夜想詩

水中チサ

夜想詩


水を得た魚の鱗は翻り新月の夜に闇を溶かす


弛緩する夜の帳は降ろされて薄れゆく日常の輪郭


微睡みに身を委ねれば瞬きの回数さえも忘れてしまう


桃齧る刹那の毒に魅入られて絡まる視線と指先の熱


偽りの笑みと虚ろな言葉で器を満たす時の静謐


空箱からばこの並びて沈みゆく様を安寧に燃やしながら眺む


かろうじて保った意識の重なりに結び目はここだよって教える


無いはずの記憶ひと粒パレットに混ぜた絵の具で描くキャンバス


切れ端になって漂っているから破片になって刺さってほしい


古の薔薇の眠りを妨げて叶えたい願いが今ここに

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夜想詩 水中チサ @c_37soko

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