黄昏にふと過る――誰かと肩を並べた放課後の淡く切ない記憶と怪異の影。

  • ★★★ Excellent!!!

■こんな方におすすめ
☑ 怖いだけのホラーには心惹かれない方
☑ 人の心の間(あわい)に生じる陰翳を物語に求める方
☑ 物語にブロマンス・BL要素があると嬉しい方
☑ 描写の「余白」を楽しみたい方

■あらすじ
「夜鳴町探索クラブ」。――所謂オカルト探求部である。
幼馴染みで同級生のみのりに言いくるめられ、
「怪異など存在しない」ことを証明すべく渋々入部した朔夜。

そこで、『依頼箱』に寄せられた学校のとある“噂”を調査し始めるのだったが……?

さくさく読めて、じんわり残る全67話。
謎と恐怖が交錯する――放課後オカルト青春譚です。

■おすすめポイント
(1)主人公・朔夜をめぐる人々
「怪異など存在しない」と口では言いながら、その実“視える”朔夜。
そんな彼に、人も怪異も引き寄せられてしまうようで。
彼を中心に、どんな怪異に出くわし、誰とどのように関わっていくのか――必見です。

(2)描かれるホラーの「恐ろしさ」
本作で描かれる「こわさ」は、反射的に「怖い」と浮かぶ感情ではありません。
じわじわと身に迫り、胸の奥に沈殿する「恐ろしい」という感覚。
怪異そのものの存在感よりも、そこに触れた時の人の心の揺らぎや、隙間に生じる陰翳にこそ真の恐怖が宿っている――そんな実感を与えてくれます。

(3)余白の妙
本作最大の魅力は、「曖昧さ」と「陰翳」にあります。
描写はもとより、ラストも、余白が多い結末となっています。
その余白の妙によって、物語が閉じたあとにも「黄昏空の向こうに彼らの日々は続いている」――そんな思いを抱かせてくれます。

読後に残るのは、恐ろしさばかりではなく、
――「誰かと肩を並べた放課後の記憶」に似た、淡く切ない感覚かもしれません。

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