今日、君が傘を忘れた
天使の羽衣
第1話 放課後と傘
いつもの放課後。ショートホームルームが終わり、クラスのみんながおしゃべりをしながら掃除場所へと分散していく。
教室には、チョークの粉が舞い、独特の匂いが立ちこめていた。
僕はクラスの立ち位置だと陰キャでもなく陽キャでもない間にいる存在だった。
クラスに数人の友達はいるが、全員と仲がいいわけではなかった。
そんな僕には密かに好きな人がいた。
それは、隣の席の宮坂あかねだ。
彼女とはクラスが一緒になった日から一目惚れをした。
彼女は、いつも静かで、特定の女子としか話さない。でも、それが僕には心地よかった。
クラスでも彼女の名前を知っているのはほんの数名だけだった。
その数名に自分ももちろん入っている。
放課後の掃除が終わり、僕は荷物を持って教室から出ようとしたが、ふと隣の席を見ると傘が机の横にかかっていた。
教室の外を見るとちょうど雨がしとしとと落ち始めていた。
僕は傘を持って大急ぎで教室を出た。
昇降口に向かい、彼女がいるか確認した。
だが、そこには彼女の姿がなかった。
靴に履き替え、傘を指し宮坂あかねの通学路を辿った。
数分ほど走っているとそこにはずぶ濡れで帰っている彼女の姿があった。
僕は思わず声をかけた。
「宮坂!」
そう言うと彼女はこちらを振り返った。
その顔はどこかさみしく、悲しい表情だった。
雨は次第に強くなる。
「秋元くん……?どうしたの?」
「何言ってんすか。ほら、傘」
そう言い、彼女に傘を差し出した。だが、彼女は言った。
「いいよ。いらない」
僕はそうして受け取らないのかと不思議に思った。
「秋元くんなら信じてたのに……『紙切れに書いた伝言』」
「伝言……?」
俺はふと昨日の紙切れを思い出したのだった。
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