱気ですね。」
「そうね。去年もこれくらいだったわ。皆、自分達がやってきたことを披露したいのよ。」
「そうなんですね・・・。」
部活動の出し物は多種多様だった。歌に劇、魔法のショー等もあった。シャーリーと共に見回りを兼ねて見学する。平民などの部外者はいないため、わざわざ問題を起こすような人はいなかった。
「平和ですね。」
「まあね。わざわざここで問題を起こす人はいないわ。問題があるとしたらやはり大会かしら。でもそっちは副部長のリーサルが行ってくれているからね。大丈夫でしょう。」
「シャーリー先輩はリーサルさんと仲がいいのですか?」
「なに?気になる?自分だけじゃ飽き足らず、他人の恋の話がお望み?」
「そ、そんなんじゃ。」
「まあといっても大したことじゃないわ。私と生徒会長は婚約者なの。そしてリーサルは私の妹と婚約している。だから仲がいいというか将来の家族ね。」
「え!?生徒会長とシャーリー先輩って婚約してらっしゃるのですか?」
(そうなの!?)
新たな事実に私も驚いていた。ゲーム内ではNPCの恋愛事情はほとんど描かれない。だから事前知識はなかった。しかし、生徒会での2人を見ていたが、そんな風には見えなかったのだが・・・。驚いている私達を見てシャーリーは微笑んだ。
「公私混同はしない主義なの。あ、貴方の事を言っている訳じゃないからね。貴方達の事は見てて微笑ましいし。」
「お騒がせしてすみません・・・。」
「いいのよ。むしろ男なんて振り回すぐらいの気持ちでいなさい。婚約したら家同士の繫がりになるのだからそう簡単に破棄なんてできないわ。じっくり考えて決めなさい。」
「シャーリー先輩は生徒会長と婚約したことを後悔してらっしゃるのですか・・・?」
シャーリーは額に手を当てて考えるそぶりを見せたが、やがて首を横に振った。
「いいえ。確かに悪戯好きで振り回されることは多いけど、嫌いではないわ。政略結婚が当たり前の世の中で、仲の良い相手と結婚できるだけまだ幸せな方よ。」
「・・・そうですね。」
「だから貴方もね。貴方のご両親は貴方の意見を尊重してくれるんでしょう?そんな家、本当に珍しいわ。だから貴方は後悔のないように相手を選ばないとね。」
「・・・はい。」
「いい機会だし、せっかくだから歩きながら色々話しましょう。」
「はい!!」
そうして、アネットとシャーリーは見回りをしながらお互いの事を話した。家の話や恋の話など。シャーリーは初めて会った時に優しいお姉さんタイプだと感じたが、実際その通りの性格だったようで、話をよく聞いてくれた。その日は、何の問題もなく終わるように思えたが、そうはならなかった。歩いていると、泣き声が聞こえてきたのだ。
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